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「書こう」とするからうまくいかない? 伝わる文章をつくるコツ

竹村俊助(株式会社WORDS代表取締役、編集者)

2025年08月29日 公開

いざ人に伝えるコンテンツをつくろうとする時に必要となる文章を書くという行為。「"書こう"とするのではなく、"伝えよう"とすることが大事」と経営者の言語化・コンテンツ化をサポートすべく顧問編集者として活躍する竹村俊助はいいます。伝わる文章を書くコツとは? 『社長の言葉はなぜ届かないのか? 経営者のための情報発信入門』からご紹介します。

※本稿は、竹村 俊助著『社長の言葉はなぜ届かないのか? 経営者のための情報発信入門』(総合法令出版)を一部抜粋・編集したものです。

 

大切なのは「伝えよう」とすること

ここからは、コンテンツ作成のコツをもう少し詳しくお伝えしていきます。このテーマに関しては、拙著『書くのがしんどい』(PHP研究所)にも詳しく書きましたので、そちらもぜひ併せてお読みください。

まず、コンテンツ作成で大切なマインドセットは「書こうとしない」ということです。人は書こうとすると変に力んでしまってうまくいきません。コンテンツ作成で大切なのは、何よりも「伝えよう」とすることです。

こんな例はどうでしょうか?

免許の教習所で車を運転するとき、教官に「遠くを見なさい」と言われた人は多いと思います。

車を運転したことがない人は、初めはひとつひとつの動きのことで頭がいっぱいになります。カーブを曲がるときも「えっと、まずアクセルを落として、カーブに差し掛かったらハンドルの角度をこれぐらいにして、徐々にアクセルを踏んで……」といろんなことを考えてしまいます。

近くばかり見て運転することになるので、車はぎこちない動きをします。でも、教官の「遠くを見なさい」という指示通りに遠くを見ていると、自然とそれらの動きができるようになり、うまくカーブを曲がれるようになります。

文章もそれに似ています。「シャープな言葉を使う」「読後感をよくする」など文章を書くティップスのようなものはごまんとありますが、「伝えよう」とすれば、それらは全部自然とできるはずです。

まずは「遠くを見る」のと同じように「伝えよう」とすること。「書くな、伝えろ」と覚えましょう。

 

「スーツ言葉」ではなく「パジャマ言葉」を

企業におけるコンテンツ作りで大切なのは「スーツ言葉」を使わないことです。

ビジネスの場面ではカタカナ語やビジネス用語を使いがちになります。ソリューション、イニシアチブ、コンバージョンなどたくさんありますが、それらはなるべく使わない。

たとえば「クライアントの求めるソリューションはUXの改善です」と書いてしまうと伝わりません。感情も体温も感じられない。丁寧なのに冷たい印象すら持つと思います。

そうではなく「お客さんの求めていた答えは、このサービスをより見やすくすることだったんです」といった書き方をするのです。すると途端にスッと入ってくるようになります。

僕は「スーツ言葉」ではなく「パジャマ言葉」を使いましょうと言っています。つまりスーツを着たようなかたい言葉ではなく、パジャマを着ているときのような柔らかい言葉を使いましょう、ということです。

かつてインターネットで情報収集するときは、机に向かってパソコンを開いていました。転職活動であっても、仕事中や仕事終わりのビジネスパーソンの多くはスーツを着て仕事モードで情報収集していました。

しかし今はどうでしょうか? ほとんどの人がスマホを使っていて、日常のあらゆる場面で情報を見ています。ランチを食べながらスマホを見る。寝る前にベッドでスマホを触る。YouTubeを見たあとに企業の情報を目にしてそのまま転職活動が始まる、なんてこともあるでしょう。

経営者の言葉がスーツで見られることは減っています。むしろ、部屋着やパジャマ姿のときに読まれることが増えています。

ブラウザやスマホのすぐ向こう側にいるのは「普通に生活している人」なのです。スーツを着てバリバリ働いている人も、家では普段着の生活者に戻ります。

であれば、経営者も「ベッドの上でだらっと過ごしているような生身の人間」に届けるように、普段着の言葉を使うほうがいいのです。

 

中高生でも共感してもらえるか?

「パジャマ言葉」とはどれくらいのニュアンスなのでしょうか? 僕は、中高生が読んでも共感してもらえるくらいのレベルにしましょうとお伝えしています。

「まわりの社長がスゴすぎて正直、吐きそう」というリチカ代表の松尾さんのnoteをご紹介しましたが、彼は取材のときから「自分には誇れることがない」「カリスマ性がない」「まわりがスゴすぎて毎日吐きそうなんです」と漏らしていました。

そこで僕は「それならそのままそれをタイトルにしたほうがいいんじゃないですか?」とご提案し、こうしたタイトルになったという経緯があります。

もしこのタイトルが「動画3.0時代を牽引するベンチャー経営者の挑戦」だったらどうでしょうか? 「こっちのほうが興味ある」という人もいるかもしれません。動画に興味がある人はなおさらです。

しかしそれはあなたがビジネスや経営に普段から興味を持っているからです。しかもこうしたタイトルの記事は他にも大量にあります。そうしたなかで「本当に読みますか?」と聞くとかなり怪しいと思います。

「まわりの社長がスゴすぎて正直、吐きそう」というタイトルは、感情に直接訴えかけます。特にビジネスに興味がなくても、前提知識がなくても、興味を持ってもらえる。おそらく中高生でも意味がわかるはずです。

「動画3.0〜」というタイトルはまさにスーツ的なタイトルです。脳内がビジネスモードでスーツを着ているときじゃないと反応できない。

「吐きそう」であれば、ベッドに寝転がりながらでもちょっと気になります。できればこのレベルまでいけると、多くの人に読んでもらえるコンテンツになります。

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