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彬子女王殿下が47都道府県を巡って実感された、日本の「懐の深さ」

彬子女王、ほしよりこ(絵)

2025年10月21日 公開

女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下。その英国留学記『赤と青のガウン オックスフォード留学記』は「プリンセスの日常が面白すぎる」という一般読者のX投稿をきっかけに話題となり、瞬く間にベストセラーとなりました。

英国から帰国後、日本各地を訪問する中で彬子女王殿下が実感されたのは、日本が「多様性」の国だということでした。その多様性の原点は、どこにあるのでしょうか? ほしよりこさんの絵とともにお楽しみください。

※本稿は、彬子女王 著、ほしよりこ 絵『飼い犬に腹を噛まれる』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

多様性の国、日本

2017年の秋、47都道府県を巡るという長年の夢を叶えることができた。

最後の地となったのは愛媛県。国民体育大会の視察のための愛媛県訪問だったが、随行してくださっていた県職員の方が、その話を聞いてお祝いのケーキを準備してくださった。

ケーキ職人さんも、「祝47都道府県完全制覇」というプレートを書くのはきっと初めてだったに違いない。皆さんの心のこもった、愛媛県産の果物満載のそのケーキは、とてもとてもおいしかった。

日本全国を旅する中で、よく思うことがある。それは、日本というのは「多様性」の国だということ。北海道から沖縄まで、全く違う風土とそれに根差した文化を持っている。

こんなに小さい国土であるのに、県ごと、いや、むしろ旧藩ごとと言ってもいいかもしれないが、異なった文化が詰まっている。

食べ物ひとつ取ってみても、北海道に行ったらラーメン、名古屋ならひつまぶし、香川といえば讃岐うどん......などと、各地に名物料理がある。方言も、名産品も、土地によって様々。

江戸幕府を中心にまとまっていたとはいえ、もともとは小さな国々の集合体である日本。さほど大きくはない島国でありながら、こんなに土地ごとに多様な国は、世界広しといえどなかなかないのではないかと思うのである。

 

生活の中にごく当たり前に存在する神様

この日本の多様性の原点は、私は神道にあるような気がしている。日本では、自然のものすべてに神が宿っているという考え方から、海、山、風などの自然物や自然現象をつかさどる神、衣食住や生業をつかさどる神、国土開拓の神など、八百万(やおよろず)の神々がいると考えられている。

神道の神々は、日本人の生活の中にごく当たり前に存在するものである。よい神様も悪い神様もいる。神様であっても、失敗したり、罪を犯したりする。神様も多種多様。だからこそ日本人は神様に親近感を覚え、身近に感じてきたのだと思う。

歴史上、仏教やキリスト教など様々な外来宗教の伝来があっても、その時代ごとに受け入れられ、大きな宗教戦争を起こすこともなく共存してこられたのは、多神教である神道の思想が日本人の根底に先祖代々脈々と流れ続けているからに他ならないのではないだろうか。

仏教もキリスト教も、八百万の神々が存在する日本では、信仰の対象がまたひとつ増えた、という感覚で受け入れられたのではないかと私は思う。

神棚と仏壇が同じ家の中に存在するし、子どもが生まれたらお宮参りに神社に行き、結婚式はキリスト教のチャペルで挙げ、お葬式は仏式で......ということが、日本では何の疑問も持たれずに受け入れられている。困ったときは、「神様、仏様!」と祈ってしまう人も多いはずだ。

他者を許容し、共に生きていく。異なる文化を持つ人たちが、お互いを敬い、尊重し、支えあって、生きられる国。それが日本という国の懐の深さではないだろうか。

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