Voice » 政治・外交 » ケント・ギルバート&呉善花 《来る総選挙》愛国心なき政治家は、即刻退場せよ!

ケント・ギルバート&呉善花 《来る総選挙》愛国心なき政治家は、即刻退場せよ!

2017年10月03日 公開
2023年01月11日 更新

ケント・ギルバート(米カリフォルニア州弁護士),呉善花(評論家/拓殖大学教授)

ケント・ギルバート

「愛国心」とは「母国愛」のこと

 ケント 日本人が他国によるプロパガンダに弱い原因は、学校教育のなかで自国の歴史や文化をきちんと教えていないことが大きい。自虐史観を植え付け、自尊心を奪うような教育ばかりを日本ではしていますからね。

 こうした現状をなんとかしたいと思った私は、日本人に日本とは何かを改めて知ってもらう必要があると考え、『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』(PHP新書)を書きました。

 じつは本書では「愛国心」ではなく、「母国愛」という言葉を使いたかったんです。というのも、日本では「愛国心」というと、その言葉だけで右寄りというか、ネガティブな印象があるからです。ただ、「母国愛」という言葉はそこまで一般的ではないので、「愛国心」としました。

 どちらの言葉を使うにせよ、国を愛するのは、母を愛するのと同じように普遍的な行為だと、この本で知ってもらいたかったのです。

  私が日本に来たのは34年前ですが、「愛国」や「愛国心」という言葉が何か怖い印象で捉えられていたことには驚きました。韓国ではそれらの言葉は当り前のように使われていたからです。

 当時の韓国で「愛国」というと、ほぼ自動的に「反北朝鮮」「反日」の感情が浮かんでくるところがありました。そして現在では「反北朝鮮」の感情がなくなって、「反日感情」だけが残っている。韓国の「愛国」は日本という憎む対象がまずあって、それによって支えられているといっても過言ではありません。

 一方、日本人はあまり愛国心を表現しませんが、故郷のお国自慢は大好きですね。日本の地方に講演にいきますと、「こんなにお酒がある」「こんなに景色のすばらしいところはほかにありません」などと、一生懸命に「お国」自慢をしてくれます。日本人はつねに忘れ難きふるさとを心に抱いて生きている、愛郷心ですね。

 じつは愛郷心こそが愛国心のベースをなすものです。この古くからあるベースだけは失われていない。韓国人の愛国心にはこうしたベースがないんです。宙に浮いている。

 また、「ふるさと」という言葉を聞いて日本人が思い出すのは、いつも母のことではないでしょうか。その点、ケントさんが「愛国心」とは「母国愛」のことだというのは、なるほどと思いました。

 ケント ありがとうございます。前掲の拙著を読んで、30代の男性から6回も泣きました、という手紙ももらいました。本書では日本の歴史や伝統について、私がいちばん述べたいことを書いたつもりです。

 他方、私たちアメリカ人は、世界中のあらゆる国から集まった国民です。これをどうやってまとめているかというと、星条旗です。幼稚園のときから、学校でいちばんの行事は、胸に右手を置いて起立し、アメリカ合衆国の象徴である星条旗に忠誠を誓うことです。

I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.

(私はアメリカ合衆国国旗と、それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家である共和国に、忠誠を誓います)

 私はこれを死んでも忘れません。幼稚園のときから毎朝、唱えていましたからね(笑)。

 では、日本の学校で何をしているか。歴史の時間になると先生から「君たちのお父さん、おじいさんたちは、中国や韓国に対して非常に悪いことをした。いつまで反省し、謝らなければならない」と教えられる。アメリカで教師がこんな教育を続けていれば、すぐにクビですよ。

 日本の教師の中には、日の丸を戦前日本の軍国主義の象徴とみなす人もいるでしょう。それは一つの意見かもしれませんが、なぜ特定の個人思想を子供たちに押し付けるのか。それは国の方針ではありません。

 君が代を歌いたくないという教師もいるかもしれない。だからといって、子供たちに教えないというのは論外です。指導要領に反していますからね。

 私が日本の親たちに提案したいのは、一度子供たちの学校の授業を見学し、もし反日的な教育が行なわれていたならば、大問題として世に提起すべきだということです。そうやって親たちが自ら積極的に動かなければ、日本の自虐的な偏向教育はけっして是正されないと思います。

 

