あのとき転職しなければ...と転職後にいつまでも「たら・れば」と過去に浸っていても仕方がない。現役人事部長であるグロねえ氏は、転職を成功させるためには良い結果を出し、自身の選択を正当化しなければならないと語る。転職後に良い結果を出すために重要なこととは何か。
本稿では同氏が転職を成功させるために重要なマインドを紹介する。
※本稿は、グロねえ著『「転職後」の教科書』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。
「あのままいたら…」は考えても無駄
前の会社やそこでの実績を懐かしんで、「○○していたら」「□□していなければ」といった「たら・れば」はついついしてしまうもの。でも、はっきり言ってそれは時間の無駄です。
四社目に入社して一年弱が経った頃、私は自分が納得いく成果がまだ見えない状態で、モヤモヤしていました。そんなときに過去の部下や同僚から「その後どう?」という連絡がきたのです。自分の不甲斐なさを感じていたタイミングだったので、気持ちが前の会社に引きずられました。
さらには「なんであのタイミングで辞めちゃったんですか?もったいない。今、グロねえさん(実際は本名ですが)が仕掛けていたことが、花開いている感じですよ。もう少しいたら良かったのに」と言われて、返す言葉がありませんでした。
あのまま残っていたら、私はもっと成果を出せたのかもしれない。今の会社に入って数カ月経つのに、企画だけで行ったり来たりして、何も成果を出せていない。これでよかったんだろうか、と。「いつでも戻ってきていいよ」と言ってくれる前の職場の人がいると、苦しいときにその言葉をつい思い出してしまうのです。
「今ならまだ戻れるか?」
「いや、さすがに今、辞めるわけにはいかないでしょ」
そんな葛藤を続けていました。このような状態で、良い仕事ができるわけはありませんが、なかなか割り切れない自分がいました。そして、組織を無事に立ち上げたものの、そこでの働きがほぼできていない状態が続いて悶々としていたとき、大きな組織変更がありました。
それにより、また私にも試練がきました。新しい組織体制なので、人間関係も再構築が必要となったのです。組織人ですから、想定外のことは起こりますが、自分がようやく「頑張れそうかな」と思っていた矢先でしたので、出鼻をくじかれた感じでした。
ただ、この組織変更によって担当する範囲も増えたので、自身のさらなる成長につながるものになることは確信できました。この年齢にして、そんなチャンスは滅多にないと感じましたし、何より、成長し得る環境を求めて動いたのは自分でしたので、「この与えられた環境でやりきるしかない」と腹を括りました。
あのままいたら……といった「たら・れば」は考えても意味がないことです。「どこかで割り切りは必要だ」、そう自分に言い聞かせて乗り越えました。
良い結果を出して、転職を正当化する
あのままいたら……と妄想すること自体は、悪くないのかもしれません。それを元に自分を奮起させて「あのままいたら、自分はこうなれていたかも……ということは今の自分にもできるはずだ!」くらいに考えられるなら、問題はないでしょう。
しかし多くの場合、ただただ過去に引きずられてしまうことがほとんどです。そして度がすぎると、過去にしがみついているだけの意味のない空想で終わり、得られることは何もありません。
同時に、「あのままいたら……」と思う状況というのは、リアルが充実していない証拠でもあります。だからこそ現実逃避をするのです。その現実逃避は、今の会社で実績を上げていくのにプラスになるものでしょうか?
仮にプラスに使える要素があるならば、そのまま考え続けても良いかもしれませんが、実際には、マイナスの方に働きかねません。さらには、そこからどんどんマイナス思考の負のスパイラルが始まり、「この転職は間違っていたのではないか?」などと考えてしまうことも。
そうなってしまったらすべてが嫌になったり、悪く見え出したりするものです。その結果、稀にですが本当に前の会社に戻る人もいます。それが自分のキャリアにもプラスに働くのであれば、ありかもしれません。
しかし多くの場合は、前の会社に戻ることなく、今の会社で働き続けることでしょう。そうやって、前向きに転職した今の会社での実績を積み上げていくしかないのです。それで過去よりもさらに良い成果を出して、自分で自分の選択を「正しかったもの」にする(正当化)しかないのです。