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モーリー・ロバートソン バノンの亡霊は徘徊している

2017年10月13日 公開

モーリー・ロバートソン(ジャーナリスト・ミュージシャン)

トランプ大統領を支える「草の根保守」の正体

聞き手:編集部 写真:Shu Tokonami

 ――トランプ大統領誕生の立役者といわれるスティーブ・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問が2017年8月10日、更迭されました。

 モーリー バノンを語るうえでまず欠かせないのが『ブライトバート(Breitbart News Network)』。ユダヤ系アメリカ人のアンドリュー・ブライトバートがビデオブログから始めた保守系インターネット・メディアです。

 バノンはドキュメンタリー作品『Generation Zero』(2010年)で、ブライトバートの政治活動に密着しています。

 たとえばブライトバートは、カメラの前でACORN(Association of Community Organizations for Reform Now)という貧困者支援のNGOメンバーと喧嘩をしてみせる。ホテルのロビーでの罵倒合戦の模様をバノンが撮影し、編集でいかにもACORN側が滑稽に見えるようにするわけです。挙げ句の果てには成りすましの売春婦とヒモを囮に使い、ACORNが生活保護を受けるための裏口アドバイスを授ける模様を撮影して晒すなど、なかなかえげつないことをしています。

 ブライトバートが左派との肉弾戦を展開し、バノンが祭りの火に薪をくべる。そうして反オバマ・反民主党の気運が高まるなかで、ある変化が生じます。『ブライトバート』の周辺にKKK(クー・クラックス・クラン)のような危険な白人至上主義者が群がるようになったのです。

 白昼堂々、銃を提げて歩くようなスキンヘッドの連中やイラク戦争帰りのPTSD(心的外傷後ストレス障害)患者、前科者などが集まり、銃規制反対団体をフロント(非合法活動をカモフラージュするための組織)にして「アメリカに正義を取り戻せ」と言い始めた。

 最初はおじいちゃん、おばあちゃんの寄り合いにすぎなかったティーパーティー運動が、いつの間にか身元をロンダリング(洗浄)したスキンヘッドたちの群れに化けていたわけです。

 ――トランプ大統領誕生を後押ししたといわれる「草の根保守」の正体がこれなのですか。

 モーリー そう、草の根保守どころか草の根ファシズム(笑)。ネット社会新規加入のおじいちゃん、おばあちゃんのリテラシーの欠如に付け込んで「洗脳」を施し、民主党潰しのプロパガンダを見事に拡大したといえるでしょう。フェイスブック、ツイッターの流行がウェブ2・0(インターネットの双方向化を示す進化)ならぬファシズム2・0の状況を生み出したわけです。

(本記事は『Voice』2017年11月号、モーリー・ロバートソン氏の「バノンの亡霊は徘徊している」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の11月号をご覧ください)

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著者紹介

モーリー・ロバートソン(モーリー・ロバートソン)

ジャーナリスト・ミュージシャン

1963年生まれ。81年、東京大学とハーバード大学に同時に合格。東京大学を1学期で退学し、ハーバード大学に入学。電子音楽とアニメーションを専攻し、アナログ・シンセサイザーの世界的な権威に師事。88年、ハーバード大学を卒業。91年から98年までJ-WAVEの伝説的ラジオ番組「Across The View」のパーソナリティーを務める。2005年以降はポッドキャストのパイオニアとしてネットラジオ番組「i-morley」を配信、「Podcasting Award」を受賞。レギュラー出演中のテレビ番組にBSスカパー!「ニュースZAP」、NHK総合「所さん大変ですよ!」。著書に『よくひとりぼっちだった』(文藝春秋)など。

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