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【世代分析】40代が「くすぶり感」を抱える理由

2018年01月22日 公開
2023年03月23日 更新

豊田義博(リクルートワークス研究所主幹研究員)

成果主義とは会社都合の「綺麗ごと」だった

もはや自分の将来を会社に委ねられないと感じた今の40代の人たちは、実際にどのような社会人人生を歩んできたのでしょうか。

一部の人たちは、キャリアに対するオーナーシップを持ち、自分の意に添わない異動には異議を唱え、転職を重ねながら自分のキャリアを切り拓いていきました。

しかし、それはほんの一握りです。その他大勢の人たちは、自分のキャリアは自分で切り拓かなければと思いながらも、会社の配属や異動に従うしかなく、会社が規定したキャリアを歩んできたわけです。

しかも、この世代から成果主義が導入されました。これは、従来の年功序列や終身雇用を維持できなくなった会社側が、「これからは昇進・昇格をモチベーションの源にするのではなく、仕事の専門性を高め、成果を上げることで評価を受ける時代だ」と説いて採用したようなものです。

かといって、社員の意に添わない配属や異動がなくなったわけではなく、やりたくない仕事なのに成果で評価されることへの不満からモチベーションは低下していきました。自分が一生かかって成し遂げる仕事を見つけられず、キャリアへのオーナーシップを持てないまま、ずるずると30代、40代を過ごしてきた人が大半ではないでしょうか。

そして今では、「こんなものだ」と成長することを半ばあきらめている。日本企業の矛盾した人事施策が、こうした「くすぶった」40代を生んだ面があるかもしれません。

 

上昇志向から脱却し「ライフテーマ」を探そう

ただし、その一方で、自分なりのライフテーマを見つけ、人生を輝かせようとする人たちも現れています。たとえば「イクメン」のような生き方は、今の50代にはほとんど見られませんでした。今の40代から生まれたものと言えるでしょう。自分にとって大事なものは何かを考え、自分なりの幸せの図式を見つけ始めた世代と言えます。

心理学では、人は自分なりのライフテーマを見つけて、それに向き合って成し遂げようとするとき、自律的に生き生きと生きられると言われています。たとえ収入が多くても、高い地位に就いていても、幸せになれるとは限りません。従来の上昇志向のマインドセットを変えて、新たなライフテーマを見つけ、自分なりの心の安定や幸福感を追求する。これこそが、今の40代が幸せに生きるための一つの方法ではないかと思います。

 

ビジネスマンの「世代」分類

■団塊世代
1947~49年生まれ
戦後の第一次ベビーブーム期の前後に生まれた世代。社会に出る頃には高度経済成長のまっただ中。仕事をすればするだけ成果も上がったので、「モーレツ社員」としての生き方が賞賛された。

■新人類
1950年代後半~64年生まれ
「従来とは異なった感性や価値観を持つ若者」を表わす言葉として定着。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、日本企業の国際的な地位が高まっていた時代に社会に出た。

■バブル世代
1965~69年生まれ
企業が規模拡大を目指して大量採用を行なった時代に社会に出た。大卒の5割以上が一部上場企業に入ったと言われる空前の売り手市場の中で就職。現在は激しい管理職ポスト争いにもさらされている。

■団塊ジュニア(氷河期世代)
1970~84年生まれ
バブル崩壊後に登場するのが「団塊ジュニア」。団塊世代に次ぐ世代人口を抱える「第2次ベビーブーマー」(70~74生まれ)と、団塊の子供世代である「ポスト団塊ジュニア」(75~84年生まれ)を分ける考え方もある。 バブル崩壊後の求人環境が一変し、採用人数がグンと減った時代に社会に出た。「ロストジェネレーション(失われた世代)」「氷河期時代」とも呼ばれる。

■ゆとり世代
1987~2004年生まれ
2002年~10年に施行された学習指導要領に沿ったいわゆる「ゆとり教育」を受けた世代。プライベートを重視する傾向が強い。会社に頼らない思考を持ち、国際貢献や社会福祉などの分野で活躍する人材も生まれている。

 

《『THE21』2018年1月号より》

著者紹介

豊田義博(とよだ・よしひろ)

リクルートワークス研究所主幹研究員

1959年、東京都生まれ。83年、東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。就職ジャーナル、リクルートブック、「Works」の編集長を経て、現在に至る。20代の就職実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就職、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。著書に『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(PHPビジネス新書)、『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(以上、ちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)などがある。

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