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澤田秀雄×松下正幸 企業の成長発展は「経営理念」と「人」に尽きる

『衆知』編集部

2016年10月17日 公開 2023年01月19日 更新

若い世代に伝わる表現が必要

松下 思い起こせば、幸之助が元気だった頃は「ここは基本だから変えてはいかんよ。でもこれは戦略だから時代に合わせてどんどん変えていかなきゃいかん」という判断を、幸之助自身がやっていました。しかし幸之助が亡くなると、基本ではなく戦略の部分であるにもかかわらず、それを変えることをタブー視するようになりました。

H.I.S.さんの場合も、今はまだ澤田会長がご自分で判断を下せますが、時間の経過とともに、澤田会長のやられたことが金科玉条になり、変えなくてはいけないのに変えない、というケースが出てくるのではないでしょうか。

澤田 はい、そうだと思います。ですが、私も人間ですから、判断ミスをすることも失敗もあります。私のやり方がすべて正しいわけではありません。20年前には正しかったやり方も、今は正しくないということも結構あります。一つのやり方にとらわれず、時代に合わせて創造変化・発展させていってほしいですね。

でも、理念やポリシーはずっと守ってほしいし、守っていくべきものだと思います。変化の激しい時代だからこそ、よけいにそれが重要ではないでしょうか。

松下 しかし、このやり方は今ではもう正しくない、ということは、ご本人だから言えるわけで、他の人はなかなか言い出しにくい。何が基本なのかを社員に継承し、発展させていくためには、社員手帳のようなものや、澤田会長の心を社員に伝える番頭さん的な存在が必要なのでしょうね。

澤田 そうですね。それと、経営哲学的な部分は守り続けるにせよ、表現や言い回しは時代とともに若干変えてもいいのでは、という気がしています。これからの若い人の心にすっと入っていくような、そんな言葉や伝え方が必要なのかなと思います。

松下 現在の日本の若者は、いわゆる「ゆとり世代」として教育を受けてきました。それが会社に入ったとたん、いきなり世間の荒波にさらされる。戸惑う人も出てきますよね。

澤田 私もそれは感じています。戦後はみんながハングリーでしたが、今はいい意味でも悪い意味でも豊かになった。日本全体が温室のような感じになっていますから、何かあるとすぐにめげる、プレッシャーに弱いという傾向はありますね。ただ、われわれも年間数百人を採用していますから、ある程度は仕方ないと思っています。

松下 そうした世代への新人教育として、体系的にやっていることはありますでしょうか。

澤田 入社前に3日間の合宿研修を行なっています。ここで当社の理念など、ものの考え方を少し厳しめに教えています。当社のポリシーに合うか合わないか、お互いに最初の段階で見極めたほうがいいのではないか、と考えているからです。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年7・8月号、「松下正幸の「志」対談」より、その一部を抜粋して掲載したものです。

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