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「おひとりさまは大往生できる」約3000人を看取った医師がそう語る理由

小笠原文雄(医学博士/浄土真宗大谷派聖徳山伝法寺住職)

2026年09月22日 公開

「おひとりさまは大往生できる」約3000人を看取った医師がそう語る理由

一人暮らしをする人が増えるなか、「最期をひとりで迎えること」に不安を感じる人も少なくありません。しかし、医師であり僧侶でもある小笠原文雄さんは、「おひとりさまのほうが大往生できる!」と語ります。なぜ、ひとりで暮らす人のほうが穏やかな最期を迎えやすいのでしょうか。書籍『笑って大往生できる人できない人』より、その理由を紹介します。

※本稿は、小笠原文雄著『笑って大往生できる人できない人』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

これからの人生で「今」が一番若い

人生は一度きりです。そして、これからの人生の中で、今が一番若いのです。ですから、やりたいことを思う存分やりましょう。好きなものを食べて、好きなことをして、好きなことを言って、朗らかに笑って毎日を過ごせば、免疫細胞が活性化して免疫力が上がります。

世間体や家族の都合よりも自分の本心を優先させるほうが、心も体も元気になり、結果としてみんなが「よかった」と思うことが多いのです。

それなのに、多くの人が古くさい家族観や医療観に縛られたままではないでしょうか。

「子どもに迷惑をかけてはいけない」
「介護は家族がするものだ」
「高齢になってからでも、病気であれば入院して徹底的に治療すべきだ」
「孤独死だと、変なうわさが立ちそう」

こうした世間体や思い込みのために我慢をして、知らず知らずのうちにご高齢の方が免疫力を下げていることも少なくありません。

まず、介護保険制度のおかげで、介護ヘルパーや訪問入浴、デイサービスなど、プロの人たちに少ない負担で、身体的なケアを頼めるようになりました。寝たきりになって介護が必要になったとしても、家族に迷惑はかかりません。

そして、老後のお金については、家賃の高いマンションに住んでいたり、高級食材を買い続けたりしない限り、病気で在宅医療になったとしても、たいていの場合は国民年金でまかなえます。

一人暮らしの患者さんでも、本人が希望すれば最期まで家にいられます。同居の場合も同じように、家族は何もしなくていいのです。介護離職が社会問題になっていますが、家族の介護のために仕事を辞めたり、若い人が勉強や友だちづき合いを制限したりする必要はありません。

このことが患者さんの家族になかなか理解してもらえなくて、私は2時間以上かけて説明するときもありました。

家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に作られたのが、介護保険制度です。「救いの神」ともいえるこの制度を使って、しっかりと介護サービスを受けることが大事です。

患者さんの中には、「病気の私は家族にとって邪魔な存在」「病人は家にいるよりも病院にいたほうがいい」と思い込んでいる方がいます。

本人が病院にいたいのならば別ですが、多くの場合、本心では家で過ごすことを望んでいます。家族についても、帰りたがって苦しんでいる様子を見ると、安心できないのではないでしょうか。

繰り返しますが、たとえ寝たきりになっても介護のプロに任せれば、身体的なケアはほとんど行ってくれます。ですから、笑顔で、安心して家で過ごしてください。

また、病院で在宅医療を勧められると、「医師に見捨てられた」「治療を放棄した」とショックを受ける方もいますが、これは間違いです。在宅医療を勧めるのは、とてもよい医師なのです。病院でも取れなかった苦しみが、家に帰ったら消えて、患者さんが笑顔に変わることを知っている医師だから、家に帰ることを提案しているのです。

病院は、病気と闘う場所です。つまり、救命救急医療・高度医療・感染隔離医療を行う場所です。当然、医師や看護師には緊張感があり、患者さんはストレスがたまります。このような空間にいることに疲れたのならば、病院から離れて、自分の家で過ごしましょう。むしろ、退院を許可しない医師のほうがよくないのです。

孤独死については、一人でいるときに死ぬことではありません。医師や看護師のいる病院で死んでも、心が孤独であれば孤独死。それがわからない人がいるのが残念です。たとえ一人でいるときに亡くなったとしても、自分らしく暮らせていたのならば大往生なのです。

 

「おひとりさま」のほうが大往生できる!

私は日本在宅ホスピス協会の会長として、日本各地や海外で講演を行ってきました。この活動の中で、社会学者の上野千鶴子さんとの共著『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』(朝日新聞出版)を2013年に刊行しました。

あれから約13年がたち、一人暮らしの人口はさらに増えました。

65歳以上だと男性の7人に1人、女性の5人に1人が一人暮らしです。

「高齢者の一人暮らしは不安だ」
「病気になると一人では暮らせない」
「家で、たった一人で亡くなるのは寂しい」

世間一般ではこのように思われているようですが、本当のところはどうなのでしょうか。

小笠原内科では、これまでに一人暮らしの患者さん、いわゆる「おひとりさま」を156人、家で看取ることにより多くのことを教えてもらいました。

その経験でいうと、住み慣れた自分の家ならば、何がどこにあるかをすでに知っているので、一人でも最期まで生活ができます。勝手のわからない病院よりも、安心です。

それに、ヘルパーに来てもらえば、食事やトイレにも困りません。寝たきりになれば、ベッドの脇にタッチパネル式テレビ電話を取りつけるといいでしょう。

ですから、離れて暮らす家族の手を借りなくても、困らずに一人で暮らしていけるのです。

また、最期は家族に看取ってほしい人もいれば、「誰もいないときに死にたい」と一人で静かにあの世へと旅立つことを望む人もいます。決して一人が寂しいとは限りません。

なにより、家だと誰にも邪魔をされず、気ままに過ごせます。朝からビールを飲めるし、タバコを吸えます。仕事も旅行もできるし、ペットと暮らすこともできます。

好きなところで、好きなことだけをやって朗らかに過ごす一人暮らしだから、大往生を迎えられるのでしょう。

 

著者紹介

小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)

医学博士,浄土真宗大谷派聖徳山伝法寺住職

日本在宅ホスピス協会会長。医療法人聖徳会 小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。
1948年岐阜県生まれ。73年名古屋大学医学部卒業。名古屋大学附属病院第二内科(循環器)を経て、89年に小笠原内科を開院。
医師として約2500人、僧侶として約500人の死を見つめる。また、1人暮らしの看取りを156人経験している。
共著に『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』(朝日新聞出版)、著書に『なんとめでたいご臨終』(小学館)『最期まで家で笑って生きたいあなたへ なんとめでたいご臨終2』(小学館)がある。

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