THE21 » キャリア » <特別対談>プレッシャーに負けない秘訣は「背負い込まない」こと

<特別対談>プレッシャーに負けない秘訣は「背負い込まない」こと

2016年09月11日 公開

内田篤人×326(ナカムラミツル)

「人のために」という期待を背負いすぎない

326 でも、チームの中では愛されている印象です。

内田 何を聞かれてもあまり話さず、ニコニコしているからじゃないですか。言葉の問題もあり、あまり積極的にしゃべったりはしないですね。元々、日本でもたくさんしゃべるというより、仲良くなった人とじっくり話すタイプですし。しかもシャルケには十カ国以上の国から選手が集まっているから、ドイツ語が中心とはいえ、使っている言葉もバラバラです。でも、そんなバラバラな人たちが一つのスポーツで競い合える、というのは、サッカーの醍醐味だと思います。
ただ、やっぱりそこはプロの世界なので、ちゃんとグラウンドに立って活躍できているかどうかは問われます。逆に言えば、ちゃんとグラウンドに立ってさえいれば、みんな助けてくれる。それができなくなると、やっぱり居心地は悪くなります。

326 サッカーというのは、コミュニケーション力を高めることができる、非常に優れたスポーツだと思うんです。『ウッチーマン』でも、サッカーを通じて「友達ってこういうふうに作ればいいんだ」というのを伝えられれば、という思いもあります。

内田 サッカーは集団行動のスポーツですからね。自分から仲間の中に飛び込んでいかなくてはならないから、人と仲良くなれる。僕も、子供のころからサッカーを中心に友達が広がっていきました。

326 サッカーは親から言われて始めたのですか?

内田 僕の父親は体育教師でバスケットボールを教えているのですが、バスケはもちろん、サッカーをやれと言われたことは一度もありません。実際、野球をやるかサッカーをやるかで悩んだ時期もありました。

326 サッカーを選んでくれてよかった(笑)。でも、僕も絵を描き始めたのは親が会社の古紙を持ち帰ってくれたからで、これも言われたからではなかった。親があれをやれ、これをやれというのは、むしろ良くないのかもしれませんね。

内田 好きなことなら、勝手にいくらでもやりますよね。僕も高校時代、毎朝5時起きで朝練に行っていましたが、当時が一番サッカーが楽しかった。もっとも、当時は僕よりも親が大変だったと思います。弁当作るのに毎朝4時に起きていた。本当によく支えてくれたなと思います。

326 逆に、今は楽しくないときも?

内田 もちろん楽しいですけど、プロである今は仕事でもありますから、悩むことはあります。それが続いてスランプになると、ボールを受けるのも怖くなる。ただ、ある時「あ、これ以上悩むのは無駄だな」と気づいた瞬間があったのです。以来、だいぶ心は強くなったと思います。

326 プロになるとき、親から何か言われましたか?

内田 このときも「大学に行ってほしいな」とは言われましたが、「大学に行け」とは言われませんでした。「プロになりたかったら、なればいい」という感じで。ただ、裏では「本当にプロでやっていけるのか」と、かなり心配していたみたいですけど……。

326 内田選手はプロになってすぐに大活躍でしたが、プロになったからといって誰もが活躍できるとは限りませんからね。

内田 326さんのときはどうだったんですか?

326 この話をすると「オチ」みたいになってしまうんですが……。17、18歳でデビューして、レコード大賞を取って紅白にも出て、その直後、びっくりさせてやろうと、紅白の衣裳のまま佐賀の実家に帰ってきたんです。みんな驚いてくれたのですが、それがひと段落すると母がひと言、「それはそうと、いつ就職すると?」。ああ、自分の活動は仕事だと思われてないのだなと(笑)。

内田 (笑)

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