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BS-TBSで話題の番組 「女子才彩」 から生まれた書籍 『わたし色の生き方』

石山智恵(キャスター/インタビュアー)

2013年04月12日 公開 2024年05月28日 更新

 BS-TBSで放映され、大変好評を得たドキュメンタリー番組「女子才彩」(番組提供:パナソニック)が、書籍 『わたし色の生き方』 として刊行されました。同番組のキャススターをつとめた石山智恵さんが、番組にご登場いただいた100 人程の中から12人を再取材、懸命に生きる女性たちの姿を描くヒューマン・ノンフィクションとしてまとめたものです。

 石山さんは、1998年から、NHK BS-1「経済最前線」のキャスターを10年間担当。国内ほか、アジアや欧米の経済の動きを取材し、「トップインタビュー」のコーナーでは、およそ100人の企業経営者にインタビューしてきました。2008年からは、BS-TBS「女子才彩」のキャスターを担当し、“女性の多様な生き方・働き方”をテーマにインタビュー取材を続けてきたのです。

 この『わたし色の生き方』を上梓するにあたり、石山さんはタイトルにこめた思いなどを、次のように綴っています。(本書、まえがき、あとがきより)

 

 「わたし色」―― これは、この本に登場する12人の女性たちの生き方にふさわしい言葉は何かと考え、つけたタイトルです。

 取材した12人の女性たちは、年齢は20代から50代。出身地、育った環境はもちろん、関心を持っていること、今している仕事まで、まさに“12人12色”で様々です。

 一方で共通していると感じたのは、それぞれに、「大切にしたい何か」を持っているということ。その思いを原動力に、どうしたら自分らしく生き、また社会と関わり、貢献することが出来るかを懸命に考え続けていました。

 そんな彼女たちの姿は、私にとって、それぞれの色に輝いているように見えました。それはきっと、彼女たちに、「自分の歩く道は自分で切り拓いて行こう」という“意志”を、感じたからだと思います。

 かつて、多くの人々が同じ方向に向かって努力し、社会が発展を遂げた時代とは異なり、最近は、「先が見通しにくくなった」とか、「生きづらい時代になった」といった声がよく開かれるようになりました。そうした中では、「私もあんな風になりたい」という生き方のお手本は見つけにくく、自分はどんな進路を進むべきかと悩むものです。

 そんな時、頼れる道しるべとなるのが、それぞれの心の内にある「私は何を大切に生きるのか」という“意志”なのではないかと思うのです。この本は、12人の意志が放つ“わたし色”に彩られています。

 2008年10月にスタートした、BS-TBSのテレビ番組「女子才彩」では、様々な分野で活躍する女性たちを紹介してきました。4年半の間に取材した女性は100人に上ります。中には世界を舞台に活躍している方もいらっしゃいますが、多くは、あまり世間には知られていないところで地道な活動を続けている人たち。「女性の生き方や働き方は、こんなにも多様なのか」と、毎回、驚きの連続でした。

 その職業の一例をあげると、私たちがすぐに思い浮かべることが出来る仕事とは、いかに限られているかに気づかされます。救急救命士、食器デザイナー、樹木医、土木技術者、ペットトリマー、鷹匠、パティシエ、住職、鉄道会社社長、プロクライマー、魚市場のせり人、漆塗り職人、鍛冶職人、紅型作家、杜氏、メディカルアーティスト、活動弁士、音楽療法士……といった具合です。これだけを見ても、「へぇ、どんな仕事なんだろう?」「どんな女性がしているのかな」と、興味が湧いてきますよね?

 100人の女性に話を聞き感じたことは、色々あります。例えば、女性は、何かを「したい!」「変えたい!」と思うと、行動に移すのが早い。よく聞かれたのが、「やってみて駄目だったらまた考えたらいい」という言葉でした。そこには、いきなり大きなことを成し遂げようとするのではなく、まずは自分に出来る小さなことから始めよう、という姿勢を感じました。また、これは女性だから、ということではないと思いますが、取材した方々は皆さん、人との“出会い”を大切に、人生の肥やしにしていました。話していて「素敵だな」と思う人に限って、「私は人の緑に恵まれています」とおっしゃるケースが多いのですが、出会いの中から素直に学び、その先の人生に生かしていくのも、女性は得意なのかなと感じることもありました。

 こうした、普段の生活の中ではなかなか出会うチャンスが巡ってこない人たちに出会い、話を聞くことが出来る取材の仕事は、いつも“役得”と感じているのですが、取材する度に、知らなかった社会の成り立ちを知り、そこに生きる人の思いや智恵を知ることが出来ます。そして気が付くと、「よりよく生きる」ことに真撃で懸命な人たちに、いつも惹かれていくのです。

