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身動きが取れない...認知症の柴犬「しの」を助けた、仲良し猫「くぅ」の咄嗟の行動

2024年02月21日 公開


写真:晴

柴犬のしのに認知症の兆候が現れはじめたところ、しのが大好きな猫のくぅは24時間体制で付きっきりお世話。よろけるしのを倒れないよう先回りして支えたり、顔が枕から落ちているときはそっと鼻で押し上げて直してあげます。

そんなふたりの様子を飼い主の晴さんがInstagramでUPすると、瞬く間に人気になりました。本稿では、ふたりの出会いと日常を紹介します。

※本稿は、晴著「くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ」(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

くぅとしのの出会い


↑2011年保護当時から推定10歳越えのおばあちゃん犬しの(写真・左)と、推定2011年生まれのくぅ(写真・右)

道路の真ん中で彷徨っていたところを保護した老犬「しの」と、満身創痍で助けを求めてやてきた猫「くぅ」。ふたりが出会ったのは2013年夏でした。

といっても、庭の犬小屋で暮らしていたしのは室内飼いのくぅに気付かず、くぅの一方的な一目惚れから始まりました。


↑窓越しのしの。くぅの存在はまだ知らない

当時、私が暮らしていた実家では、暑い日は玄関に猫脱走防止の柵をして扉を開けっぱなしにしていました。そこを横切ったのがしの。

一瞬でしたが、たまたま廊下にいたくぅはしのに釘付け! 黒目いっぱいのキラッキラの瞳で、歩き去ったしのをもう一度見ようと、いっしょうけんめい首を伸ばして柵の間から外を見ていました。

その後は、なんども私と外を交互に見て「さっきのだれ? また会いたいのだ!」と玄関から離れようとしないので、抱っこして庭が見える窓へと移動。

そこにはのんびりくつろぐしのの姿がありました。私の腕の中からしのをジッと見つめるくぅの姿は、まさに恋するオトメ。その日から、恋するオトメ男子・くぅのアタックが始まりました。

でも、当時のくぅは過酷な野良生活のトラウマからか、外を見ることすら怖くて自分から窓に近づくことができない状態(しのを初めて見たときはガン見していましたが)。しばらくはふたりのすれ違いの日々が続いたのです。

 

オトメ男子・くぅの猛アタック


↑触れたくて触れたくて

しのに一目惚れしてから、しばらく離ればなれだったくぅとしの。普段は庭の犬小屋で過ごすしのでしたが、夏・冬の寒暖差の大きい夜は玄関で寝ていました。しのが玄関にいると、くぅはしのに近づこうとウロウロそわそわ。かと思うと、ジッとしのを見つめたり、まるで片思い中のオトメそのものです。

でも猫が苦手なしのは、そんなくぅを完全無視。それでもなんとかしのと仲良くなりたいくぅは、フセの姿勢でリラックスしているしのに静かに近づき、そーっと片手を伸ばしてタッチ。

でも、ちょっとでも触れるとサッと立ち上がって離れる、つれないしの。伸ばしたままのくぅの手がなんとも切ない......そんなシーンを何度くり返しても、2匹のキョリはなかなか縮まりませんでした。

そして私の結婚を機に、しのと猫たちを連れて引っ越すことになり、新居ではしのも一緒に室内で暮らし始めました。しのといつも一緒にいられるようになり、喜んだくぅは毎日、熱烈アタックを開始。

スキあらばタッチし、当たり前のように添い寝し、しのが行くところについて行き、そばにい続けるくぅに、しのも根負け。くぅが何をしても受け入れてくれるようになりました。

どんなにイヤがられても諦めずにアタックし続け、やっと思いが通じた? くぅ。大好きなしのに寄り添って、思う存分モフモフできる幸せな日々が訪れました。


↑くぅの粘り勝ち

 

くぅが介護をはじめたきっかけ


↑家具や壁にぶつかっても後ずさりできない 

引越しから半年が過ぎた頃から、しのはせまい場所や家具のすき間に挟まるようになり、後ずさりもできなくなりました。壁におデコをつけたままジッとしていたり、今まで平気だった段差も越えられなくなっていくしのを、くぅはいつもそばで心配そうに見つめていました。

また、歩行にも異変が。しの自身は真っすぐ歩いているつもりなのに、円を描くようにぐるぐる回るようになり、大好きな散歩も難しくなりました。

しのに認知症の症状が出はじめた頃、初めは心配そうに見ているだけだったくぅ。
ある夜、くぅが「くぅ~、くぅ~!」と鳴きながら、2階で寝ている私の元へ。切羽つまったような声で呼ぶくぅの後についていくと、1階の廊下でしのが身動きとれなくなっていました。

私より先にしのに駆け寄り、「早く助けて!」と目で訴えてくるくぅ。その夜以降、しののピンチの時には、いつも私を呼びに来てくれるようになりました。

そして、しのが初めててんかん発作で倒れた日、部屋でしのをぐるぐると歩かせていると、くぅがやって来て、しのに付き添って歩きはじめました。しのの横にぴったりくっついて、よろけてぶつかってくるしのを全身で支えながら、まるで誘導しているかのようでした。

しのと一緒に休みなくぐるぐる歩き続けて30分後。「疲れた......」とばかりに、急にバタンと倒れたくぅ。しばらく横になったままのくぅに労いの言葉をかけると、「自分にできるのはここまで」とばかりに部屋を出ていきました。

この時から、くぅはしのを介護してくれるようになりました。初めはずっと一緒にぐるぐる歩いていましたが、慣れてくるとだんだん手抜きを覚えると同時に、介護の匠へと進化していきました。


↑いつもしののそばにいてピンチを知らせてくれる、しのだけの小さなヒーロー

 

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