松浦弥太郎さんは著書『40歳のためのこれから術』にて、こう語る。
「40歳は人生の折り返し地点であり、あとは下り坂というイメージもありますが、それはどうにも淋しいことです。しかし「70歳こそピーク」だと考えを切り替えれば、40代から新しいスタートを切って、輝かしい70代へと疾走することも可能でしょう」
本稿では、同書より松浦弥太郎さんが考える「40歳になったら言ってはいけない言葉」について触れた一節を紹介する。
※本稿は松浦弥太郎著 『40歳のためのこれから術』より一部抜粋・編集したものです
「すてきな70歳」を目標にする
僕は40歳になったときに、1つの目標を立てました。
「70歳を自分の人生のピークにする」というものです。
世の中では、40歳はある種の「できあがり」とされています。そこからの伸びしろなどないと思われがちです。残りの人生は、それまでに蓄えた経験と知識と人脈などをうまく運用していくだけなのだと。
はたして、本当にそうでしょうか?
貯金を切り崩して暮らしていくよりも、新しいことをして新しいお金が巡ってくる生活のほうが楽しいように、新しいことをして新しいものをとりいれる人生のほうが豊かです。なにより毎日が初々しく、新鮮だと感じます。
また、活躍している70代の方々を見ていると、実際にそれができています。いつも若々しいし、積極的に新しいことにチャレンジしているし、年齢を重ねてなお成長しています。仕事の面でも生活の面でも尊敬してやまない方々の豊かな暮らしを目の当たりにして、「自分にはまだ知らない世界がある」と気づきました。
そこで僕は決めたのです。
40歳でもう一度スタート台に立ち、すてきな70歳を目標に歩き直そうと。この決意は、僕に再び「ぴかぴかの1年生」の気分を味わわせてくれるものでした。
やがて僕は、「ぴかぴかの1年生」は時代に即したものだと気づきました。
今は変化の時代です。海外の文化、習慣、仕事のやり方がどんどん入ってきて、仕事やライフスタイルに影響を与えています。この傾向はこれから増すばかりでしょう。
それなのに、「もう上級生だから」といって新しいことが身につけられなかったり、受け入れられなかったりすると、残念なことになります。時代についていけないというより、自分が成長できなくなります。
だからいつも1年生の気分で、新しいことを学び続ける。40歳のベテランであっても、20歳の人たちと席を並べて学ぶような気持ちで、目を輝かせて勉強する。「ぴかぴかの1年生」は、こうした初々しさを保つことにもつながるのです。
ずっと学び続けるのはまた、「自分がまだ知らない世界のドア」を開ける準備でもあります。このドアは、自動ドアではありません。
自分の手でしか開かないし、第一どこにドアがあるのかは、自分で見つけねばなりません。誰かが連れて行ってくれるわけでもないのです。意識してドアを探し出し、自分の手で開けたい。新しい世界にわくわくしたい。僕はそう願って、毎日を送っています。
もう1つ付け加えておくと、「ピークを意識する」とは「終わりを意識する」ことです。自分が老いるということ、死ぬということを受け入れる。これも40歳でしておくべき覚悟だと感じます。
「老後のことはまだ先でしょう」
「なるようになる、なんとかなる」
このように嘯く人は、老いと死についての覚悟がないから、考えることから逃げているのだと感じます。
花が咲き、実が生り、役目を終えた草は枯れていきます。ピークがあれば終わりが来るのが自然の法則です。大人として、その現実から目を背けない勇気をもちましょう。「すてきな70歳」という目標と覚悟は、セットだと知っておきましょう。