出でよ、突拍子もないベンチャー!
2013年08月02日 公開 2022年12月28日 更新
ベンチャーはものづくりニッポンのビジネスパターン
さて。
ものづくりニッポンのビジネスパターンは戦後の復興の中から「挑戦者たち」がつくり上げたものだ。NHK『プロジェクトⅩ挑戦者たち』でその一端が紹介されてきたから、いまさら説明する必要はないと思う。
そうしたなかから反省の弁らしきメッセージを抽出すると、ソニーの創業者井探大さんの次のコメントが真っ先に思い出される。
功なり名を遂げた最晩年の井深さんに次の質問をした者がいた。
「いま、何を一番やりたいですか」
「小さい会社をつくって、またいろいろとチャレンジしたいね」
それが亡くなる直前の井探さんの答えだった。
メッセージは言葉をつなげて成り立つわけであるが、単に単語の意味の和ではなく限りなく意味が無限大に近づくよう工夫がこらされている。言葉の意味は辞書を調べればわかるが、メッセージの意味は解読する人によってかなり違ったものになる。
わかりやすくするために京セラ名誉会長の稲盛和夫さんのコメント「おできと中小企業は大きくなるとつぶれる」と対置し、行間を探ると、「中小企業の最大にして最高の強みは血のめぐりのよいこと」だと気づく。
すると、どうなるのだろうか。
ソニーもかつては「七人の侍」から出発したベンチャーだった。血のめぐりがすこぶるよくて、とうとう「世界のソニー」といわれるまでにスケールアップした。ただし、それに見合うスキルアップができていたか。
ものは有限であるばかりでなく、ものに対するニーズもまた有限なわけだから、「盛者必衰の理」からは逃れられないわけで、井深さんと稲盛さんにはそれがちゃんとわかっているわけである。
ベンチャーよ、永遠なれ。
しからばベンチャーよ、ベンチャーであれ。
すなわち、井深さんのメッセージは会社が大きくなることより、「血のめぐりのよさ」を大切にすることを優先させていることにはならないだろうか。
規格のガラパゴス化、産業の空洞化、テクノロジーを売上につなげるのがヘタクソになったとか、日本のものづくりにとって不利なことばかりいわれるが、マルチチャンネルで方向を探っていくようにすれば、可能性はいくらでも生まれてこよう。
<書籍紹介>
若者は突き出ろ、シニアは知恵を出し切れ
蓑宮武夫 著
本体価格 1,500円
第二のソニー、ホンダは現れるのか? 独創的な知恵や技術で台頭する平成のベンチャー企業を紹介! 日本経済復活への道筋を示す。
<著者紹介>
蓑宮武夫
(みのみや・たけお)
1944年生まれ。神奈川県小田原市出身。早稲田大学卒業。ソニー〔株〕入社後、初期のトランジスタの開発、製造を担当し、その後、ビデオ機器・パソコン機器の設計から半導体の開発まで幅広く手がける。その中には、パスポートサイズの『ハンディカム』、最後発で参入したパソコン『VAIO』などがある。
生産技術研究所所長、レコーディングメディア&エナジーカンパニープレジデントを歴任。1999年より執行役員常務としてコンポーネントや半導体事業を統括した後、2001年より執行役員上席常務として品質管理を統括するCo-CQO(チーフ・クオリティー・オフィサー)、設計・生産・カスタマーサービス・資材調達を一貫して提供するソニーイーエムシーエス〔株〕副社長を兼任し、ソニーのものづくりの根幹業務に貢献。
2005年、ソニー退社。2006年2月に〔有〕みのさんファームを設立し、代表取締役に就任。2008年、〔株〕TSUNAMI ネットワークパートナーズ(現TNPパートナーズ)取締役会長に就任。2012年、ほうとくエネルギー〔株〕代表取締役社長に就任。ソニー時代の経験とネットワークを活かし、数多くの企業の成長をサポートしている。
〔株〕タムラ製作所取締役(社外)。ソニー龍馬会前会長。小田原藩龍馬会顧問。
著書に『されど、愛しきソニー』『ビジネスマン龍馬』(以上、PHP研究所)がある。