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スッキリ目覚めて疲れが残らない睡眠術

2016年12月22日 公開
2023年05月16日 更新

裴英洙(医師/ハイズ代表取締役社長)

パフォーマンスを劇的に上げる「戦略的」睡眠術とは?

ビジネスマンにとって、スキルや資格は大切だが、それは、きびきびと動ける身体と、瞬時に正しい判断ができる頭脳があればこそ。身体と脳を常に良い状態にキープしておくためには、きちんと休ませる必要があり、それには「正しい睡眠」が欠かせない。では、どのような睡眠を取り、どのような準備が必要なのか。医師でありながらコンサルタントとしても活躍する裵英洙氏に話をうかがった。

 

睡眠をおろそかにするといつか燃え尽きる!?

 精力的に働くビジネスマンは、ともすれば「睡眠」の優先順位を低く設定しがちです。眠る時間を削り、疲労を栄養ドリンクでごまかし、激務をこなす自分に充実感を覚える──という人は少なくありません。

 こうした人は、仕事を「静止画」のように見ているのではないか、と私は思います。「朝イチで商談」「午後は会議」など、各場面を点のようにとらえて、「ここさえ乗り切ればOK」と考えながら、仕事をしているのです。

 しかし、現実の生活は静止画ではありません。商談の前には準備や調査の時間があり、その間には食事や休息も必要になるはずです。つまり、どんな業務も継続性のある「動画」としてとらえ、スタートからゴールまで持続的にエネルギーを配分することが、本来の望ましい状態なのです。

 ところが「静止画」思考の人は、ゴール地点でだけ瞬発力を出せばいい、と考えます。そして、ゴールごとに毎回瞬発力を絞り出します。言わば、絶えず「短期決戦」を繰り返しているのです。

 この働き方は短期的には高い成果につながりますが、長期的に考えるとハイリスクです。

 この状態にあるとき、人は疲労を感じにくくなります。脳の「前頭前野」は、気力がみなぎっているとその感覚を優先的に認識し、身体の疲れに「蓋」をします。すると、感知できない疲労がどんどん蓄積されます。そしてあるとき限界を迎え、急ブレーキがかかってしまうのです。

 バリバリ働いていた人が突然大病をしたり、「うつ」になったりして仕事を継続できなくなるケースは、たいていこの道筋をたどった結果です。

 睡眠は、その事態を未然に防ぎます。身体の疲れはもちろん、対人関係のストレスなどによる心の疲れや、頭脳労働による神経的疲労も、毎晩きちんと眠ることで、大半はリセットできます。

 また、睡眠は疲労の「清算」と考える人が多いのですが、実は未来への「投資」の役割も果たします。質の良い睡眠を取ることで翌日のパフォーマンスが上がり、それを続けることで、元気に働き続けられる身体を維持できるからです。

 眠りを考えることは、短期決戦用の「戦術」ではなく、何十年も続くビジネスマン生活全体で高いパフォーマンスを出すための「戦略」と言えるでしょう。

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著者紹介

裴 英洙(はい・えいしゅ)

ハイズ〔株〕代表取締役社長/医師/医学博士/MBA

1972年、奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に勤務。医師として働きながら、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)を首席修了。ビジネス・スクール在学中に、医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在も医師として臨床業務をしつつ、医療機関経営に関するアドバイスを行なう。著書に、『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(ダイヤモンド社)など。

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