グループウェアの提供を通して企業の「働き方改革」推進を後押しするIT企業サイボウズ。「在宅勤務」「育児休暇」「副業」など、現在の時流に求められる企業のあり方を最前線で体現しており、同社から発信される情報に、各企業で変革を志す人々に強く支持されている。
しかしながら、同社副社長の山田理氏によると、もともとサイボウズは典型的なブラック企業であり、2005年には離職率が28%にも到達するなど、危機的な状況にあり、変革に迫られたところからスタートしたという。
つまり、働き方改革が叫ばれるずっとずっと前からサイボウズは働き方を変えることに挑んできたのだ。本稿は、山田理氏の著書『最軽量のマネジメント』より、今、最も損をさせられているのがマネージャー職にある人々であることを指摘した一節を紹介する。
※本稿は山田理著『最軽量のマネジメント』(ライツ社刊)より一部抜粋・編集したものです
「多様性」の陰で生まれたのは、「世代間のギャップ」
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と評された80年代バブル時代。
巷にはモノが溢れ、株や土地の価格が上がり、給与も増え、ブランド品も身近になり、若者は夜をディスコで踊り明かしました。
これがつまり、現在多くの大企業で、代表や役員を務める経営者層が生まれ育ち、暮らしてきた時代のことです。
その狂乱もつかの間、バブルが弾けます。
景気が底を打つ中で、人はだんだんと「生きるために何をするか」ではなく「幸せになるためにどう生きるか」を考えるようになりました。
お金をたくさん稼ぐこと、モノをたくさん持つことが幸せ、という昭和の幻想が崩れ、ライフスタイルを重視して仕事とのバランスを考えたい、という理想が生まれました。
そして現代。インターネットとスマホの普及により、その理想は現実になりました。
場所に依存しないコミュニケーションが容易になり、「働く場所や時間を自由に決めたい」という価値観が生まれ、一人ひとりの理想は多様化していきました。
その一方、インターネットとスマホを活用する世代と「それ以前の世代」のコミュニケーションコスト……ひいては価値観のギャップが、見過ごせない現実として生じてきたのです。
2015年に行われた、興味深い国際調査の結果があります。
ISSP(国際社会調査プログラム)によると、「自分の職場では、職場の同僚の関係は良い」と思っている人の割合において、日本は調査対象37カ国中、最下位でした。
日本人と気質がよく似ていると言われるドイツが、2位の93・4%という数字に対し、日本は69・9%。しかも、2005年調査時の数字は81・5%。
10年前と比べても大幅に悪化しています。つまり、この数字が示すのは、日本の組織のあり方が多様性の時代に追いつかなくなっている、という現実です。
では、その原因はどこにあるのでしょうか。