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「IoTの伝道師」が語る日本人の美徳とこれから100年の産業モデル

2016年01月09日 公開

帝都久利寿(コネクトフリーCEO)

日本に「大帰化」したい

聞き手=編集部    

近年、産業界で時折聞くバズワード(耳慣れない曖昧な専門用語)がある。「IoT(Internet of Things)」というもので、直訳すれば「モノのインターネット」。たとえば航空機や自動車のエンジンから発電用タービン、エアコンや照明まであらゆるモノがネットワークにつながり、相互に交信や作動の調整、管理を行なう。その結果、機器の効率が飛躍的に上がるという。

 この世界の革新性をいち早く発見したのが、日本発のベンチャー企業のコネクトフリー。京都・東京・台湾でIoT通信チップを開発・営業・生産し、日本国内メーカーとの用途開拓を進めている。「IoTの伝道師」である同社CEOの帝都久利寿氏に、これから100年の産業モデルと日本企業の役割、日本人の美徳に至るまでお話を伺った。

 

モノ同士が会話をする世界

 

 ――まず、あらためて「IoTとは何か」について説明をお願いします。

 帝都 IoTを理解するためのキーワードは「自律」です。たとえば私たちの体の中には自律神経があり、循環・消化や呼吸をコントロールしています。呼吸や脈拍の速さを調整しようと考えながら生きている人間はいませんよね。自律神経は不随意で、「こうしよう」と思って動かさなくても、自律神経のネットワークが自然と体内のバランスを取っています。

 同様に、産業全体を考えた際、無数にあるデバイス(機器、装置)をすべて管理しながら動かすことは不可能です。人が考えて無理に動かそうとすると、どこかで非効率が生じる。では、どうするか。究極的な答えは、デバイス自身がそれぞれのルールを定義し、自律的に動いてくれるようにすることです。自律神経を通じて人間の細胞が「会話」するように、モノに搭載されたコネクトフリーのIoT通信チップ同士が交信し、相互に調整、管理を行なう。人間がデバイスを管理する必要はなくなります。

 日常生活でも、私たちは電気のスイッチを点けるとか、エアコンの温度を調整する、というコントロールをつねに行なっています。しかし明かりや温度の調節というのは本来、「部屋が考えてくれる」のが最も効率がよい。データのやりとりに関しても、直接、コネクトフリーのIoT通信チップを使ってモノ同士を交信させるほうがはるかに速い。

 IoTが新しいマーケットとして拡大する理由は、この効率性にあります。消費するエネルギーの効率も劇的に改善し、少子高齢化が進むなかで、人手不足の解消にもつながるでしょう。

 

いまこそ世界に「攻める」とき

 

 ――いまおっしゃったIoTのネットワークを司るのが、帝都さんたちが開発した9㎜四方のIoT通信チップ。いわば「新たな産業のコメ」ですね。

 帝都 近い将来、コネクトフリーのIoT通信チップを組み込んだあらゆる機器が、自律的な交信を行なうようになるでしょう。おそらく10年後には、世界中でコネクトフリーのIoT通信チップを載せたデバイスが1兆個稼働し、機器や装置同士が自律的に交信する状況が訪れる。いままでの発想は、たとえば一人当たり携帯電話を2台もつというもので、ソフトバンクの孫正義さんは「2040年には一人が1000台のデバイスをもち、インターネットにつながるだろう」とおっしゃっています。IoTの考え方は違っていて、一人当たりのデバイスの台数が問題なのではなく、社会全体がデバイスを共有する、つまり社会インフラとしてIoTを皆が活用するという発想なのです。

 ――具体的にはどういう事例でしょうか。

 帝都 IoTの本質はインターネットによる通信だけではなく、モノと結びついた機能にあります。たとえば究極の効率性に達したエアコンや照明が生まれ、ビルや道路、ガスや水道の安全管理を自律的に行なうようになるでしょう。パイプライン同士が交信して、未然に事故を防ぐことも可能になる。私たちはネットワークの部分は通信のプロにお任せして、主にメーカーの人たちと一緒に「チップの上に何を載せるか」を追求している。

