混ぜて焼くだけ! 生カップお好み焼き「おはなはん」 ヒットの舞台裏
2018年09月20日 公開 2018年10月17日 更新
品質を下げずにコストを削る苦労
――「お好み焼き」のような定番的な食品において、新商品開発はどうされているのですか?
松本 おはなはんの商品はすべて防腐剤も保存料も使用しておらず、レギュラー商品も品質重視のこだわりは揺るがずです。じつはレギュラー商品含め十数種類の商品ラインナップがあります。時代やお客さんの好みに合わせた商品づくりにはチャレンジしていますね。
レギュラー商品はサバ節で粉を練り上げます。カツオ節で出し取りした「関西お好み焼き 山芋入れミックス」(税込540円)は高級スーパー明治屋さんで販売。また昆布とかつお節で出し取りし、粉に南高梅を練り込み、ソースは龍神村のゆずをブレンド、梅をエサに飼育した梅卵を使用した「紀州育ち」お好み焼き(税込594円)は通信販売で。
また食物繊維が豊富な「野菜スープで練り上げた お好み焼ミックスDX」(税込648円)は東京・練馬区の“こだわりのスーパー”エスカマーレさんで販売しています。鶏ガラ、キャベツ、ネギ、ニンジン、しょうが、にんにくを使用した特製濃厚野菜スープが味の決め手です。
スープにコクと旨味が出るまで6時間ぐらい炊き込んでスープをつくる。そのスープそのものがあっさりしていておいしいんです。このスープでつくるお好み焼きは味わい深いですね。
これらの商品は防腐剤、保存料はもちろん化学調味料等使用していないこだわりの逸品です。これらは、高付加価値な商品にこだわるスーパーで扱ってもらっています。
一般のスーパーで売っていただいているレギュラー品との棲み分けを図っているのです。一般スーパーで、子育てをする世代の人に高いものを買ってくれといっても、限界があります。だからといって、レギュラー品の販売だけに安住していたのでは、味のブレイクスルーが生まれません。
私は、子ども時分に母親に「良いものには良いものとしての価値がある」と教えてもらいました。その考えを大切に「高付加価値路線」の新商品へのチャレンジは、今後もつづけていきます。
――レギュラー品と高付加価値品、「値決め」の仕方の差は重要ですね。ただレギュラー品の場合、「特売用」になっているのを店頭で見ます。スーパーさんとの価格交渉は大変ではありませんか?
松本 じつは「特売用」となっていても、わが社からスーパーさんへの卸価格は崩していません。スーパーさんの努力で、販売価格を安くされているのでしょう。
一方で、スーパーさんや問屋さんも、ある程度の利益を確保されているはずで、わが社の卸価格が低いのかもしれません。今後はそこを変えることを交渉すべきなのかもしれませんが、まずは自分たちでどれだけ利益を捻出できるかが重要だと思っています。相手からむさぼり取るのではなく、自らの創意工夫でどれだけ利益を生み出せるかに、挑戦せねばなりません。
ただ現状では、薄い利幅で数を売って固定費を吸収するかたちになっています。だから、レギュラー品はとにかく数で勝負する商品になります。ロングセラー商品となるには、品質を落とさず品格を保つ。ここがキーポイント。命がけのブランド戦略です一方で高付加価値な商品は数が出にくいですから、価格で勝負です。
――おはなはんではコストと利益、売上との関係をどう考えているのですか?
松本 「良いものをつくって、みんなに喜んでもらいたい」だけでは、利益が取りにくくなることは確かです。そして原価が高くなりすぎる。実際、原材料費率は61%、売上総原価率75%で、この比率は、主だった上場食品メーカーと比較しても高いほうの値です。