Voice » 社会・教育 » 「AI時代」に必要となる、感度のよいしぶとさ

「AI時代」に必要となる、感度のよいしぶとさ

2019年03月18日 公開
2022年12月28日 更新

幸田真音(作家),藤本浩司(テンソル・コンサルティング株式会社代表取締役社長)

幸田真音,藤本浩司

写真:吉田和本

昨今「AI(人工知能)」という文字を目にしない日はないほど、AIが話題になっている。では「AI時代」に求められる人間の素養とは何か。数多くの経済小説を手掛ける作家・幸田真音氏と、AIを使ったサービスを企業に提供するテンソル・コンサルティング株式会社の社長を務める藤本浩司氏が語る。

※本稿は『Voice』4月号、幸田真音氏&藤本浩司氏の「AIを知ることは人間を知ること」を一部抜粋、編集したものです。

 

倫理性を気にしない中国にどう対抗するか

幸田真音

【幸田】 藤本さんは本業の傍ら、AIについて大学で教えられていますね。私が『人工知能』で凱を描いたのも、能動的でハングリー精神の旺盛な若者が日本にもっと出てきてほしい、という願いからです。

【藤本】 中国の研究者は非常にアグレッシブです。発表する研究論文の数も膨大で、ある意味、脅威ではあります。ただ、日本は物量では負けていても、かなり質の良い研究を発表しています。

いまAIというと、フィンテック(金融=Financeと技術=Technologyを組み合わせた語)やキャッシュレス決済の技術など、どうしても実用的な面が脚光を浴びがちです。

しかし、これらを支える基礎技術の存在を忘れてはいけません。日本は現在の潮流に乗っかるだけではなく、将来的に価値をもつ地道な研究の手を緩めてはならない、と考えています。

【幸田】 国の予算や民間投資の問題も指摘されます。日本人は真面目だから、「AI」「自動運転」といったキーワードが出てくると「遅れてはいけない」とすぐ飛び付いてしまう。

ところがブームが去ると、反動で急に冷めてしまって、国として十分な投資が続かない。

質の高い研究をしている人たちはいても、数の原理や勢いで中国との競争に負けている、というもどかしさを強く感じてしまいます。なにしろ中国は、日本やアメリカのように個人情報の保護などの倫理性を気にする必要がないのですから。

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