1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 「論理思考」はパズルで身につく! ~ 演繹・帰納・アブダクションを学ぶ ~ 

仕事

「論理思考」はパズルで身につく! ~ 演繹・帰納・アブダクションを学ぶ ~ 

東田大志(パズル研究家/京大大学院在籍)

2013年10月03日 公開 2023年01月05日 更新

 

なぜパズルで論理思考を身につけられるのか

 論理思考を磨くために必要なのは、論理的に考えなければならない状況に身を置き、能動的に考えることです。こうしたトレーニングを繰り返し行うことで、論理思考を確実に身につけることができます。運動神経は、身体を動かさなければ衰えていきますが、トレーニングをすれば鍛えることができます。論理思考も同じことです。頭は使わなければ衰えていきますが、論理的な考え方が必要な問題に繰り返しチャレンジすることで、様々な思考パターンを体得することができるのです。

 論理思考には、大きく分けて3つの種類があります。論理思考の基本となる演繹法、反復的事実から法則を見つけ出す帰納法、仮説的にルールを発見するアブダクション(仮説的推論)です。この3つは、まったく別々のものではありません。たいていの論理思考は、この3つが複雑に絡み合って行われます。ですから、論理思考を総合的に鍛えるには、これら3種類の論理思考すべてをトレーニングする必要があるでしょう。

 パズルが論理思考を鍛えるのに最適だと考えられる第一の理由は、3種類の論理思考をすべて網羅することができるという点にあります。演繹法に特化したパズル、帰納法に特化したパズル、アブダクションに特化したパズルがそれぞれ存在しているため、これら3種類の論理思考を万遍なく押さえられるというわけです。

 パズルが論理思考を鍛えるのに最適だと考えられる第二の理由は、パズルが長い歴史の中で、教育と深く結びついてきたという点です。古代社会では、宗教家を養成するためにパズル集が出されたこともあるほどで、高い地位の人にはパズルを解くスキルが求められていました。要するに、判断力を必要とされるリーダーには、論理的なパズルを解く能力が必要であったということでしょう。

 この影響が現代まで及んでいることは、入学試験や入社試験、公務員試験などにしばしばパズルが出題されていることからうかがい知ることができます。なかでも、法科大学院の適性検査でパズルが出題されていることは注目に値します。将来裁判官になる可能性のある人を選別するための法科大学院適性検査は、直感に惑わされずルールから論理的に物事を判断できる人間を採用するためのものです。そこにパズルが使われているということは、論理思考のエッセンスがパズルには詰まっていることを証明してくれています。

 パズルが論理思考を鍛えるのに最適だと考えられる理由は、もう1つあります。それはずばり、楽しいということです。何事も、楽しくなければ長続きしません。どんなに効果があるものでも、三日坊主で中途半端に終わってしまっては意味がありません。パズルのような遊びであれば、だれもが楽しく最後までやり遂げられることでしょう。

 パズルには、非常に素晴らしい論理思考トレーニング効果があり、それはビジネスにも大いに役立つものです2013年5月に、京都大学の経営管理大学院准教授である前川佳一先生が『パズル理論』(白桃書房)という本を著しています。この本の中では、企業活動が、根気よく続ければ必ず解ける「ジグソーパズル型」と、何らかのブレークスルーが必要な「知恵の輪型」に分類されることが示されています。もっとも、私はジグソーパズルと知恵の輪に限られた話ではないと思っています。おそらく前川先生は、ジグソーパズルと知恵の輪が一般によく知られているため、たまたま例に出したのでしょうが、実際はあらゆるパズルが、仕事のヒントとなるきっかけを潜在的に持っています。簡単なパズルから始めて難しいパズルが解けるところまで上達していくことによって、だれでも、あらゆる企業活動に通ずるような論理思考を自然と身につけられるのです。

 パズルによって楽しく論理思考を身につければ、碓実によりよい判断ができるようになるでしょう。ビジネスでも、成功のチャンスが格段に広がるはずです。


<書籍紹介>

すべての論理思考はパズルが教えてくれる

東田大志 著
本体価格 1,300円

一定のルールのもとで結果を導き出す「演繹法」、状況からルールを導き出す「帰納法」、仮定した結果をもとにルールを導き出す「アブダクション」などの論理思考が自然と身につく創作パズルが全60題。楽しくパズルを解きながらロジカルシンキングの基本を身につけられる画期的な1冊。

<著者紹介>

東田大志(ひがしだ・ひろし)

1984年兵庫県生まれ。京都大学総合人間学部卒業。現在、同大学院人間・環境学研究科博士課程でパズル学を専攻。中学・高校生の頃はパズル作りに夢中で、学校の成績はよくなかったが、高3の夏休みに受験勉強を始めると、数学の偏差値が30上がって京都大学法学部に現役合格を果たす。「短期間での成績上昇の理由はパズル以外に考えられない」。大学在学中に京都大学パズル同好会を設立、自作パズルのビラを全国47都道府県で配り続け、「ビラがパズルの人」と数々のメディアで話題になった。
著作に『パズル公爵の挑戦状』(PHP研究所)、『京大生・東田くんのパズル』(角川文庫)、『京大パズル同好会の漢字力向上パズル』(だいわ文庫)、『パズル学入門』(岩波ジュニア新書)、『京大東田式日本語力向上パズル』『京大東田式英語力向上パズル』(以上、小学館101新書)、『東大京大式頭がよくなるパズル』『東大・京大式 頭がスッキリするパズル』(以上、文春新書)、『京大東田式パズルでラク覚え!学習漢字1006字』(小学館)、『京大東田式考える力が身につくパズル』(青春新書)などがある。

 

関連記事

アクセスランキングRanking