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日本酒はどの銘柄を選んだらいい? プロが教える「エリア別の味の違い」

髙橋理人(酒蔵コーディネーター)

2024年11月25日 公開

日本酒はどの銘柄を選んだらいいのかわからない...居酒屋のメニューを前に迷った経験がある方は多いのではないでしょうか? 酒蔵コーディネーターの髙橋理人さんは「日本酒は地域によって味が異なる」と語ります。自分好みの日本酒を探すために役立つ「エリア別・お酒の選び方」を、書籍『酒ビジネス』より紹介します。

※本稿は、髙橋理人著『酒ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋・編集したものです。

 

プロはどうやってテイスティングをしているのか

コンテストにおいてのテイスティングはどのように行っているのでしょうか。まず、審査をする観点でのテイスティングと、お酒を楽しむテイスティングでは方法が異なります。

実際に新酒鑑評会の審査をした方に話を聞くと、テイスティングをする前には「このお酒は100点のお酒」だと思って飲むそうです。その上で、香りや味など100点に届かないポイントを探りながら、減点方式を採用していきます。

また、お酒を楽しむ際は、その都度水を飲んだ方が良いとされています。酔いが軽減される上に、口の中がリセットされるからです。

しかし、プロのテイスティングでは、途中で水を挟むと浸透圧の影響により味覚が狂ってしまうので、お酒とお酒の間に水は挟まず、20~30種類口にした後に休憩して水を少しだけ飲むそうです。

また、プロのテイスティングは、酔わないように飲み込まず、吐器(はき)と呼ばれる場所や手持ちの紙コップに吐き出します。実際に飲み込んだときと、味の違いはほとんどないのだそうです。

プロは時には1日100種類以上の味を見るため、一般的なテイスティングとはやり方が根本的に違います。その一方、皆さんでもできるお酒を楽しむためのテイスティングをお伝えします。

基本的なステップは、①見る、②香る、③味わう、です。

 

①見る

テイスティングの最初のステップは、見ることから始まります。グラスに注がれた日本酒の色や透明度を観察していきます。その際、香りと味のイメージがある程度固まってくるとベストです。最初は透明だったら「すっきりしてそう」、色がついていたら「味が濃そう」程度のイメージで良いです。

②香る

次に、香りの評価を行います。グラスを軽く揺らし、可能な限り日本酒の香りを立たせてみてください。その香りをゆっくりと感じ取ります。果実、花、ヨーグルトやチーズといった発酵臭など、多くの種類があるので、まずは感じ取ったままを言葉にしてみてください。また、ここでも味のイメージはしておいてください。

③味わう

少量の日本酒を口に含み、舌全体で味わいます。ここで重要なのは、見た時と香った時の印象を比較し、どれだけイメージに近いか、そうでないのかを感じ取ってください。その上で味として感じたものをメモに起こしてみてください。感想は人それぞれ違いますが、それでも正直に思った感想をつづってみてください。

私の場合は、色が思い浮かぶことがあります。「黄色い味がする」「緑色の印象がする」という感じです。そして、いろいろ学ぶうちに、黄色が思い浮かぶときは酸味を感じるとき、とわかったりします。

なかには、音楽の楽器に例える人もいますし、芸能人に例える人もいます。人それぞれ違うのだから、勇気をもって思い思いの感想を述べてもらっていいのです。

 

エリア別・お酒の選び方

酒屋でお酒を買うときや、居酒屋でメニューを見たとき、いくつも並ぶ日本酒の銘柄を見て「どれを選んだらいいのかわからない」という経験をされた方は多いと思います。

日本酒は地域によって味が異なるので、エリアの特徴をある程度把握すれば、傾向を掴むことができます。銘柄1つひとつが頭に入らないという方は、ぜひ都道府県を見ながら味をイメージしてみてください。

その後、思ったよりも甘かった、自分の好みに合っていた、などの感想を持っていただけると、銘柄への理解も深まっていくと思います。この記事が酒屋や居酒屋でのメニュー選びの参考になれば幸いです。

 

・東西の味の特徴

大雑把に言えば、東日本はすっきり系、西日本は濃醇系です。具体的にいうと、愛知県、岐阜県、富山県より西側から味が濃くなっていきます。これは、西に行くほど魚に脂が乗り、醤油などの調味料の味も濃くなったからだと考えています。

 

・エリア別の特徴

○北海道

もっともさっぱりとしていて、素朴な味わいのお酒が多いエリアです。さらっと飲めて、余韻も短い点が特徴です。魚は塩焼きなど、素材を活かしたシンプルな料理と合います。北海道の酒米「彗星」を使ったお酒は、特に味わいがすっきりしています。

○東北(青森・秋田・岩手・山形・宮城・福島)

南部杜氏の影響なのか、吟醸系のフルーティーかつ華やかできれいなお酒が多いです。東北の中でも、秋田県だけはやや濃醇なイメージですが、平均的にジューシーなタイプが多い印象です。ビギナーが飲むとしたら、東北のお酒がすすめやすいです。

○関東(群馬・栃木・茨城・埼玉・東京・千葉・神奈川)

関東はもっともバラエティに富んでいて、一括りにするのは難しいですが、派手すぎないフルーティーさと、酸味も程よく効いたシックなお酒が多い印象です。関東はマーケットサイズが大きいため、個性的なお酒がたくさん見られるのが特徴です。

○甲信越(新潟・長野・山梨)

すっきりとしていて柔らかいお酒が多いです。その中でも新潟は辛口系、長野は甘口系、山梨はニュートラルで水のようにさらっと飲めます。ちなみに、甲信越地方は日本でもっとも酒蔵の多い地域で、日本の10%の酒蔵が集中しています。

○東海(静岡・愛知・岐阜・三重)

静岡県は富士山の水を活かしたゴクゴク飲める爽やかなイメージです。愛知・岐阜・三重は、濃醇で旨味がのったお酒が多く、ほっこりとした米の旨味を大切にしたお酒が多い印象です。

○北陸(富山・石川・福井)

日本海の引き締まった魚に合わせやすい、濃醇な味わいです。特に石川県は酸味の効いたお酒が多く、脂の乗った肉とも合わせやすいです。

○近畿(滋賀・和歌山・奈良・大阪・京都・兵庫)

ガッツリと濃醇で、飲んだ後もグッと引き締まる辛口タイプです。全国トップの銘醸地であり、酒米の産地でもあるため、米の風味が感じられるお酒が多く見られます。

○四国(香川・徳島・愛媛・高知)

甘口系のやわらかく、ほっこりしてまろやかなお酒が多く、鯛などの白身魚と合います。ただし、高知県だけは打って変わって、全体的に辛口でキレが良いです。カツオやマグロなどの赤身に向いています。

○中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)

山陰の鳥取・島根は、骨格がしっかりしていて、旨味もあり、酸味もしっかりとあります。頑丈で飲みごたえのあるお酒が多いです。全体的に熟成向き・熱燗向きです。岡山・広島は、温暖な気候を活かした柔らかくて程よく旨味が乗ったお酒が多い印象です。

○九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

味、香り、旨味、甘みなどがたっぷりとしたお酒が多いです。特に佐賀県が顕著で、ジューシーで甘さたっぷりな南国フルーツのような味わいのお酒が多いです。ワインでいうと、濃醇で果実味がしっかりと感じられるカリフォルニアのようなイメージです。

 

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