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「あなたは愛国心をもっていますか?」――ケント・ギルバートが日本人に問う

2017年08月10日 公開

ケントギルバート

その点、日本人はどうでしょう。海外で盛んに活躍している有能な人ほど、「もっと日本のことを知らなければ」とおっしゃることが多いようですから、きっと普通に大学を卒業した程度では、知識が足りていないのでしょう。

そして、その知識不足の大きな原因も、やはりGHQの「WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)」にあります。

日本の歴史や文化、さらに日本の本質について語る際に絶対に外せないのは、「天皇」の存在です。逆にいえば、天皇とはいかなるものかに関する知識なしに日本のことを語るのは、たとえるなら「ユダヤ教にいっさい触れずにイスラエルを語りなさい」とか「キリスト教への言及なしに西洋文化について論考しなさい」とかいっているようなものです。

まともな知性を持っていれば、そんなことができるわけもないことがわかるはずです。

しかし戦後日本では、天皇についての歴史や文化伝統を学ぶことは、一種のタブーでした。日本の人々がつくりあげた公式の歴史書である『古事記』や『日本書紀』に書かれた「神話」を学校で教えることさえできませんでした。8世紀に編纂されたこれらの書物にすら「神代」、つまり神話の時代の話として書かれているのですから、「神話」として教えればいいはずですが、それさえ行なわれなくなったと聞いて、私はとても驚きました。

その民族が、どんな「神話」を持っているかということ自体が、比較文化研究の視点から見ても、とても興味深いことであるはずです。日本人も、自分たちの国の神話を知ったうえで、他の国々の神話を知ると、似ている点や、違う点などが色々分析できて、とても面白いだろうにと思えてなりません。私は学生時代に比較宗教学を勉強して、たくさんの地域の神話を学びましたので、その経験からしても、日本の学校で祖国の神話を教えていないことは奇妙ですし、とても残念です。日本の皆さんは、今上陛下が何をされているかは、ニュースなどを見て知っているかもしれません。しかし、そもそも日本という国にとって天皇とはいかなる存在なのか、日本の歴史や伝統の中でどのような役割を担ってきたのか、そして、天皇の下で文化がどのように育まれてきたかということを知っている日本人が、どれほどいるでしょうか。

神話の時代から現代に至るまで、ずっと天皇と共に続いてきた国だからこそ、世界の人々は日本という国に憧れ、敬意を抱くというのに、どうも天皇について多くの日本の方々は、その存在に対してあえて無関心でいるか、少し斜に構えつつ、敬しながらも遠ざけるべきものであるかのように考えているように思えます。

しかも、「天皇」と「愛国心」の両者を合体させて論じることは、戦後の日本では、ある意味では非常に危険なことだったようです。ただでさえ、愛国心は避けて通るべきトピックなのに、そこに「天皇」のことを加味するなんて、「ちょっとおかしな、危ない人たちがする議論」であるかのように感じる日本人が多いでしょう。

戦争が終わって70年以上もたった今日でさえ、天皇を想起しながら愛国心を語ることは、すなわち軍国主義的であると考えられているのです。

それこそが、「WGIP」がめざした世界観でした。しかし、世界に誇るべき「天皇」を忌避し、封印するなんて、「もったいない」にもほどがあります。冷静になれば、これがいかにバカらしいことであるかがわかるでしょう。

私はこの本で、あえて真っ正面から、このような問題を取り上げようと思いました。そして、私が考える日本文化の美点についても語ろうと思っています。天皇が示してきた「理想」とは何か。日本文化の中で脈々と息づく「美の精神」「武の精神」「草莽の精神」とはいかなるものか――。そのような点についても考えてみました。日本に長く関わってきて、日本のことをもっと深く理解したいと努力を続けてきた私が、長年、いちばん書きたいと思っていたことを書きました。

もちろん、アメリカ人である私の理解が及んでいない部分もたくさんあるでしょう。誤解に近いものもあると思います。しかし、外からの視点を率直に紹介することで、日本の皆さんにとって、ある種の「鏡」のような役割が果たせるのではないかと思っています。

本書を最後まで読んでも「私はどうしても日本への愛国心を持てない」という日本人がもしいらっしゃったら、ぜひ、自分がいちばん好きな国に移住や帰化することをお勧めしたいと思います。

iyashi

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