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世界がAIに熱狂する裏で、ドイツが一人勝ちを狙う「環境ビジネス」の中身

内山力(MCシステム研究所代表取締役)

2023年07月26日 公開 2024年12月16日 更新

 

アメリカも一度はGXを意識するも...

一方、これに遅れること1年、アメリカでもこのプラットフォーム作りへのチャレンジが始まる。アメリカらしく官主導ではなく民主導である。2012年にGEが提唱した「インダストリアル・インターネット」がそれである。

これは、ドイツのようにクローズドではなくオープンである。先行されたクローズドに一人勝ちさせないためには、オープン(皆で戦う)しかない。つまりドイツのナショナル・プラットフォームに皆がつなぐのではなく、誰のものでもない社会が共有するプラットフォームでつなぐというものである。オープン・プラットフォームは競争の武器ではなく、協創の場である。

GEの掛け声に、アメリカのGAFA以外のIT系の前世界チャンピオンが集まる。インテル、シスコシステムズ、IBM、AT&Tなどである。彼らは「自分たちの事業がGAFAというクローズド・ネットワークに吸い取られるのでは」という共通の恐怖を抱えていた。

これらの企業が集まってコンソーシアム(共同事業体)を組んだ。これは仕事を一緒にやるバリューチェーンではなく、新しい仕事を考えるための共同研究チームである。GXでもまず最初に求められるチームである。

このDXオープンチームは「つなぐ」=プラットフォームよりも(ここでは勝たないと決めたので)、そのつないだ後の「データ」に着目する。つまりデータで勝ち抜くということである。

彼らの顧客であった世界中の製造業から生じるデータが、環境、エネルギーという「次世代の事業」に有効であることを直感したのだ。

つまりGAFAの持つビッグデータ(主に個人が持つ大量のデータ)によって影が薄くなってしまったIT系のアメリカメーカーたちが、協力して新しいデータ(企業データ、事業データ)を作り、新しい事業を作っていこうというものである。

これがGEが考えたインダストリアル・インターネットというビジネスモデルである。彼らはこれを進めていく中で、これまで儲からないと思ってあまり手を出してこなかった

「社会」という新しいマーケットに着目し、省エネ、環境といったソーシャルデータの収集にチャレンジしていこうと考える。

しかし、実際のビジネス・プランニングの段階になるとこれが前へ進まない。省エネビジネスは事業としてはtoo smallであり、環境ビジネスに関しては、アメリカという国家だけではなく、投資家の反応が芳しくない。

そこでこのコンソーシアムは、データそのものではなく、データを利用する技術に着目する。それが今大騒ぎしているAI(Artificial Intelligence:人工知能:人間の頭脳を機械で実現する)である。

このAIには投資家たちが強く反応する。これなら「勝てそう」「世界チャンピオンになれそう」ということである。

こうしてアメリカの投資マネーはAIに流れ、そのカネによってDXの中核技術として確立し、ビジネスへの実装化(具体的な使い方)の目途が立ってきた。しかし、彼らは環境・エネルギーというテーマに興味を示さなかったことで、GXには完全に乗り遅れてしまう。

アメリカがAIに狂乱する一方、EUが環境面でのグローバルリーダーになりつつあるのには、このような背景があるのだ。

 

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