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「ストレッチは痛いほど効く」の思い込みが招く逆効果

黒田美帆(「魔法のストレッチ講座」代表)&大村佳子 (インストラクター)

2020年07月28日 公開 2024年12月16日 更新


(写真:Charles Gullung/The Image Bank/ゲッティイメージズ)

《『魔法のストレッチ講座』を主宰する黒田美帆先生は、いわば硬い体を柔らかくするプロフェッショナル。講座を通じてこれまでに5000人以上の受講者の柔軟性を改善させてきた。

黒田先生によれば、体を柔らかくする秘訣は「正のスパイラルに入ること」だという。筋肉の性質から逆算された効率よく体を柔らかくするメカニズムについて、黒田先生に詳しく話を聞いた》

※本稿は黒田美帆・大村佳子著『魔法のストレッチ』(マキノ出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

体の硬さの真犯人は「関節の周りの筋肉」

体が硬い。その理由を「自分は関節が硬いのだ」と思っている人がけっこういます。実はそれ、少し違うのです。

理科室にあったガイコツの標本を思い浮かべてください。関節のところで骨と骨はくっついておらず隙間がありましたよね。

つまり関節は本来自由に動けるものなのです。ということは関節の動きを制限している真犯人がいることになります。その真犯人とは、関節の周りについた硬い筋肉です。

赤ちゃんの体はフヨフヨしてとても柔らかいですよね。股関節をパカッと開くこともできるし、足の指を舐められる子もいます。筋肉が柔らかい赤ちゃんは関節の可動域を最大限発揮できるので、こうした動きもラクラクできます。

これが大人になるにつれて筋肉が硬くなると関節の動きが次第に制限されていき、肩が上がらなくなったり足が開かなくなったり……。つまり体が硬いという事態に陥ります。

同じ姿勢でのデスクワークや崩れた姿勢の習慣化、そこに運動不足が加われば着実に体は硬くなっていきます。でも安心してください。どんな人でも筋肉を柔らかくしていけば本来の自由な可動域を取り戻すことは可能です。

「運動前にストレッチを」と言われるように、筋肉を伸ばして柔らかくすることは怪我の予防にもつながります。ところでどうして筋肉を柔らかくすると怪我をしづらくなるのでしょうか。

 

硬い筋肉は傷つきやすく、柔らかい筋肉は損傷しにくい

筋肉は、かたちある"モノ"でもあります。ガラスや陶器のような硬いモノは少しの衝撃で簡単に割れたりしますが、ゴムやボールのような柔らかいモノは割れたり切れたりしにくく衝撃を吸収して弾みます。

これは筋肉も同じで、硬い筋肉は割れたり切れたりしやすく、柔らかい筋肉はそうなりにくいのです。

硬い筋肉がいかに怪我をしやすいか身をもって感じたことがあります。もともと私は「エビ反り」をしたときに足を頭につけられるくらい腰の筋肉が柔らかいため、腰痛になったことはおろか腰が張るという感覚もわかりませんでした。そんな私が一度だけ腰をひどく痛めたことがあります。

真冬のある朝、私は腰を出して寝ていました。目を覚まし体を動かそうとした瞬間でした。「ビキッ!」と腰に激痛が走ったのです。

あまりの痛みに動かすこともできず、崩れた体勢で鍼灸院に駆け込みました。筋肉には冷えると硬くなる性質があります。寒さで硬くなった腰の筋肉に急に力を加えたことで痛めてしまったのでしょう。

これが運動を始める直前の筋肉の状態だったとしたら……とても危険なことがわかってもらえると思います。実際に冬は夏より怪我が多く、私の知人にも真冬に駅のホームを数メートル走っただけで肉離れを起こした男性がいます。

硬い筋肉は損傷しやすく、柔らかい筋肉は損傷しにくい。ストレッチが怪我の予防に役立つのは、筋肉を柔軟にすることで傷つきにくい状態にできるからなのです。

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体を柔らかくする「正のスパイラル」

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