大阪維新の会・橋下徹大阪市長の「橋下流仕事術」
2012年09月07日 公開 2022年12月27日 更新
庁内のフルオープン化
これは、橋下府知事時代(2008年2月~2011年11月)の府庁舎から始まったことですが、予算の編成過程や戦略本部での幹部職員の会議風景などはすべて庁内テレビで中継されて、職員たちが見ることができるのです。
この影響はかなり大きく、たとえば、予算編成の過程がオープンにされた結果、無理筋の要求や身勝手な議論が影をひそめました。衆人環視のもとではまっとうな論理に裏打ちされた要求、主張しか通用しないものです。庁舎内の会議のオープン化は、現在は大阪市役所内でも行われていて、庁内の仕事、やり方の改革につながっています。
橋下市長は、職員1人ひとりに対しては、規範にこだわる、ルール違反や曖昧さは排除する、ということを求めています。規範にこだわる背景には、職員の不祥事が多すぎるという事情があります。綱紀粛正の観点から規範を守るよう、職員に求めているのです。
また、職員(公務員)が彫りもの(入れ墨)をするのは認めないと断言しています。彫りものを消すか、さもなければ職を辞するか、職員に決断を迫っています。
ツイッターで情報発信
橋下は、直接市民に語りかけるツールとしてツイッターを頻繁に利用します。
政治家はマスコミから一方的に批判されることが多いのですが、それに対して反論する機会は思いのほか与えられていません。記者の誤解や評論家からの見当違いの批判に対して正論で堂々と反撃する場として、ツイッターは格好のチャンネルです。ある新聞社が橋下が1日平均どのくらいツイートしているか調べました。すると約11本という数字がでました。1本当たりの長さも相当なもので、つぶやきではなく、140字びっちりの文章で延々とやっています。
ツイッターを始めたのは2011年2月1日からで、動機はテレビメディアへの不満といわれています。当初はあまり乗り気ではなく、抵抗感を抱いていました。投稿されたら、返事をきちんと書かなければいけないというプレッシャーがあったからです。それで2カ月限定で始めたのですが、いまでは積極的です。時には絡まれたりもしますが、言うべきことははっきりと反論します。
政治との距離を縮めるキーワード
「直轄負担金はぼったくりバー」「くそ教育委員会」――。橋下市長はしばしばインパクトのあるキーワードをメディアを通じて発信します。そのたびに賛否両論が出されますが、同時に人びとと政治の距離が縮まります。そこから政治に対する人びとの関心が呼び覚まされ、争点がはっきりしていきます。もちろん言葉の使い方に反発する人もいます。
しかし、橋下は、物事が大きく効き出す急所、勘所をよく承知しています。話題になるところから出発して真の論点が露わになり、結果的にものごとがよくなれば良いと考えています。
これに対して既存の政治家の多くは「こんなことを言い出すと突拍子もないと思われかねない」などと逡巡しているうちにチャンスを逸しがちです。せっかく素晴らしいアイディア、意見をもっていても発信しなければ実現しません。時機を逃さず核心をついた発言をする、そこから世論を喚起し、ものを動かしていく。橋下のこのあたりのセンスは余人をもって代えがたいところです。
記者とのコミュニケーション
橋下市長の登庁は午前9時半ごろです。登庁すると、すぐに記者とのぶら下がり会見です。記者たちとのやり取りは真剣勝負です。質問から逃げず、正々堂々と答えます。
記者会見で伝説になったのはダブル選挙直後のそれです。午後8時ごろに当確が出た直後から始めて夜中の12時まで、延々4時間続けて話していました。普段のぶら下がり取材でも時間を十分にとります。
なお職員や大阪維新の会のメンバー、特別顧問や特別参与とのやりとりでよく使っているのはメールです。橋下からのメールは、深夜でも送られてきます。休日にくるメールには「本日休日、返信不要」と書いてあります。休み明けまで返信する必要はないという配慮です。
しかし夜中でも、何か問題に突き当たると、すぐに心当たりの人物にメールをするのです。相手がまだ起きていると深夜に始まったラリーが延々と続くこともあります。