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“戦略的”時間術…最速で「結果」を出すには

理央周(コンサルタント/マーケティングアイズ代表取締役)

2012年07月25日 公開 2024年12月16日 更新

仕事が“できる人”は、時間を一時も無駄にせず、有効に使いこなす。

このように語るのは、コンサルタントとして活躍をする理央周氏だ。理央氏は、長年のビジネスマン生活の中で出会ったエグゼクティブたちの時間の使い方を分析している。

※本稿は、理央周 著『最速で結果を出す人の「戦略的」時間術』(PHPビジネス新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

仕事ができる人は、時間を濃縮できる

「仕事ができる人間」というのはどこの職場にもいるもので、私も会社員生活25年の中で、数多くの企業でいわゆる「できる人間」と仕事をしてきた。

大学卒業後、私は愛知県にあるトヨタ系部品メーカーで生産管理の仕事をしていた。その頃の上司であるK氏は、私が初めて出会った「できる人」で、部内からはもちろん会社中から信頼されていた。私はK氏から仕事の基本だけでなく、社会人としてどうあるべきかということまで、様々なことを教わった。

K氏が尊敬と信頼を集めていたのは、何よりも仕事で高いレベルの「結果」を出していたからだった。生産管理の仕事は在庫をできる限り減らし、得意先の納期も同時に死守するという、一見矛盾する要求をこなさねばならない。その中でK氏は、誰から見ても圧倒的な結果を出していたのだった。

さらに、オフタイムでの、一私人としてのライフスタイルも魅力的だった。休日に部下を誘って遊びに連れていってくれたり、奥様の手料理を食べさせてくれたりした。

社会人になったばかりで、仕事をこなすので精一杯、余暇は疲れて寝るだけの私は、いつも「なぜあんなに仕事ができて、余暇もきっちりと楽しめるのかな」と感じていたものだ。

そんなある日。当時、私が交際していた彼女(現在の妻)がいろいろと悩んでおり、そのことで夜に電話がかかってきた。これは今すぐに会いに行くべきだと思ったのだが、当時、私は名古屋に住んでおり、彼女は静岡にいた。

そこでK氏に事情を話し、翌日に有給休暇をもらうことにした。忙しいにもかかわらず快諾してくれたK氏だったが、こう付け加えた。

「そうか、じゃあ休んで行ってこい。でも、俺なら昨日の夜に彼女から電話があった時点で静岡に行って、朝から会社に来るよ」

私にとっては、その発想はちょっとした衝撃だった。確かにそのとおりで、そのほうが彼女も喜ぶし、仕事にも支障が出ない。K氏が仕事もプライベートも充実している理由がわかった気がした。時間を一時も無駄にせず、有効に使いこなす。いわば「時間を濃縮」していたのである。

結果を出す人の時間の使い方はこうなのだと、痛感した出来事であった。

私生活も充実させ、そのうえで仕事でも結果を出す。そのために大事なことは、時間を濃縮させることなのだ。

 

結果を出す人は「途中で満足しない」

私は25年間のビジネス人生において、多くの「結果を出せる人」を見てきたが、その多くの人に共通する条件として「結果を出すことに対する貪欲さ」というものがある。

もちろん、結果を求めてがむしゃらに働くということもあるが、むしろ重要なのは「最後の一押し」であることが多い。つまり、ある程度頑張ったからといって納得してしまうのではなく、最後の最後まで手を抜かない、という姿勢である。

私は今まで、1年間だけ営業職を経験したことがある。セールス・プロモーションと呼ばれる販売促進案をクライアントの企業に提案する、という仕事だった。

それまで「在庫率をどれだけ減らせるか」「得意先への納期をどれだけ守ることができるか」という生産管理の仕事を主にやっていたので、売上を上げるという営業の仕事は戸惑いの連続であった。

前任者から引き継ぐ既存の得意先だけでなく、新規の得意先を開拓するための「飛び込み営業」もした。

トレーニングという意味も含めて先輩と回ることもあるのだが、基本的には一人で「初めて訪問いたします、販売促進の代理店ⅩⅩの理央と申します。営業・販売促進のご担当者様はいらっしゃいますでしょうか」と企業を訪問するのだ。

今でこそ人前で話をする仕事をなんの苦もなくこなしているが、当時は初めての経験で不慣れなこともあり、1件終わると汗だくになり、どっと疲れたのを覚えている。当然、

結果も出るわけがなく、最初の数カ月は達成率20%くらいだった記憶がある。

扱っている商品は既存の企画だけでなく、新規提案というものもあった。得意先のニーズを洗い出し、「販売促進における課題の解決策=ソリューション」としてオリジナルの企画を提案するというものだった。

あるとき、得意先の製薬会社の販促部の方から、「うちの営業マンがお医者さんのところで話をするきっかけがないのです」という話を伺った。

MRと呼ばれる営業マンたちは医院を回って自社の薬を紹介するのだが、医師のところには多くのMRが入れ替わり立ち替わり訪問し、一人ひとりの営業マンになかなか時間を取ってくれない。そこで、まずはその中でなんとか目立つことで、会話の突破口を開きたい、ということだった。

私はその課題を社内に持ち帰り、他部署の人やデザイナーまで巻き込んで解決策を検討した。その結果、「手品」のセットを得意先に提案することになった。

医師の前で手品を見せることにより、「面白いでしょ。先生も新年会や披露宴の席でやれば受けますよ」などと言うことで、コミュニケーションの糸口にしたのだ。

このような企画は他社も提案していなかったこともあり、晴れて採用になった。それまで目標値のはるか下を低空飛行していた私は社内でも評価され、すっかり満足してしまった。

そのため、納品が終わったあと、そのままフォローを怠ってしまったのだ。数カ月後、その得意先を訪問し次の手品のセットを提案すると、「他社さんから次の手品を提案されたので、もう次節の分は決まってしまったよ」とのことだった。

この得意先に関しては、年2回大きな販促用品の企画時期があるのだが、ヒアリングを怠っていたために後半の分の契約獲得を逃してしまった。

しかも、それを反省することなく「新規提案というかっこいい仕事ができたし、まあいいか」と変に納得してしまい、その企画を別のところに売り込もうということもしなかった。

結果、この年に関しては完全な目標未達に終わってしまった。当時の私には、結果に対する貪欲さが欠けていたのだった。

一方、当時の上司は私になかった「貪欲さ」を持った人だった。私より1歳年上で、その企業ではいわゆる出世頭と言われ、最年少でチームリーダーと呼ばれる課長職に就いた人だった。

その人は、「お客様への約束達成」を至上命題として、貪欲に成果を求めていた。たとえば、得意先への納期が遅れそうになると、なりふりかまわず取締役を通して仕入先を動かしていた。

制作物の色に関しても、何度もお客様の意向どおりの色味が出るまでやり直しを命じていた。そのため、社内では部下や他部署に恐れられる一方で、得意先からの信頼は絶大であった。

目標達成に対する意識の違いが、結果の達成率に大きく表れることを学んだ出来事だった。

 

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