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40代の仕事は「I」から「T」に変化するとき

2016年10月26日 公開
2023年05月16日 更新

清水克彦(文化放送報道スポーツセンター部次長)

40代は仕事でも新たな挑戦ができるとき

世の中には、40代を転機として新たなスキルを磨き、仕事の幅を広げる人がいる。放送局の記者という多忙な立場を経て、本業のかたわらでビジネス書の執筆や講演活動など複数のわらじを履くスーパーサラリーマン・清水克彦氏もその一人。40代だからこそ磨くべきスキルについてうかがった。《取材・構成=塚田有香、写真撮影=まるやゆういち》

40代はスキルをIからTへと変化すべき

文化放送の報道デスクとして、ニュース番組の制作を手がける清水克彦氏。記者、プロデューサー、ニュース解説者などとしてキャリアを積み重ねる一方で、40代以降では本の執筆や講演、大学講師など、本業以外にもフィールドを広げている。清水氏が考える、ビジネスマンが四十代で磨くべきスキルとは。

「20代や30代は、政治担当の記者として国会や総理官邸などの取材先を飛び回る毎日でした。ところが四十代が近づくと、今度は後輩の記者を現場に送り出すマネジメントの立場に変わりました。自分の仕事だけでなくチーム全体で成果を出すことが求められるようになったのです。その意味で、40代は自分に求められるスキルが変化した時期だったと思います。
30代以前に求められるスキルを文字で表わすなら、アルファベットの『I』。自分がやりたいことに向かって一直線に突き進めばいい。
でも、40代から求められるのは『T』。横の線が加わって広がりが生まれ、周囲もよく見ながら前に進む方法を考えなくてはいけません。物事を捉える視野や知識、人脈など、様々な点で意識的に横への広がりを作っていくべき年代だと思います」

普段、接点のない人と人脈を築くには?

たとえば人脈も、若手の頃は担当の範囲内で人とのつながりがあれば仕事ができたが、管理職になればそうはいかない。

「私の場合、30代までは、交流の範囲が自分の担当領域である政治関係者や官僚に限られていました。ところが番組を制作するプロデューサーの立場になると、他分野の人とも交流が必要になります。スポーツ関係者や文化人などさまざま分野に知り合いを作り、番組に出てもらえるだけの人脈を増やさなくてはいけないわけです。だから40代以降は、それまで縁のなかった分野の人にも積極的に会うようにしました。
では『接点のない分野の人とどうやって会うのか』というと、これまでに築いた社内人脈を活かすのです。会社の中には、それぞれ違った得意分野を持つ人がいるはず。放送局の例を出すと、たとえばスポーツ関係者と人脈を作りたいなら、その分野に強い人に、取材に同席したいと頼めばいいのです。このように、自分が関係を作りたい業界の営業担当者に同行させてもらうなど、その人の交友関係の中に自分も交わらせてもらうのが、一番早くて確実な方法です」

さらには、行動範囲を意識的に広げることで、人脈構築のスキルも自然と磨かれると話す。

「仕事以外にも、新しい世界に触れる場はたくさんあります。私の場合はジムに通っていますが、常連同士が仲良くなって飲みに行ったり、駅伝チームを作って大会に出たりしています。職種も業界も異なる人たちが、そうしてつながることも珍しくないのです。
私は45歳で大学院に入学しましたが、修士号取得のためというよりも、そこに集まる社会人学生との出会いに期待したから。実際、企業に勤める方や国家公務員、教員など、様々な世界の人と知り合うことができました。40代は行動範囲についても、家と会社の二点の間を往復するだけの『I』から、他にも点を作って寄り道する『T』へ転換すべき時期なのです」

 

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著者紹介

清水克彦(しみず・かつひこ)

文化放送プロデューサー

1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院公共経営学研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程在学中。大学卒業後、文化放送入社。政治記者を経て米日財団フェローとしてアメリカ留学。帰国後、首相官邸キャップ、報道キャスター、情報ワイド番組プロデューサーなどを歴任。江戸川大学や育英短期大学で非常勤講師を務める。現在は報道デスクとして番組制作やニュース解説に従事するかたわら、政治と教育問題を取材し、執筆や講演にも力を注ぐ。著書は、ベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』『頭のいい子が育つ10歳からの習慣』(以上、PHP文庫)をはじめ、『子どもの才能を伸ばすママとパパの習慣』(講談社)、『中学受験――合格するパパの技術』(朝日新書)、『安倍政権の罠』(平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)ほか多数。公式サイト http://k-shimizu.org/

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