岩田松雄・元スターバックスCEOが、社員に送り続けたメッセージ
2017年10月05日 公開 2022年08月18日 更新
※一流の講師陣による講義も「松下幸之助経営塾」の魅力の一つ。ここでは、卒塾生が定期的に集まって“志”を確認し合う「同志会」での講義の内容を抄録します。
(2013年4月27日収録・構成:荒木さと子)
ミッション経営と社員に送り続けたメッセージ
合計8年間の社長時代にやり続けたことが、一つあります。それは、社員にマネジメントレターを送り続けたことです。ほぼ毎週、私から社員に向けて、メッセージを発信し続けました。特に、ザ・ボディショップとスターバックスには店舗があり、お店のスタッフは自分が離れ小島にぽつんと取り残されたような気持ちになるのではないかと考えたからです。社長が何を考えているのか、会社がどの方向に向かっているのか、自分たちはどこに立っているのかを知りたいだろうと思って送り続けました。
ザ・ボディショップでは毎週3000字、スターバックスでは月に2回1800字を、月曜日の朝礼後に全店舗に送りました。3000字のメッセージを書こうと思うと4~5時間かかるので、とても大きな負担でした。もうやめようと何度も思いましたが、店に行くとバックルームに貼って、皆とても楽しみにしてくれていました。だから続けることができました。
スターバックス時代、西日本が台風の被害にあった時には、こんなメッセージを出しました。「もし災害で困った人がいたら助けてほしい。水が必要な人がいたらペットボトルを差し出してほしい。スターバックスの社員である前に、人間として正しい判断をしてほしい。必ず私はその判断を支持するから」。これはスターバックスのミッションを私なりの言葉で伝えたものです。
実はこのメッセージを読んでいてくれたアルバイトのパートナーが、とても素晴らしい接客をしてくれました。ある主婦の方から私宛にハガキが届いたのです。その主婦の方は車を運転していて、たまたまスターバックスの店舗前で交通事故を起こし、気が動転していたそうです。それを窓越しに見ていたパートナーがコーヒーを一杯持っていき、「どうぞこれを飲んで気持ちを落ち着かせてください」と言って差し出したと。主婦の方は大変感激してお礼状をくださったのです。このような対応は、マニュアルに書きようがありません。普段からミッションを理解していたからこそできたことです。