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「優等生社員のワナ」第1回 なぜ「できる人」が会社を滅ぼすのか

2016年03月10日 公開

柴田昌治(スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表)

「できる人」が陥る5つのワナ

「決断が速い」「処理能力が高い」「気が利く」「調整能力がある」……誰もが「できるビジネスマンの条件」として思い浮かべるこれらの能力。だが、それだけに頼っていると、むしろ組織を弱体化させるリスクとなる。こう話すのは、組織の風土改革の第一人者として知られる柴田昌治氏だ。従来型の「できる人」から脱却し、自分と組織を強くするにはどうすればいいのか。短期集中連載でうかがった。

 

処理能力が高いことと仕事ができることは違う!

とある企業のオフィス。深夜になっても仕事を続けているのは、つい先日、昇進を果たしたばかりの営業課長だ。役員や部長からはしょっちゅう呼び出され、率いる部下の数も増え、上からも下からも仕事がどんどん飛んでくる。それをさばくため、毎日遅くまで残業し、終わらなければ仕事を家に持ち帰り、必要とあれば休日出勤もいとわない。

さすがに最近は心身ともに疲労が溜まっているのを感じる。だが口では「仕事が多すぎる」と不満や愚痴を言いつつも、内心では実のところこう思っている。「会社のために頑張っている自分は嫌いじゃない。自分は優秀な社員なんだ」……。

「まさに自分のことだ」と思った方も少なくないと思います。そして、そう思われた方はきっと、「自分は会社に貢献している」という自負も、多かれ少なかれ持っているはずです。

確かに従来の日本企業では、このような「大量の仕事をさばくことができる人=処理能力の高い人」が「できる人」として評価されてきました。しかし、最近では、その常識が通用しなくなってきています。

もちろん、処理能力が高いこと自体は、悪いことではありません。ただ、目の前の仕事を右から左へと「さばく」働き方ばかりが身についてしまうと、本人も会社も気づかないうちに「ワナ」に陥ってしまうからです。

 

できる社員のワナ1
「仕事をさばく」

その最も大きな弊害が、意味や目的・価値などを「考える習慣」の欠如です。上司や顧客から降ってくる仕事をただ素早くさばいていくだけで、「そもそもこの仕事にはどういう意味があるのか?」という本質的な問いかけを忘れて、流れ作業的に業務をこなす。これは、言い方を変えれば、「上司から指示されたことはやるが、それ以上のことは何もやらない」という働き方に通じるのです。

新入社員ならまだしも、組織を率いる管理職が意味も考えずに仕事をしたらどうなるか。私が実際に目にした、ある企業の事例をご紹介しましょう。

その会社では、ビジネス環境の変化に伴い経営戦略を見直すことになり、人事部門でも「働き方を改革し、ダイバーシティを推進する」という戦略が立てられました。それをきっかけに、人事部門のある若い女性社員が「育児と仕事を両立する社員が集まり、環境改善について話し合う場を作りたい」と上司に提案したのです。本来なら上司は「改革のために、新しいことに挑戦する人」を応援するのが当然でしょう。ところが、「余計なこと」と、彼女の提案を却下してしまったのです。 

実はこの上司も、典型的な従来型の「できる人」でした。上から降りて来た戦略や方針をそのまま実行することは得意でも、「そもそも、この仕事はなんのためにやるのか?」を考えたことがない。だから、部下が新しいことに挑戦しようとしても、その意味や価値を考える前に、「上から指示されたことでない」と機械的に却下してしまったのです。

一番怖いのは、本人にはまったく悪気がないことです。それどころか「自分は会社に貢献している」と信じて疑わない。つまり、知らず知らずのうちに、自分が抵抗勢力になってしまっているのです。

できる社員のワナ2 「上司の的」に当てにいく >

iyashi

著者紹介

柴田昌治(しばた・まさはる)

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。

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