 こうした社会インフラの分野でのビジネスは、アップルやグーグルの製品、サービスに比べて一見、地味でダサく見えるかもしれない。でも現在、コンシューマー・マーケット(消費市場)の枢要を占めているのは社会インフラです。日本企業はこの分野でまだまだ強い力があるし、コネクトフリーのIoT通信チップによってさらにパワーアップできるでしょう。

 私はいまこそ日本が世界に対して打って出る、つまり「攻める」ときが来た、と思います。IoT時代の到来というチャンスを絶対に逃してはいけないし、日本人はもっと自信をもつべきだと思う。IoTには日本のものづくりの力が不可欠です。日本は技術力で他国を圧倒する力がある。絶対に勝てますよ。

 かつて日本はアメリカに太平洋戦争で敗れ、プラザ合意で経済的に潰されました。でも、日本という国は「悪」なのでしょうか。

 1985年、先進5カ国(G5)によるプラザ合意の結果、ドル安と円高の流れが固まりました。どう考えても、これは為替操作による「日本潰し」です。当時の日本はバブル絶頂期で、ニューヨークのシンボルであるロックフェラー・センターを買い占めるなど勢いがありました(1989年、三菱地所)。円安を背景に、ソニーがアメリカに進出し、ウォークマンなど日本のハイテク製品の性能に世界中が驚いた。日本経済が世界に打って出た時代です。これでGDP世界一の座が脅かされるようになったアメリカは、為替によって日本の勢いを止めようとしたわけです。プラザ合意後の円高によって日本の輸出や工場生産、労賃のメリットが薄れ、成長がストップしてロスト・ディケイド(失われた10年間)に陥ってしまった。

 日本人がしたことは、たんに不動産を利用して「お金を稼ぐこと」です。はたして悪事を働いた、といえるでしょうか?

 私は日本企業にもう1度、世界に出て稼ぎまくってほしい。1980年代とは時代が変化しており、アメリカがプラザ合意のような手段で再び日本を潰せるかどうかは微妙で、日本は大丈夫だと思う。

 ――時代の潮目が再び日本に向かっている。

 帝都 いま、産業社会は新しい局面を迎えています。先ほど述べた「自律」への転換です。20世紀の産業の特徴は、自律ではなく「自動化」(automation)でした。当時は自動車の工場生産のようなオートメーション化が一国の産業を支え、経済成長の源となってきました。でも、いまや自動化はエネルギー面でも効率性でもコストの面でも時代遅れになっている。「自動化から自律へ」の百年がやってきたのです。自律というのは、たとえば自動運転のクルマをつくるとか、高性能のリモコンをつくることとは次元が違います。先述のようにモノとモノが会話し、連携し合って互いの状況を理解する。コミュニケーションの有無が、自律と自動化を分ける違いです。

 もちろん安心して外部とコミュニケーションを図るには、通信のセキュリティが守られていなければならない。私たちが開発したIoT通信チップの特長の1つは、認証済みネットワークエンジンが通信の安全性を守り、インターネット上のセキュリティ・リスクを排除することです。

 これまではインターネットに安全に接続するためにはサーバーを介することが必要で、月額当たりのコストが発生していました。コネクトフリーのIoT通信チップは第3者のサーバーを介さず、DNAや指紋識別のように個人認証ができる仕組みです。個人の負担が少なく、安全にコミュニケーションできる。

 私はこのチップを手に、皆とつながりたい。コネクトフリーのIoT通信チップと日本企業の技術力を武器にして、社会インフラの分野でバブルの時代のようにもう1度、世界の市場を攻めようよ、と。日本には世界を変える力があるし、チャレンジを怖がってはいけない。何より、日本企業が海外に出なければ、必ず向こうから攻めてきます。

 ――経済的「専守防衛」では日本の富、GDPは守れない。中国にやられっ放しだった10年間を取り戻せ、ということですね。日本人として勇気付けられる思いです。

 

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