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散歩が“思考に良い”本当の理由...「知性を磨く」ちょっとした習慣

外山滋比古(お茶の水女子大学名誉教授)

2024年02月07日 公開 2024年12月16日 更新

アイデアが次々に湧く人と、そうでない人にはどのような違いがあるのでしょうか? その答えは日常生活のちょっとした習慣に隠れているかもしれません。本稿では、お茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古さんが、「知性を磨く習慣」を紹介します。

※本稿は、外山滋比古著「こうやって、考える。」(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

汗を流し、体で考える

日常生活の改造なくして知的生活はあり得ない。一日一日の生きかたにすべての根源がある。汗を流して、体で考える。観念としての知的生活には反省が必要である。

『大人の思想』より

 

レム睡眠を活かす

翌朝になってから日記をつける方がよい。一晩寝ているうちに、頭の中の整理ができる。レム睡眠という眠りがあって、頭はその間に働いて、それまで頭に入ってきた、もろもろの知識、情報、刺戟などがここで分別される。

保存すべきものと、そうでなく処分した方がよいものとに分け、大切でないものを忘れる。レム睡眠は一夜の中で何度もおこるから、整理はかなり入念に行われることになる。朝目覚めたとき頭がすっきりしている感じになっているのは自然である。

『「マイナス」のプラス』より

 

時間の特性を理解する

頭の仕事をする者にとって、朝は金の時間である。ただし食事をするとたちまち鉄の時間になる。昼食前は銀の時間。食後は鉛の時間になるが、夕方の腹のすいているときはまた銀の時間がやってくる。

夕食後は鉛の時間を通りこして、十時以後ともなれば石の時間である。夜型だなどと称してそんな時間になってから頭を使っていれば、石頭になっても不思議ではなかろう。

『ちょっとした勉強のコツ』より

 

「まどろみ」の中で考える

わたくしは、早く目をさましても床の中にいて、あれこれ空想するのを楽しみにしています。いろいろなことが頭の中を飛び交い、なかなかおもしろいものです。ときにはよいアイディアが浮んだりします。あとでメモしようなどと思ったら永久に消えます。

枕元にワラ半紙とマジックペンを置いていて、大まかなところを書き留めて心覚えとします。われながら妙案と思われるのが、二つも三つも飛び出してくることもあって、時間を忘れます。

『自分の頭で考える』より

 

朝食前の時間を使う

どうも朝の頭の方が、夜の頭よりも、優秀であるらしい。夜、さんざんてこずって、うまく行かなかった仕事があるとする。これはダメ。明日の朝にしよう、と思う。

朝になって、もう一度、挑んでみる。すると、どうだ。ゆうべはあんなに手におえなかった問題が、するすると片づいてしまうではないか。昨夜のことがまるで夢のようである。

朝の仕事が自然なのである。朝飯前の仕事こそ、本道を行くもので、夜、灯をつけてする仕事は自然にさからっているのだ。

『思考の整理学』より

 

歩く習慣を身につける

新しい思考をするためには、机に向かっていてはいけない。外へ出て、あてどもなく歩いていると、新しいアイディアが浮かぶ。いつもというわけではないが、他のことをしているときより、はるかにしばしば、アイディアが湧いてくるような気がする。

散歩に出るときは、メモの用紙とペンか鉛筆をもって出る。

『乱読のセレンディピティ』より

 

思考の霧をはらす

散歩という言葉はぶらりぶらりのそぞろ歩きを連想させるが、それではカタルシスはおこりにくい。相当足早に歩く。はじめのうち頭はさっぱりしていないが、20分、30分と歩きつづけていると、霧がはれるように、頭をとりまいていたモヤモヤが消えていく。

それにつれて、近い記憶がうすれて、古いことがよみがえってくる。さらに、それもどうでもよくなって、頭は空っぽのような状態になる。散歩の極致はこの空白の心理に達することにある。

『知的創造のヒント』より

 

あえて非効率を求める

ヨーロッパでは、古くから、散歩中にすばらしいことを考え出したという例がおびただしくある。哲学者には散歩を日課とする者が、はなはだ多い。

アルキメデスは入浴中にすばらしい発見のヒントをつかんだ、というが、湯につかっていると血のめぐりがよくなって、よい考えが浮かぶ。

こうしてみてくると、知的活動は、いくらか不都合な状態において、かえって効率がよいということがわかる。ほかのことをしながら、あるいは、ちょっとじゃまなことをともなっているときに、頭の働きはもっとも活発になるようである。

『ちょっとした勉強のコツ』より

 

つまらぬことこそメモをする

つまらぬことだからというのでそのままにしておくと、いつまでも心にわだかまりになる。自由な考えを妨げる。むしろつまらぬことこそメモして忘れるようにしてやった方がよいのだと思うようになった。

『人生を愉しむ知的時間術』より

 

タイム・ハングリーに自分を追い込む

時間はすこし足りなめなのがよろしい。時間と競争して仕事し、勉強する。緊張と集中のもとで行われるところから、立派な成果が生まれる。時間が足りないという気持ち、タイム・ハングリーである必要がある。

そのためには、あまり多くの時間をかけないことである。勉強の時間にしても、多ければ多いほどよいなどと考えるのは禁物。むしろ思い切って、時間をすくなくする。その方が充実した勉強ができる。

『ちょっとした勉強のコツ』より

 

執着をなくす

生まれつきすぐれた頭をもっていても、小さなことでいちいち心の目を覆っているような小心者では聡明さを発揮することは難しい。

気になることがあっても、それはそれとして、しばらく、ほかのことをのんびり考える。あるいは、ほかのことに夢中になって、いやなことを相殺する。こういう自由をもったときにはじめて人間は人間らしい生き方ができる。

『知的創造のヒント』より

 

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