混ぜて焼くだけ! 生カップお好み焼き「おはなはん」 ヒットの舞台裏
2018年09月20日 公開 2018年10月17日 更新
<<スーパーマーケットで目にする「おはなはん」ブランドの生カップお好み焼き。カップを開くと、小分けされた具材が顔を出します。
メリケン粉、キャベツ、豚肉、ソース等々。具材と卵をカップの中で混ぜ合わせたら、あとは焼くだけ。具材のバランスが絶妙で、プロ顔負けの味が手軽に家庭で楽しめます。
この「生カップお好み焼き」というカテゴリー、松本社長が丹精込めて商品化し、地道な努力の末に流通に乗せました。混ぜて焼くだけの手軽さと、プロ顔負けのバランスのとれた味が、日本人の心をがっちりとつかみました。
2017年の生産量は実に550万食、生カップお好み焼きという独自の市場を確立した「おはなはん」。同社はなぜ消費者の支持を得ることができたのか? 松本社長に話を伺います。>>
製粉屋さんに飛んで行って現地で開発!
――松本社長は25歳で若くして「お好み焼き店」を始められ、お店は繁盛していたそうですね。そこでなぜ、「生カップお好み焼き」の製造・販売に進まれたのですか?
松本 私は1967年、和歌山県の白浜町で「おはなはん」を開店しました。
おかげさまで「おいしい、おいしい」と言ってくださるお客さんのおかげで商売は軌道に乗り、「持ち帰り希望」も増える中、「一度冷めたお好み焼きを温め直しても、焼き立ての味を再現できない」と考え始めた事がきっかけとなり「一人でも多くの方においしさを味わっていただきたい」という思いがどんどん強くなり、カップに具材を詰め、ご家庭で焼いていただく構想が膨らみ、開店から15年経った1982年、「生カップお好み焼き」を販売したのです。
――生カップお好み焼き事業の立ち上がりで、特に苦労されたのは販路の開拓と聞きました。
松本 最初お客さんは、カップの中にお好み焼きが入っているなんて知りません。その上消費期限が4日間と短いのでなかなか売れない。それで、私が店頭に立って実演でお好み焼きを焼いて、売るしかありませんでした。
そんな、軌道に乗れない日々が2年ほどつづきましたが、ある日、和歌山の卸売市場の関係者の方が、市場での取り扱いを提案してくれました。運よく、この市場での販売が大当たり。特売商品として扱われた「生カップお好み焼き」が、一気にブレイクしたのです。
そしてそれを見た地元スーパーのオークワさんでも特売されるようになり、イズミヤさんやイオンさんなど関西一円にもワッと広がりました。
――そこからは順調に業績を伸ばしていったのですか?
松本 とんでもありません。ヒット商品になったことで、競合企業の参入が相次ぎました。競争は激しさを増したのですが、私は安売り競争とは一線を画し、とにかく「お客さんに満足していただく品質」のことだけを考え、材料やレシピにこだわってモノづくりをしてきました。
それで何とか乗り切ってきたのですが、あるときわが社の工場に勤めていた人が会社を辞めて、ほぼ同じ材料・同じレシピを使って、他社で同様の商品をつくったようです。
これはあとで取引先のバイヤーさんに聞いた、とても残念な話なのですが……。でも、まったく同じ味にはならなかったようで、大きな痛手をこうむることもありませんでした。
材料についていえば、たとえば同じメリケン粉でも、毎年毎年、味が微妙に変わるんです。海外の気候状態によって、小麦の品質の内容が少しずつ違ってくるんですよ。
われわれとお付き合いのある製粉屋さんは、私が変化をものすごく気にすることをよく知っていますので、状況をすぐ、的確に教えてくれます。
そこで製粉メーカーはグルテンを調整してサンプルを作ってくれます。でも、製粉メーカーが調合したものと私が求めるものは、微妙に違うんですよ。
そこで私は製粉屋さんに飛んで行って、現地で開発するんです。最終的にお好み焼きとして焼いたときに同じ味になるような工夫をします。先日はそれを半日で仕上げました。
わが社のレギュラー品向けは従来、海外産の製粉だけを使っていましたが、そこにはじめて国産粉をブレンドしてみました。
わが社には国産粉を使用したお好み焼きもあります。そこで、試しに国産粉を少し混ぜたらバランスがよくなるかなと考えてのブレンドです。
そもそも国産粉だけでつくると「ふんわり感」が出にくくなります。お好み焼きが硬めになる傾向がある。一方、海外産のメリケン粉は「ふんわり感」が出て、軟らかさが増す。
その絶妙なバランスを追い求め、何度か比率を変えて試食を繰り返しました。結果、満足できる味に仕上がり、「おはなはん」専用粉と命名しました 。