 彼女たちから教わった、今を生きる様々な智恵は、私に、明日を考える“きっかけ”や“ヒント”を与えてくれました。それはきっと、読者の皆さんにとっても同じはず。「私はこの女性の生き方に興味がある」とか、「この人の考え方には共感する」と、様々に感じながら読み進めていただければと思っています。

 番組をご覧になっていない方、とりわけ、これから社会に出る若い人たちに届けたいと、書籍の形で記録することを願ってきました。今回、多くの方々のお力添えをいただき、それが実現したことはとても嬉しく、感謝しきれないほどです。

 書籍化にあたり、番組で出会った12人の女性たちを再び取材し、長いインタビューに応じていただきました。女性ですから、お子さんが増えていたり、仕事で新たな展開があったりと、久々の再会には、また多くの発見がありました。そんな発見も含め、「自分らしさ」を大切に、今を生きる女性たちの思い、そして肉声を書きとめました。また、その表情や活動の“現場”を感じていただけるよう、写真も出来る限り掲載しています。

 男女を問わず手に取っていただき、彼女たちの生き方から何かを感じていただけたら、また、ご自身にとっての「わたし色」とはどんな色かに思いを巡らせていただけたら、これほど嬉しいことはありません。

 

【本書に登場する12人とテーマ(登場順:画像は各章のトビラ)

◆堀木エリ子《和紙クリエーター》
 腹の底からのパッションが歴史を切り拓く

◆岸平典子《ワイン栽培醸造家》
 “土地の味”を求め続ける真摯なヴィニュロン

◆多胡歩未《木のおもちゃ作家》
 自由な発想で“世界に一つ”のものづくり

◆森川明子《町工場社長》
 「町工場を明るく元気に!」を合言葉に奮闘

◆白石紀子《JAXA元ロケット発射指揮者》
 みんなの思いを一つにして、発射へと導く

◆中川静香《女子大生海女》
 恵みの海を尊び、地域とともに生きる

◆河内素子《江戸指物師》
 木の持つ温もりを暮らしの彩として届けたい

◆揮木方埋子《鵜匠》
 「鳥が好き!」から始まった体当たりの挑戦

◆梅本由紀《女子プロ野球選手》
 一途でひたむきな思いが未来を動かす

◆光畑由佳《授乳服メーカー代表》
 産後ライフをもっと自由に!

◆小島智子《元NFLチアリーダー》
 気概と努力でつかみとったアメリカンドリーム

◆豊田雅子《尾道空き家再生プロジェクト》
 廃墟の町に輝きを。“みんなが主役”の地域再生

 

12人の女仕たちの“リアルストーリー”執筆を終えて

 実は、今回、初めて書籍を執筆し、プロの「校正者」に文章をチェックしてもらい、その丁寧な仕事ぶりに、「ここにも“女子才彩”な方がいらっしゃる!」(その校正者は女性)と、感動したのですが、その女性が原稿を読み、「12人それぞれの試行錯誤があるのですね」と、感想をおっしゃったと編集者を通して聞き、嬉しくなりました。

 私自身もそうなのですが、前に進もうとする時は、様々な壁に直面します。そして、自信を喪失したり、行く先を見失ったり。取材した12人の女性たちも例外ではなく、そうしたそれぞれの紆余曲折を、本当に丁寧に話してくれました。

 インタビューでは、気持ちを表す。言葉を時間をかけて選ぶ場面もありましたし、それでも、話していくうちに、「私か大事にしたい思いはこれなんだ」と、まるで噛みしめるように語る場面もありました。彼女たちのそんな真摯な言葉に耳を傾けていると、まるで、今という時代を、共に迷いながら、闘いながら生きているような感覚を覚え、胸が熱くなる瞬間が何度もありました、ですから、勝手ながら、取材した女性たちを、同時代を生きる“同窓生”とか、“同志”のように、今感じています。

 よりよく生きるための懸命な試行錯誤の中から、自分にとって大切な何かを選んでいくことが、「わたし色」をつくる。そんなことを感じた取材でもありました。
  

 最後に感謝をお伝えしたいのは、「女子才彩」にご登場下さった100人の女性たち。100人の方々の「わたし色」はどれも輝いており、今回、12人に絞ってご紹介するのはとても悩ましいことでした。でも、いつの日か、“同窓生”の皆さんに、再びお目にかかりたいと切望しています。

 初めての執筆も、1文字1文字を紡ぎたすところから始まる。そんな大きくて新鮮な発見を糧に、これからも、今を生きる様々な智恵を取材し続けていきたい。そうした思いを、今、心に刻んでいます。

 

<書籍紹介>

女子才彩
わたし色の生き方             
自分らしくはたらく12人のリアルストーリー

石山智恵 著
本体価格 1,500円   

様々な分野で魅力的に生きる12人の女性達の姿、考え方を活写。BS人気テレビ番組「女子才彩」(番組提供:パナソニック)の単行本化。

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