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これだけは知っておきたい!「自然災害に備える保険」の基礎知識

2019年04月24日 公開
2023年03月07日 更新

平野敦之(平野FP事務所代表)

 

地震保険の保険料はもう一度引き上げられる

 地震保険の支払い区分が「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の四つになったのは、17年1月の改定からです。それ以前は、「全損」「半損」「一部損」の三つでした。地震保険の契約期間は最長5年ですから、今は、この両方の区分が併存している時期です。

 このため、感情的には納得できないところもあると思いますが、同じ被害を受けても、地震保険を契約した時期によって違う区分に鑑定され、支払われる保険金の額も違うということが起こります。

 17年1月の改定では、全国平均の保険料も引き上げられました(下がった地域もある)。東日本大震災のあと、14年7月に一度引き上げられたのですが、さらなる引き上げが必要だということになったからです。ただ、一気に引き上げずに3回に分けることになり、その1回目が17年1月だったのです。

 2回目は19年1月に改定。3回目の改定の詳細はまだ発表されていませんが、21年1月とも言われています。いずれにしても、もう1回引き上げる予定であることは確かです。

 

「共済」でも自然災害に備えられる

 地域や職業によっては、共済への加入を勧められることもあると思います。

 共済は保険とは違う仕組みで、県民共済や全労済、JA共済など、共済同士でも仕組みが違います。

 例えば全労済だと、「住まいる共済」の中にある「自然災害共済」が、水災や地震などの自然災害を補償対象にしています。地震の場合、100万円を超える損害がないと地震等共済金(保険でいう保険金)が支払われず、見舞金などだけという内容ですが、軽微な被害だと支払いがないのは地震保険と同じだと言えます。

 共済は非営利なので、共済掛金(保険でいう保険料)が安く、一方、補償内容がそれほど手厚くないこともあります。保険とどちらがいいとは言えませんが、内容をよく確認するようにしてください。

 

保険に入っておくべき人の三つの条件

 自然災害で損害が出た場合は、すぐに損保会社に連絡をして、保険金の請求をしましょう。

 特に、大規模な災害だったり、昨年のように各地で災害が頻発したりしていると、被害の程度を鑑定する損害保険鑑定人が多忙になるので、早く声をかけるのがいいでしょう。

 場合によっては、保険の契約をしていた家族が亡くなってしまい、保険契約の詳細がわからなくなることもあります。

 もしそうなったら、日本損害保険協会に問い合わせること。大規模な災害なら、日本損害保険協会が特設サイトを作るので、そこにアクセスしてください。

 すると、各損保会社の連絡先がわかりますし、契約している会社がわからなければ、その調べ方もわかります。

 実際に鑑定にかかる時間は、特に地震の場合は早く、通常はその場で結果が出ます。

 昨年は災害が多かったので、損保会社のOB・OGの活用の他、ドローンを利用したり、映像で遠隔鑑定をするなど、さらに効率的な鑑定方法を取り入れて対応したと聞いています。

 最後に、自然災害に備えた保険には入ったほうがいいのかどうか、私の見解をお話ししましょう。

 私は、次の三つのいずれかに当てはまる人は、入る必要性が高いと考えています。

(1)住宅ローンの残債が多い人
(2)保有している資産が少ない人
(3)被災したときに収入が止まる可能性がある人

 保険は、一度入ったら、ずっと入っていなければならないものではありません。保険料が高く感じたら、住宅ローンの残債が減ったところで見直すなどすればいいのです。

 

《『THE21』2019年4月号より》

著者紹介

平野敦之(ひらの・あつし)

平野FP事務所代表

1967年生まれ。東京都出身。大学卒業後、証券会社、損害保険会社などを経て、98年に独立。生命保険、交通事故、火災、自然災害から漏水事故、自転車などの賠償事故まで、多くの保険の現場に携わってきた。相談・講演・執筆活動を展開する。お金の情報メディア『Mylife Money Online』を運営。

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