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鯨を“殺し続ける”反捕鯨国アメリカの実態

2019年03月05日 公開
2019年03月07日 更新

八木景子(映画監督)

鯨を“殺す”米軍のソナー音

――捕鯨を産業とする国と反捕鯨国とのあいだには、認識の埋めがたい隔たりが存在する。

【八木】 ところがその反捕鯨国のアメリカやイギリスが、じつはプラスチック廃棄や重油流出による環境汚染や商業船の騒音によって、鯨やイルカを苦しめ、死に至らせている事実はクローズアップされません。

とりわけ深刻なのが、アメリカ海軍の軍事演習などで発せられる大音響のソナー音です。

低周波の音源から480㎞離れた地点でも140デシベル(ヘビーメタルのライブ並み、大型の鯨の動作に影響を及ぼすとされる水準の100倍以上とされる)の大音量で、中周波ソナーはさらに広く使われています。

最近、ニュースで話題になる浜辺に打ち上げられた鯨の死因について、ソナー音が原因ではないか、といわれています。多数の鯨やイルカがソナーを浴びて方向感覚を失い、脳内出血を起こして沿岸に座礁しているという。

当の米海軍も2013年9月、ソナー音によって300頭以上の鯨やイルカが死に、重傷を負うものが1万頭以上、異常行動を起こす個体に至っては2000万頭に上ることを認めています。

――2000万頭以上の海洋哺乳類を危険に晒すほうが、捕鯨よりよほど問題に思えてしまいます……。

【八木】 しかし、米海軍はソナー音が海洋哺乳類に与える害について認めながらも、演習を中止することはありませんでした。

カリフォルニア地裁は同年、ソナー音の危険性を訴えた環境活動家の主張を受け入れる判決を下したものの、演習の許可基準を再検討するよう求めるにとどめました。

アメリカは捕鯨国を糾弾する一方、大量の鯨をいまでも殺し続けているともいえるのです。

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