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なぜ数学を学ぶ「文系卒ビジネスマン」が急増しているのか?

冨島佑允(とみしまゆうすけ)

2021年08月17日 公開 2021年08月23日 更新

ビジネスパーソンの間で数学ブームが到来しているという。ビジネス社会を生きていく上で文系理系問わず、数学的発想が必要だと語る冨島佑允さんの著書『数学独習法』(講談社)も発売直後から増刷を重ねている。なぜ数学を学びたい人が増えているのか、数学が必要とされる背景やその効能をお聞きした。

 

ビジネスマンは文系でも"数学は不可欠"

2020年は人類史に残る「コロナパンデミック」という大事件が起きました。日本で感染が拡大しはじめたころのテレビ報道を振り返ると、「指数関数的な感染者の増加」や「再生産数」など、普段聞きなれない言葉を耳にしたことが思い出されます。

そういった言葉の背景には、感染拡大の勢いを予測するための数式があり、それをもとに対策を立てる専門家集団がいました。感染はどれくらいの勢いで広がっていくか、どこまで接触を抑えれば感染は収まるのかといったことを数式を駆使して分析し政治家へ対策を提言していたのです。ほんの一握りの数式が1億2千万人の運命を左右しているのです。

コロナに限らず、近年は数理的な話題が世間を騒がせることが多くなりました。例えば、機械学習では数学の一分野である統計学を駆使してビッグデータを処理していますし、ロケット・ドローン・空飛ぶクルマは微分積分学を応用して飛行しています。

また、地震の研究や音楽のデジタルデータ化には三角関数が不可欠です。最近では、セガが社内勉強会用の数学教材を一般公開にして話題になっていました。

それはゲーム制作の際に用いる高度な数学知識を150ページにわたって解説した資料です。ゲームをプレイする側に数学は必要ないかもしれませんが、ゲームを制作するクリエイターの側には数学が不可欠ということです。他にも応用例は無数にあり、現代社会はいたるところに数学が浸透しています。

数理人材がビジネスの命運を左右することも当たり前になりました。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建した森岡毅氏の著書『戦略思考の確率論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(角川書店)はベストセラーになりましたが、本の中で森岡氏は、数学を駆使してアトラクションの需要予測を立て、USJをV字回復に導いた話を展開しています。

慶応大学教授・ヤフー株式会社CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)の安宅和人氏も著作を次々と出版されており、理系人材の存在感がますます高まっています。

ビジネスの世界ではもはや数学が不可欠になり、「文系」であろうと今まで数学を避けてきた方であろうともう元の世界には戻れません。今や、数学に関する基礎的な理解は「一般常識」として身に着けるべきものとなりました。数学を理解せずして現代社会を理解することはもはや不可能と言えるでしょう。

 

数学を学びたくても時間が…

このような世の中の変化を受けて、多くのビジネスパーソンが数学の勉強に熱を上げています。大人のための数学教室が流行し、社会人のための夜間大学院は有名どころの入試倍率が数倍となり、統計学やデータサイエンスの通信教育に受講者が殺到しています。

個人的な話になりますが、私の知人(文系)はベンチャー勤めで毎日深夜まで働くハードワークの中、月に数万円の授業料を払って東大卒の家庭教師をつけて数学を学んでいるそうです。子供ではなく自分自身に家庭教師をつけているのです。

これほどまでに数学の勉強がブームとなる中、ビジネスパーソンにとって最大の悩みは「時間」。学生と違って、本業の仕事や子育てをしながら時間を捻出して勉強するしかありません。

だからこそ、学生時代とは根本的に異なる勉強法が必要になります。学生時代の勉強法は、勉強する時間がたっぷりあることを前提とした「積み上げ式」です。

中学・高校の数学の教科書を開いてみると、まずは定理Aの証明から入り、その定理Aを使って定理Bを証明して、、、というふうに論理を順々に積み上げていくことで話が展開されていきます。そして沢山の公式を暗記して、公式の使い方を身に着けるために色々なパターンの問題を解いて、、、という形で勉強が進んでいきます。

社会人が同じやり方で勉強していたら時間がいくらあっても足りません。ですから、社会人は社会人なりの方法で数学を学んでいく必要があります。

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まず数学の「俯瞰力」を磨くことからスタート

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