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自然と片づく仕組みを作る、タニタのオフィス整理術

2016年11月15日 公開
2023年05月16日 更新

谷田千里(タニタ代表取締役社長)

「どこでも仕事ができる」仕組み作りにこだわった

ヘルシーメニューの社員食堂でも有名な、老舗健康計測機器メーカーのタニタ。社長の谷田千里氏はここ数年、トップ主導でオフィスの大改革を行なってきたという。製造業だけに昔から「5S」は重視していたというが、オフィス改革のきっかけとその目的は「会社に来なくても仕事ができる環境作り」だった。その真意と実践の過程について、お話をうかがった。《取材・構成=塚田有香、写真撮影=長谷川博一》

 

ハードが整っていなければ片づける気も起こらない

健康計測機器分野における先駆け的存在であり、乗るだけではかれる体脂肪計や部位別の測定が可能な体組成計を世界で初めて開発するなど、常に業界をリードしてきたタニタ。最近では、社員食堂のレシピをまとめた書籍『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房刊)シリーズの大ヒットでも注目を集めた。
このタニタを2008年から率いるのが、代表取締役社長の谷田千里氏。社長就任後、真っ先に着手したのが「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)にもとづくオフィス改革だった。

「弊社は製造業ですから、以前から当然のように『5S』に取り組んできました。ただ、どうしても疎かになっている部分があったので、私が社長に就任したのをきっかけに、さらなる徹底をしようと決めたのです。
まず着手したのが、オフィスのリニューアルです。当時の本社は、かなり老朽化が進んでいて、おせじにもきれいとは言えませんでした。この状態のまま、社員に『オフィスをきれいにしろ』と言っても、やる気にならないと思ったのです。そこで耐震工事も兼ねて、大幅なリフォームを実施しました。このハード面での工事が完了したのが2011年3月で、そこから本格的に社員が働くオフィス環境の改革をスタートさせました」

 

物理的に「モノを置けない」オフィスに

谷田氏が目指したのは、オフィスにあるモノや書類をできるだけ減らすこと。そのために、社員たちがモノを減らさざるを得ない仕組みを作った。

「オフィスのリニューアルと同時に、以前まで置いてあった社員用の大型ロッカーを撤去し、小型のモバイルロッカーに切り替えました。サイズは約40cm角で、ノートパソコンがちょうど収まるくらいの大きさ。商品の試作品やサンプルを扱う開発の部署だけは1.5倍のサイズにしましたが、いずれも以前に比べれば収納力は大幅に少なくなっています。

さらにフリーアドレス制を導入し、個人のデスクをなくしました。退社する際は、自分のモノは全部モバイルロッカーにしまって帰らなくてはいけないしくみです。当然、ここに入りきらない書類などは処分する必要が出てきます。要するに、オフィスに多くのモノを置けない物理的な仕組みを作ったわけです」

 

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整理そのものを目的にしてはならない >

著者紹介

谷田千里(たにだ・せんり)

〔株〕タニタ代表取締役社長

1972年、大阪府生まれ。93年、調理師専門学校卒業後、佐賀短期大学(現・西九州大学短期大学部)食物栄養学科に進学。97年、佐賀大学理工学部卒業。船井総合研究所などを経て、2001年に〔株〕タニタ入社。05年、タニタアメリカ取締役。08年5月より現職。

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