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「孤独」が僕たちをつないだ――外国人労働者と向き合う孤独な蕎麦職人。藤竜也インタビュー

2020年01月10日 公開
2020年01月10日 更新

藤竜也(俳優)

二人をつないだのは「孤独」

藤竜也蕎麦職人の弘(右、藤竜也さん)と中国人の青年リャン(ルー・ユーライさん)©2018 CREATPS / Mystigri Pictures

――藤さんから見て、弘はどういった人物なのでしょうか。彼はときに厳しく、ときに優しく、でもどこか寂しそうにも見えました。

【藤】 人生がうまくいってきた人じゃなくて、むしろ失敗のほうが多かった人物です。僕はいつも、演じる役の「履歴書」をつくります。その人がどこで生まれて、ドラマが始まるまで何をしてきたかの軌跡を辿っていく。

演じるうえで大事なのは、脚本に書かれていることが基本だけれど、それに自分で補足していく。彼はこういう人生を過ごしてきたといった「物語」を監督に示して、話し合うんです。

弘は何事にも一所懸命に取り組んできたけれど、東京で少し躓いて、妻の故郷だった山形に来た男、というようにイメージを膨らませました。

――蕎麦屋に働きにくる中国人の青年リャンを演じたルー・ユーライさんには、どんな印象をもちましたか?

【藤】 ユーライは控えめな青年でね。現場であれこれ口出ししないで、言葉少なくやるべきことをちゃんとやる。プロですよ、彼は。すでに世界で映画賞を獲っていて、充実した仕事をしている。きちんとキャリアを積んだ、いい俳優だと思います。

――弘とリャンは蕎麦屋で共に働くなかで、次第に親子のような関係を築いていきます。国も世代も異なる二人が徐々に交わっていくのは見どころの一つですね。

【藤】  二人をつないだのは「孤独」だろうね。

弘は自分自身も傷つきながら生きてきたからこそ、異邦人である青年(リャン)の痛みがよくわかる。

身体が老いて命が消えようとしているなかで、最愛の妻はすでに亡くしているし、息子との関係だってうまくいっていない。そんな弘の悲哀と、異国の地でもがくリャンの寂しさが重なった。

そうして互いに寄り添いながら前に進む姿は尊いものではないでしょうか。

 

藤竜也

『コンプリシティ/優しい共犯』
2020年1月17日(金)より新宿武蔵野館にてロードショー
©2018 CREATPS / Mystigri Pictures

■スタッフ&キャスト
ルー・ユーライ 藤竜也 赤坂沙世 松本紀保 バオ・リンユ シェ・リ ヨン・ジョン 塚原大助 浜谷康幸 石田佳央 堺小春 / 占部房子
監督・脚本・編集:近浦啓
主題歌:テレサ・テン「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」(ユニバーサル ミュージック/USMジャパン)
製作:クレイテプス Mystigri Pictures 制作プロダクション:クレイテプス 配給:クロックワークス 
2018/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/116分 

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