あいまいな態度や抽象的な発言ばかりで話が進まない。漠然としたまま動き出した結果、後でトラブルに見舞われる。
意見や態度をなかなか明確にしない人に振り回されず、物事を着実に前に進めるためのポイントとは? 400以上の企業・自治体・官公庁の組織変革をサポートしてきた沢渡あまね氏の著作『話が進む仕切り方』から、会議やプロジェクト進行の場面で使えるエッセンスをご紹介する。
※本稿は、沢渡あまね著『話が進む仕切り方~会議/プロジェクト/イベントを成功させるファシリテーションの道具箱~』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。
「文学的な表現」は言い換える
日本語では、ビジネスの場面においても、なにかと文学的といいましょうか、もって回った曖昧な表現が用いられがちです。
「見合わせる」
「見送る」
「控える」
「打ち合わせをする」
「線引きをする」
「いまいち」
「当面の間」
「よしなに」
「いい塩梅で」
など。このような文学的な表現は、受け取る人によって異なる解釈をし、後で思わぬトラブルを発生させることになりがちです。文学的な表現は見逃さず、さりげなく、明確な表現に言い換えて、本人に意図を確認しましょう。
曖昧な表現を回避する取り組みは、公共交通機関でもおこなわれ始めました。JR東日本の常磐線快速電車では、「やさしい日本語」の車内放送を開始。
「強風のため、運転を見合わせています」
↓
「風が強いので、電車が止まっています」
「まもなく運転を再開します」
↓
「まもなく電車が動きます」
と言い換えるなど、日本語に不慣れな外国人利用者や子どもなどが理解しやすい表現を用いているそうです。
言葉や概念のズレをなくす工夫
バックグラウンドやカルチャーが異なる人同士で、会議やプロジェクトや共同作業をおこなう場合、言葉や概念に対するイメージが悪気なくズレることがあります。そのままにしておくと、すれ違いや回り道を何回も生んでしまうことに。コミュニケーションやプロジェクトの進行を妨げます。
共通のイメージを持っておきたい概念や、人によって異なるイメージを持ちやすい言葉は、そのままにしないでおきましょう。ポイントは2つ。
(1) 共通の呼称を決める
あくまで、その場における言い回しでかまいません。一般的な用語と異なっていても結構。期間の長いプロジェクトや、関わる人数が多い大きな会議やプロジェクトでは、専任者を決めて用語集を作ることもあります。
(2) 番号で呼ぶ
繰り返し触れておきたい事象や出来事について、番号を振り、以降はその番号で会話するのも、メンバー同士のコミュニケーション効率を上げるポイントです。
実際に、IT システムのサポートデスクや運用保守などの世界では、スタッフ同士の説明する手間を省いたり、伝達ミスを減らすために、事象や対応方法を番号で呼びあっている現場もあります。