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生き方

澤穂希 × 松下正幸 「なでしこ」を世界トップに導いた澤流キャプテンシー

「志」対談

2018年12月31日 公開 2018年12月31日 更新

「私の背中を見て」とプレーでチームを統率

松下 澤さんは日本代表でキャプテンも務められていました。どんなことを心掛けていましたか。

 私はキャプテンといっても、試合のキックオフ前にするコイントスと、試合で円陣を組む指示をすることぐらいしかしていないので(笑)。

松下 いえいえ、それだけでないでしょう。自分のことを、キャプテンとしてはどのようなタイプだったと思っていますか。

 私は自分のキャプテンシー(チームを統率する力)は「プレーで見せる」「グラウンドで結果を出す」ことだと考えていました。「私の背中を見て」というタイプだったかもしれません。何もしない口だけの人についていこうとは誰も思わないでしょうし、行動で示すのが何より大事だと思っていました。

それと、若い選手だと監督に言いたいことを言えないこともしばしばあります。そういう場合は、若手と監督の間に入って、若手の意見を監督に伝えることも大切だと考えて実行していました。

松下 そういうキャプテンだと、若手はやりやすいでしょうね。若手選手へのフォローはどのようなことをされていましたか。

 例えばワールドカップでは、23人の代表選手が選ばれても、試合に出られない人もいます。そうすると、不満がくすぶることもあります。でも、そのままではチームの雰囲気が悪くなるので、私の次にキャプテンとなった宮間あや選手などに相談しつつ、若手や中堅の話をいろいろ聞くように努めていました。

松下 若手であっても、意見を言うことは大切ですからね。

 はい。陰で愚痴や不平を言っても、何も解決しないし、状況も好転しません。ですから、不満や不安がありそうな選手には積極的に声をかけたり、選手だけのミーティングを開いたりしていました。

松下 やはりコイントスだけでなく、いろいろされていますね(笑)。もし、澤さんが監督をするなら、どんなキャプテンがいてほしいですか。

 もし私が監督なら、サッカーがうまいだけの選手ではなくて、グラウンド外のこともしっかり目配りできて、チームのために中立的に物事を判断できる選手をキャプテンに選びたいですね。

松下 ところで、澤さんには「澤語録」ともいえる名言がたくさんあります。その中の一つに「プレッシャーは克服しない」というものがあります。これはどのような意味ですか。

 サッカーに限らず、誰でも失敗ができない時がありますし、自分には荷が重いと思えることもあります。でも、そう感じるのは、雑念があるからだと思っています。やるべきことに意識を集中させると、そのプレッシャーはいつの間にか遠のいていくという考えから口にした言葉です。

それと私は、苦手なことをなんとしてでも克服しようとは思っていません。もちろん、苦手なことに対しても努力はします。でも、無理に克服しようとしないで、「できないことはできない」と気持ちを切り替えるのです。できないことに引っかかり続けるよりも、得意なことを伸ばしていくほうがいいという発想です。

松下 短所はあまり気にしないで、長所を伸ばしていこうということですね。

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