祖国を愛せない人間は不幸

 ケント ご存じのとおり、日本では学校だけでなく、マスコミも反日思想を熱心に植え付ける元凶になっています。国旗や国歌に敬意を示すのは、とんでもないという発想です。

 私がそれを再認識したのは、2016年8月9日のことでした。この日は前夜からリオ五輪をテレビ観戦していたのですが、男子体操の団体総合決勝で日本のチームが3大会ぶりの金メダルを見事に取った。朝4時を回っていましたが、眠たいのを堪えて観戦していてよかった(笑)。表彰式のあと、表彰台で「君が代」がどんなふうに聞こえたか、という記者の質問に対し、内村航平選手はこんなふうに答えていました。

「声が裏返るまで歌ってやろうと、みんなで言って、すごくゆっくり流れたので、ちょっと歌いづらかったですけれど、すごくみんな大きな声で歌えてよかったと思います」

 もし私が新聞記者だったら、これを記事の見出しにしましたよ。ところが、内村選手の君が代に関する発言を取り上げたのは、新聞では『産経新聞』だけでした。NHKは生放送時には当然放映しましたが、その後、このシーンを二度と流さなかった。他の民放も同様です。五輪で優勝した彼らが、一生懸命に君が代を歌ったというのは、普通の日本人なら誰もが感動するいい話じゃないですか。その部分をあえて無視するなんて、日本のメディアはほんとうにおかしい。異常だと思います。

  日本の学校では日の丸や君が代の意味や成り立ちを教えていませんからね。それどころか、日本の歴史や文化に関する基礎的なことすら教えていない。現在、私は拓殖大学の国際学部で日本の歴史と文化を教えています。学生の受講者がいちばん多い選択科目となっていますが、講義を重ねるうち、だんだん学生が引き込まれていくのを感じます。目がキラキラして、私語一つ聞こえない。毎回、レポートを書かせるのですが、A4用紙の裏までびっしりと感想を書いてくれる学生もいます。

 とても興味深かったレポートがあります。ある学生は親の勧めで高校時代に英語の勉強のためにカナダに留学していたのですが、日本人としての迷いが生じると同時に、生きる自信をなくしてしまった。大学入学後、今度は宗教的体験を求めてインドまで行ったそうですが、ますます自分がわからなくなり、ついに鬱病を発症してしまった。

 しかし、その学生はなんとか大学に戻り、私の講義に出ているうちに気分が明るくなってきて、自分はやはり日本人だったんだ、これからどう生きればいいのかわかりました、とレポートに書いてくれたんです。

 このようなレポートを読んで感じたのは、日本人がいかに高校まで日本のことを学んでいないか、またいわゆる自虐的な教育が子供たちをいかに傷つけているかです。まさにケントさんがいわれるとおりです。

 ケント 祖国を愛せない人間は、祖国を愛している人間に比べたら、間違いなく不幸でしょう。それは、自分の親を愛したり、尊敬できない子供が、それを当たり前にできている子供と比べると、間違いなく不幸であることと同じです。

 間もなく総選挙が行なわれます。北朝鮮によるミサイル危機が本格化するなか、「愛国心」を基準に行動している政治家、政党を見極めることが、日本にとっていまほど問われている時期はないかもしれません。

(本記事は『Voice』2017年11月号、ケント・ギルバート氏と呉善花氏の対談「韓国の裏切り」を一部、抜粋したものです。全文は10月10日発売の11月号をご覧ください)

著者紹介

ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)

米カリフォルニア州弁護士

1952年、米アイダホ州生まれ、ユタ州育ち。71年に初来日。80年、国際法律事務所に就職して東京に赴任。83年、TV番組『世界まるごとHOWマッチ』に出演し、 一躍人気タレントへ。『夕刊フジ』金曜日連載「ニッポンの新常識」、まぐまぐメルマガ「ケント・ギルバートの『引用・転載・拡散禁止!』」などで論陣を張る。著書に、『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』『いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人』 『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』(いずれもPHP研究所)などがある。 『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書)は発行46万部余りの大ベストセラー。 

呉善花(お・そんふぁ)

拓殖大学教授

1956年、韓国・済州島生まれ。83年に来日し、大東文化大学(英語学)卒業後、東京外国語大学大学院修士課程(北米地域研究)修了。現在、拓殖大学国際学部教授。著書に『さらば、自壊する韓国よ!』(WAC BUNKO)、『日本にしかない「商いの心」の謎を解く』(PHP新書)などがある。

Voice 購入

2024年6月号

Voice 2024年6月号

発売日:2024年05月07日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

「北朝鮮問題」で韓国の出る幕はない

呉善花(評論家/拓殖大学教授)
×