3歳・7歳・10歳で変わる!子どもの能力を育む「聞き方」
2017年05月05日 公開 2022年11月14日 更新
親が話を聞くことで、子どもは想像力や自信、考える力などいろいろな能力が伸びます。子どもの成長に合わせて「話をちゃんと聞ける親」になる方法を、河村京子先生に考えていただきました!
※本稿は『PHPのびのび子育て』2017年5月号特集[「聞き方」を変えれば、子どもはグンと伸びる]から一部抜粋・編集したものです。
子どもの能力を育むために、お母さんができること
子育ての最終目標は、子どもを社会の中で人との関係が築ける「自立した大人」に育てることです。そのためには、幼少の頃から、子どもの話をちゃんと聞いて、共感し、安心感を与えて、まず親との1対1の絆をつくることが大切なのです。
毎日忙しくしているお母さんが、子どもの話を「ちゃんと聞く」のは簡単ではないでしょう。実際は、聞いているようで聞いていないことのほうが多いのです。ですから話を聞くときは、「よし、聞こう!」と聞くモードにスイッチを入れることが大切なポイントなのです。
子どもが話しかけてきたら、そのたびにスイッチをオンに切り替えて、しっかり耳を傾ける練習を、お母さんはしてください。
「聞く」ことで育つ子どもの能力3
子どもの話を一生懸命聞くだけで、次のような能力が育っていきます。「忙しいのに!」と思ったときこそ、このことを思い出して!
・能力1:自己肯定感
話を否定されないで聞いてもらえることで、子どもは「何を話しても許される」という安心感をもちます。そこから生まれるのが「自分はこのままでいいんだ」という自己肯定感、「自分は大丈夫」「自分はできる」という自分への信頼です。
自分を信じる気持ちは、社会で生きていくときの何よりも大事な拠りどころとなります。
・能力2:コミュニケーション力
社会で活躍するために大切になってくるのは、人と協力し、人を大切にできる力、すなわちコミュニケーション力です。親との1対1の信頼関係ができているからこそ、子どもは外の社会に安心して出ていき、人との関係を築くことができるようになります。
「子どもの話をきちんと聞く」ことは、対人関係を築くうえでの大切な礎を築きます。
・能力3:自分で考える力
自分の言葉で言いたいことを相手に伝えるためには、「何をどう言うか」「どう話したらわかってもらえるか」を考えなくてはなりません。話がたどたどしくても、その間、子どもは脳をいっぱい働かせて考えています。
話を先取りせず、子どもの言葉を待って聞くことは、子どもの考える力を養っていくことにつながるのです。
3・7・10歳 子どもの心をつかむ「聞き方」のコツ
子どもの成長に合わせて、親が子どもとの関わりを変えていかなければならない時期があります。
接し方を変えていく区切りの時期は、3年がひとつの目安です。具体的には、脳の発達過程が変わる3歳(園児)、7歳(小学校低学年)、10歳(小学校高学年)です。
約3年区切りで子どもとの関わり方を変えると同時に、自分で考えて、行動する、自立した子にしていくために、ぜひ聞き方も変えていくようにしましょう。
たとえば低学年までは、安心感や自己肯定感をしっかり育んでいくために「それでどうしたの?」と水を向けながら、根掘り葉掘り聞いて、たくさん共感することが大切ですが、10歳以降は大人として扱い、ただ相づちを打ちながら黙って話を聞くほうがよいこともあるのです。
成長段階に応じ、その時期に適した上手な聞き方をすることで、子どもの能力はさらに伸びていきます。
3、7、10歳別に、子どもの何を育み、そのためにどう話を聞けばいいのかについて、紹介します。
・3歳:「聞くこと」で、「人生は楽しい」と思えるようにしましょう
絵本の中で動物がおしゃべりをしているなど、現実世界ではあり得ないことも全部受け入れることができる柔軟な時期です。
話すことも「ぬいぐるみのクマさんが一緒に遊んでくれたの」「今日はカイジュウと戦ったんだ」というようにどこか空想的で、大人からすると辻つまが合っていなかったり、つくり話やウソのように感じてしまったりすることも少なくありません。
*心をつかむ「聞き方」のコツ:大人目線でメルヘンの世界を否定せず、話を聞きましょう
しかし、空想力は思考力(考える力)につながっていきます。大人が見ている世界とは違う世界にいることを認め、「つくり話ばかり、うそばかり」と思わないで、まずはメルヘンの世界につきあいましょう。
子どもの話を否定せず、大人目線の「正しいこと」を押しつけないで、「そうなの。楽しかったね!」「それはすごいね!」と相づちを打ちながら聞いていくことで、この時期の子どもは安心して、楽しく想像力を広げていくことができます。
それが「人生は楽しいものだ」という安心感につながり、自ら考える力の源になっていきます。
7歳:「聞くこと」で、社会に順応するためのルールを教えていきましょう
7歳の子どもの脳はまだまだ未熟ですが、小学校生活の中で集団のルールを学んだり、言葉をたくさんつかったりできるようになってきます。それにともなって親子の会話はずいぶんとラクになっていきます。
