ペットと暮らす世帯数が増えている昨今、皆さんならどんな子を迎えるでしょうか? 初めてなら、犬は小型犬が暮らしやすいと考えるかもしれません。
CMのイメージキャラクターで人気を博した「うるうるの瞳のチワワ」や「白毛の北海道犬」など、犬種ごとにブームが訪れる傾向がありますよね。
ただ、そんな中でも昔から浮き沈みなく一定の人気を集める犬種がいます。それが"柴犬"です。最近では柴犬が毎話登場するドラマが、愛好家の間で話題となっています。
柴犬の魅力が詰まったイラストは暮らしとともに変化
そもそも柴犬とはどんな犬なのでしょうか。
現在、日本犬保存会が保存対象としている日本犬の中では小型に分類されています。立ち耳に巻き尾、キリッとした目元など「ザ・犬!」という言葉が似合いそうな容姿。そんな主張しすぎないサイズ感と、存在感は柴犬の魅力ひとつです。
また、素朴さや芯の強さに惹かれている愛好家も多く、柴犬好きなら誰もが知っている大人気のイラストレーター・影山直美さんもそのうちのひとり。
柴犬と暮らして28年!生粋の柴犬好きの影山さんに柴犬の魅力を語っていただきました。
――柴犬は昔から好きでしたか?
子供の頃は犬種のこともよくわかっておらず......祖母の家や近所で見かけるミックス犬が好きだったのですが、次第に日本犬に目がいくようになりました。中でも小型で親しみやすい柴犬に興味の対象が絞られていったように思います。
柴犬の姿が好きだということに加え、「ツンデレ」「頑固」「まじめ」で、「まじめすぎて時に笑える」といった性格が自分に合っていたのかもしれません。
――いつ頃から柴犬を描くようになったのでしょう。
父親が犬嫌いだったため子供の頃は犬が飼えず、結婚して数年後にやっと初代の柴犬を迎えました。うれしくてうれしくて、日々観察してスケッチしていうるうちに、4コマ漫画やイラストに発展していきました。
はじめは柴犬のお尻のアップや、ふんばり姿(ウンチをする時のポーズ)などに注目していただいていましたね。20年以上前に京橋のギャラリーで柴犬のお尻をドーンと描いたイラストなどを展示した際に、雑誌『Shi-Ba【シーバ】』編集部の方がご覧になって。当時の編集長も「こんなの描く人いるんだぁ」とニヤリ。そこから連載も始まったので、あの絵は原点だったと言えるかもしれません。
――マニアックに思われがちですが、柴犬好きはお尻が好きですよね!
今は作風も少し変わりましたし、読者の方におほめの言葉をいただく作品にも変化があったように感じます。犬が幸せそうに眠っている姿や、飼い主と犬との関わり、犬同士の関係性を描いたものに共感していただくことが多いです。
長く柴犬と暮らし、別れもあれば新しい出会いもありました。私も犬も変わってきたので、作品にもそれが自然に表れていると思います。
ちなみに、常に意識しているのは「それっぽく」描くことです。
「曖昧に」という意味ではなく、「柴犬らしく」でも「リアルすぎずに」。「それっぽい」のがちょうどいい感じ。
その時の感情や状況を反映して描いていたら、自然とそうなりました。
また私は、イラストに「いかにも柴犬が言いそうなひとこと」をつけ加えるのが好きなのですが、そこに共感していただくことも多いようです。
『柴犬さんと楽しむ にほんの歳時記』より
柴犬と暮らしているからこそ知る景色
――4匹の愛犬についてもぜひ教えてください。
初めて一緒に暮らした柴犬がゴン(オス・享年16)です。おっとりしていてフレンドリー。健脚で、散歩で2時間くらい歩いたこともありました。
初代ゴン
2代目のテツ(オス・享年13)はそろそろ2匹目を、と思っていた矢先に出会いました。神経質で、1匹狼タイプ。犬友達はいませんでしたが、晩年のゴンとはとても良い関係になりました。3代目のこまには先輩として指導したことはあっても、怪我をさせるようなことは一度もありませんでした。
2代目テツ
前述した、今一緒に暮らしているこま(10歳)は初めてのメス。人にも犬にもフレンドリーで「柴犬なのに人懐こいね」とよく言われます。明るい性格には救われています。
3代目こま
4代目のガク(オス・7歳)は元・保護犬。2代目のテツが亡くなった後、たまたま近所の人から「新しい飼い主を探している柴犬がいる」と聞き、これも何かの縁と迎えることに。とてもビビり屋で鳩のにおいと羽根が大嫌い。散歩中に見かけると逃げ出しそうになります。
4代目ガク
反面、ガクは大ざっぱなところもあり、こまとは体をくっつけて寝ています。その姿はとても微笑まく、SNSのフォロワーさんたちにも喜ばれるシーンですね。
――犬と暮らしているからこそ感じている四季の移り変わりや、にほんの文化はありますか?
『柴犬さんと楽しむ にほんの歳時記』でもたくさん描きましたが、冬でも地面にへばりついている雑草やたんぽぽの小さな芽を見つけられるのは、犬の散歩があってこそだと感じます。そういった「小さい春」など季節を先取りできるのはありがたいことです。
家の中では、犬の寝姿の変化で季節を知る、ということもありますね。
『柴犬さんと楽しむ にほんの歳時記』より
また個人的には、お正月・七草・ひな祭り・お花見・端午の節句など、日本犬として押さえておきたい行事というのもあって......忙しくても何かしら取り入れています。9月にどうしても何かやりたくて、重陽の節句を祝うようにもなりました(笑)。
――愛犬たちとの日々を、とても大切にしている様子が本書からも伝わってきます。そんな姿に憧れている読者さんへメッセージをお願いします。
にほんの四季や行事を意識しながら、家族全員で健康に暮らしていきたいですね。正直、行事は「なんちゃって」でもいいんです。忙しい生活の中で、無理にやらねばならない行事はないと思うので。
例えば「お月見だから、お花は買わないけど散歩の時にススキを採ってこよう」といったように、ぜひ気楽に。
【影山直美(かげやま・なおみ)】
2匹の柴犬、夫と共に湘南に暮らす。2019年5月に愛犬テツ(享年13)を見送り、現在は赤柴こま(メス・10歳)、黒柴ガク(元保護犬、オス・7歳)がいる。日本犬雑誌『Shi-Baシーバ】』(年4回発行)にてイラストや4コマ漫画を連載中。和の暮らしを大切にした『柴犬さんの歳時記手帳』(辰巳出版)も毎年の恒例に。著書は『柴犬さんのツボ』シリーズ他、愛犬を題材にしたもの多数。
Instagram naomi_kageyama(作品のお知らせ)/ komawan(柴犬こまとガクの暮らし)
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