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大半の人が払いすぎ!? 「保険料」の大誤解

2016年09月27日 公開
2023年05月16日 更新

後田 亨(オフィスバトン「保険相談室」代表)

30〜40代が入るべき保険は二つしかない

 

 もし自分が死んでも家族が困らないように保険で備えておきたい。でも、死ななくても損をしないように貯蓄も兼ねる保険にしておきたい……。将来のことはわからないだけに、さまざまなことを考えて、結果的に高い保険料を支払っている人は多い。保険加入者が見落としている保険選びの本質的なポイントを、専門家にうかがった。

 

保険は基本的に「損をする」もの

 まず大前提として知っておいていただきたいのは、あえて損得という言葉を使うと、「保険に入ると損をする可能性が高い」ということです。毎月支払う保険料の全額が加入者に還元されるわけではないからです。保険料には、保険会社の人件費や広告費、代理店手数料などの諸経費が見込みで含まれています。諸経費を引かれた残りのお金が保険金や給付金にあてられるわけです。

 では、その諸経費はどのくらいなのかというと、保険料設定などに関わる保険数理人によると、主に入院に備える医療保険で30%程度といいます。医療保険専用ATMに1万円入金すると3,000円の手数料がかかるイメージです。「安心感」を求めると見過ごされがちですが、お金を調達する手段としては非常にコストが高く、不利なのです。

 ちなみに競馬(JRA)の還元率は約75%。人気の医療保険は、トータルでは競馬よりも損をする可能性が高い仕組みなのです。

 

「滅多に起きないこと」に保険をかけるのはムダ?……×

 医療保険以外の保険も、保険料から諸経費が引かれた残りのお金が加入者に還元される構造は変わりません。それでも保険の素晴らしさを引き出せる使い道もあります。「滅多に起きないけれど、起きたら大変なこと(なおかつ、いつ起こるかわからないこと)」に備える場合です。

 たとえば、30代で小さな子供がいる世帯主が病気や事故で急死するようなことは、滅多に起きないこととはいえ、起こったときの影響は大きいと思われます。そんなときに保険が心強い味方になるのです。保険金が支払われる事態が多発しないので、数千円の保険料で数千万円の保障を持たせることができるからです。このように、まとまっていない額のお金(保険料)で、まとまった額のお金(保険金)を用意できるのが、保険の最大のメリットです。

 レアケースに、保険料が安い「かけ捨て」で備えるのが、保険の基本です。

 

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かけ捨ての死亡保険と就業不能保険くらいでいい?…… ○ >

著者紹介

後田 亨(うしろだ・とおる)

オフィスバトン「保険相談室」代表

1959年、長崎県生まれ。長崎大学経済学部卒業。95年、アパレルメーカーから日本生命に転職。約10年、営業職として在籍。2007 年、複数社の保険を扱う代理店に在籍中に上梓した『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)がベストセラーに。その後、独立し、12年より「保険相談室」代表として、保険の有料相談、執筆、講演などに従事。著書多数。

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