とはいえ、口は一人前でも話の論旨が合わなかったり、「できる!」と言いながら失敗ばかりということも多い時期です。
*心をつかむ「聞き方」のコツ:否定や先回りをせず、しかし悪い言葉には毅然とした態度を
親としては、つい口を出したくなりますが、論理の破たんや失敗が見えても、否定や先回りをしないで子どもの話を受け止めてください。
ただし「死ね」「キモイ」や、親をバカにするような言葉をつかったときは別です。話を聞くことは大切ですが、悪い言葉が出てきたときは、「そんな言葉をつかうのは、ママは許さないよ」と毅然とした態度をとってください。社会の中でつかってはいけない言葉があることを、この時期にしっかり教えておきましょう。
ただ7歳とはいえ、まだ甘えたいときもあります。「お母さん、あのねー」と話しかけてきたときは、子どもと向き合って話を聞いてください。ときには「困っていることはない?」と聞くことも「いつも見守ってくれている」という安心感を育みます。
10歳:「聞くこと」で、大人としての自立に向けての後押しをしましょう
大人の脳とほぼ同じになり、論理的に考えることができるようになってくるのが10歳ごろです。
自立しはじめる時期なので、子ども扱いされることに反発を覚え、大人の失言や論理の矛盾にも敏感に反応してきます。
会話においても対等な大人として扱い、自立に向けてサポートしていくことがポイントになってきます。
*心をつかむ「聞き方」のコツ:子どもの領域に踏み込まないようにしながら、親には隠し事はできないと遠回しに伝えて
この年齢の子は、思春期の入り口にいるので、隠し事をするようになったり、イライラすることも増えていきます。子どもの機嫌が悪いときは適度な距離を保って、あえて踏み込まない配慮も大切にしましょう。
一方で「親に隠し事はできないよ」ということは遠回しに伝えてください。
ママ友のネットワークで、学校でどんな行事やテストがあるのかの情報を得ておきましょう。
隠し事がわかったときは、正面から叱ったり問い質したりするのではなく、たとえば参観日の日を黙っているようなら「そろそろ参観日じゃない?」といった聞き方で、「じつは知っているのよ」と遠回しに伝えるとよいでしょう。
「親は何でも知っている」ことがわかれば、子どもは親に一目置くようになって、頼れる人として話しかけてくるようになります。
これはNG!「聞き方」でやってはいけない5
せっかく話を聞いているのに、間違った聞き方をしてしまうと「話を聞く効果」も薄れてしまいます。子どもの話を聞くときは、ここに記したようなNGの「聞き方」をしないように気をつけましょう。
・NG1:子どもの話を頭から否定する
親からすると「それはダメ」「その話はおかしい」と思うようなことを言ってきたとき、頭から否定してしまうと「何を言っても大丈夫」という安心感をもたせてやれなくなります。
まずは「そうなんだね」と共感して、「どうしてそう思うの?」と理由を聞いたり、「でもママはこう思うな」と親の考えを伝えたりするようにしましょう。
・NG2:カーリングペアレンツになる
先回りして話をとってしまうのは、子どもの能力の芽をどんどん摘んでいってしまうことになります。
先回りして子どもの進む先をどんどん整備してしまう親は、カーリングというスポーツになぞらえて「カーリングペアレンツ」と呼ばれますが、話の先回りが増えると考える必要がなくなるため、「自分で考える力」をなくすのです。
・NG3:子どもの話を聞き流す
親が自分の話を聞いてくれていないことは子どもにも伝わります。上の空で聞いたり、聞き流しが多いと、子どもの話す意欲を損なってしまうことになりかねません。
それを避けて、共感してもらった満足感がもてるように、「○○で楽しかった」「そうか、楽しかったんだね」など、子どもの話の文末を同じ言葉で返すリフレインを活用しましょう。
・NG4:子どもの話をまとめる
子どもの話はたどたどしいものです。途中でじれったくなって、つい「それはこういうことでしょ」とまとめてしまいたくなります。でも、それは子どもの考える力をつぶしてしまうことにつながります。
話の先が見えていたとしても、「それで、どうしたの?」「○○ちゃんは、どう思ったの?」と促しながら、最後まで聞きましょう。
・NG5:自分の感情をぶつける
親も人間です。機嫌が悪いときもあります。でも、そのイライラを、話しかけてきた子どもにぶつけてしまうのは、やはり避けたいものです。
イライラして話が聞けそうもないときは、大きい子なら「いまママには、機嫌が悪い警報が出てるよ〜!」、小さい子なら「ごめんね、いま、ちょっと具合が悪いの」と伝え、話が聞けない状況であることを伝えることも必要です。
【著者紹介】河村京子(かわむら・きょうこ)
母学アカデミー学長。家庭教師・講師業を経て、2011年、子育てについて共に考え学ぶ「母学アカデミー」を設立。著書に、『東大・京大生を育てた母親が教える つい怒ってしまうときの魔法の言い換え』(イースト・プレス)などがある。