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転職一年目は「結果より居場所づくり」が大事な理由

グロねえ(大手日系グローバル企業・現役人事部長)

2021年09月07日 公開 2022年02月15日 更新

転職すると徐々に感じられる周囲からの視線――良くも悪くも「どれくらいのことができる人なのか?」と「お手並み拝見」をされるもの。「お手並み拝見」は転職したら誰もが必ず通る道――現役人事部長であるグロねえ氏は、転職一年目は新人のように素直な心を思い出すべきと語る。その背景には自身の苦い体験があったという。

本稿では転職後に起こりがちな失敗と、そこから同氏が学んだ教訓を紹介する。

※本稿は、グロねえ著『「転職後」の教科書』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

転職後の「お手並み拝見」を覚悟する

私の一回目と二回目の転職は、知り合いを通じてのものでした。いわゆる「リファーラル採用」(その会社にいる人や知人などからの紹介)です。知人がいるということで、自分自身も大きな緊張をすることなく入社できたのは幸いでしたが、「お手並み拝見の洗礼」をしっかり受けました。

一回目の転職後、つまり二社目では、好意的に受け入れてくれる人がほとんどだったのですが、生え抜きで中途採用者にあまり良い感情を抱いていない50代後半の「おじさま」は、初日からあからさまに「お手並み拝見」オーラで威圧的に接してきたのです。

その人は人事部で、中途採用者のオリエンテーションをする人でした。私も人事部配属だったので、「同僚」に当たります。

私としては、どちらかというとこのおじさまに親近感を抱きながら「安心して」オリエンテーションに臨んでいたのですが……突然、参加者全員に対して「まあ、転職する人って、愛社精神が薄いわけで、うちの会社でもいつまでいるかわからないし、今までの実績があっても、それが活かせるとは限りませんからね」と言い放ったのです。

最後には「3年いれば、『うちの会社』って言うようになるでしょう、自然と。それまでは前の会社のことを引きずって、前の社名を言っちゃう人もいますしね。皆さんが『うちの会社』と自然に言えるくらいになるまで、我が社にいて活躍されることを祈ります」と一応「祝辞」的な言葉もくれましたが……。

これを聴いた参加者の中には絶句している人もいましたが、転職を数回している人はまったく動じず、笑うくらいの余裕っぷり。私は初めての転職でしたし、これから自分が配属される部署の人からのレクチャーでしたので、カウンターパンチを食らった感じでした。

オリエンテーションが終わり、自分の席に向かうときも同じ部署ということでその人が連れていってくれたのですが、移動中に「まあ、業界も違うところからきているし、今までとはまったく違うだろうけど、やれるとこまで頑張ってくださいね」と言われ、「お手並み拝見」をひしひしと感じました。

その後、しばらくは「みんなからお手並み拝見と見られている」と萎縮する気持ちと、「絶対に成果を出さなくては」というプレッシャーと、「絶対にやってやる!」という自分を鼓舞させる気持ちの間で行ったり来たりしていました。

「どれくらいできるのかね?」と口を出さずに見られているのも相当のプレッシャーではありますが、「うちはこういうやり方なんで」と先手を打たれて、自分の前に大きな壁が立ちはだかったように感じたこともありました。

その後も、「これはこの業界では常識なんだけどねえ……」みたいなことを言われたり、「へえ、それで前の会社はよかったんだ。うちではそのやり方じゃ企画は通らないね」などという言葉を何度となく言われました。

 

転職後は「人間関係を悪化させない」

今思えば、本当に自分の実力不足であったり、良い結果を早く出さねばといきがっているのが見え隠れしていたようにも思います。そして何より、「お手並み拝見」というのは「転職後に起こり得る常識」なのですが、このときの私は初めての転職でしたので、耐性がなかったのだなあと思います。

仕事というものは成果を出すことで認められます。転職だけでなく、新しい業務やプロジェクトが始動したときには、上司や同僚から「お手並み拝見」という目で見られているかもしれませんし、自分も同様の見方を他人にしている部分もあるでしょう。

それが転職ともなれば、あからさまに感じられるというだけのことです。それを「期待」として受け止めるか?「プレッシャー」として受け止めるか。どんな視線であれ、その視線をプラスに活かすことを心がけて、気にしないのが一番です。

そして粛々と、自分がすべきことに集中する。気がついたときには「お手並み拝見」の視線は感じられなくなっているものです。逆に、「何も言えないくらいの結果を出して、黙らせてやる!」という気持ちでやりすぎて、それが相手に伝わってしまっては元も子もありません。

仮に結果が出せたとしても、敵対心が伝わってしまうと、その後の周囲との人間関係に悪影響となることもありますので、その辺りは「大人な対応」を心がけましょう。

「お、これは自分に対する期待なんだなあ。徐々に本領を発揮していきますかね」と虎視眈々と相手の期待値を大幅に上回る成果を上げる日を想定しながら、その日のために積み上げていく。それが注力すべきことでしょう。

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