混ぜて焼くだけ! 生カップお好み焼き「おはなはん」 ヒットの舞台裏
2018年09月20日 公開 2018年10月17日 更新
人々に役立つ「粉」を世界に!
――製造現場の改革に、松本社長みずから熱心に取り組んでおられるようですね。その際、社員の皆さんに考え方、フィロソフィを伝えていくには、どんな工夫をなさっていますか。
松本 私としては「社員みんなを成長させたい、みんなが幸せになるからやっている」という思いで、製造現場の社員の意識変革に取り組んでいるつもりです。また「会社が大きく、立派にならないと、みんなの生活を守れない」という信念を私はもっています。「人間として正しいことをしている」と認識して、経営を行っています。
社員の皆には、私の思いや考えがなかなか伝わらないことも多々あります。でもあきらめず、自分の本心を言い続けるしかないと、頑張ります。
ただ、相手に本質をうまく伝えられるメッセージを見つけるのが、けっこう大変です。ぴったりとくる「言霊」が見つかるまでは、ものすごく悩みます。でも、相手のことをずっと思い、私利私欲が絡んでいないか、「この人をどうしたいか」を真剣に考え続けたら不思議と見つかるものです。
このような、相手のことを思い続ける大切さは、母親から学びました。私が子供のころ、大阪の心斎橋を母親と歩きながら買い物をしていました。
母親は地元・和歌山の仲間におみやげを買うとき、一人ひとりの顔を思い浮かべ、「キミノさんはこれ」「ヨシコさんにはあれ」と言いながら長時間をかけて品物を探しているのです。さすがに私が弱音を吐いて「しんどい。もう、よう歩かん」と言ったら、おんぶしてくれましたけどね。そんな母親のやり方を自然と受け継いでいるのです。
――人のことを思う、優しいお母さんですね。松本社長も社員のみなさんのことを思い、優しい言葉で諭してあげるのですか?
松本 いいえ、必ずしも優しい言葉だけではありません。あえて厳しいことを言うこともありますよ。稲盛和夫名誉会長がよく使われる言葉に「小善は大悪に似たり」というものがあります。
中途半端な優しい言い回しで相手が真剣に物事を捉えなくなってしまえば、結果として相手をダメにしてしまうかもしれないのです。そのようなことも意識して「言霊」を探り当てていますね。
さらにわが社では、個別的にではなく社員全体に幅広く考え方を伝えるために、78項目にわたり私の考え方を整理した「フィロソフィ手帳」を活用しています。これは京セラさんの「京セラフィロソフィ手帳」をわが社なりにアレンジしたものです。
そして「フィロソフィ勉強会」も行っています。私がフィロソフィ項目ごとに紐解き講話をした様子をビデオでKCCSさんに撮っていただいて、それを編集して勉強会で活用しています。
本社では朝礼で私が直接フィロソフィ項目に沿った話を行っていますが、拠点が離れた大阪や東京では毎日はできませんので、おはなはんの考え方や大切にしている価値感をビデオ教材を通じて繰りかえし学んでいただいています。
以上のようなやり方で、社員の皆さんに考え方を訴えています。すぐに理解できる人はほとんどいません。それは当然のことです。時間をかけて少しずつ身に着けてもらうしかないのです。
――社員の方々が着々と成長し、皆さんと一緒にさらに大きな会社を実現できればいいですね。
松本 未来の「おはなはん」に向けて、私は、遠く海外を見ていますよ。日本の人口も少なくなっていくなかで、「おはなはんブランド」を海外にも行き届くようにしたいのです。
そのためには、輸送や品質管理面での問題をクリアせねばならない。「生カップお好み焼き」は消費期限が短く全国制覇には時間がかかります。そこで次世代に向けて小麦粉を使用せず、玄米ト米粉を使用して7大アレルギー不使用の「グルテンフリーお好み焼き粉を開発し{熊本製粉で製造}北米最大のグルテンフリー認証組織(GFCD)グルテンフリー認証を取得しました。
これはただの「粉」ではないんです。小麦粉の食物アレルギーに悩んでいる人々の手助けになるものです。また「グルテンフリー」は世界的にも女性を中心に健康問題が解決する食材、ダイエットに効く食材として注目されているようです。そこで、まずは日本全国のスーパーさんなどで「お好み焼き屋さんのお好み焼き粉」と銘打って、10月ごろに発売します。
ただ、「生カップお好み焼き」と「お好み焼き屋さんのお好み焼き粉」では販売場所が違います。そこが心配ではありますが、「おはなはん」というブランドは、お客さんにある程度定着していると思うので、「あ、ここにもあるわ。いっぺん買ってみようかな」となってほしいですね。
そして近いうちに必ず、この「グルテンフリーの粉」を海外に広げていきたいのです。人に喜んでもらえるようなことをし続けていると、幸せが来るはずですから。
人生、いいことばかりが起こるとは限りません。つらいこともたくさん起こってきます。だけどそんなときでも、人に喜んでもらうことを考えて動けば道がひらくと、私は考えています。「グルテンフリーの粉」の海外への販路もきっとひらいてくると、確信しています。