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社長を退く前に、後継者のためにしておくべきことは?

鑄方貞了

2017年05月02日 公開 2017年05月02日 更新

後継者育成のためのキーポイント

後継者を育て、事業承継を円滑に行なうために留意すべきこととは?会社員時代に幅広い分野で活躍し、現在、経営コンサルタントとして後継経営者教育に力を入れている鑄方氏が、事業承継における陥りやすい問題点や徹底すべきポイントを解説します。

鑄方貞了
いかた・ていりょう*1974年関西大学法学部卒業後、タイガー魔法瓶株式会社に入社し、特許、営業、製造、商品企画、人事、経理を担当。’90年に繊維商社の役員として数々の部門を担当した後、’95年アクティブ経営研究所を設立。人材開発・経営コンサルタントとして、経営戦略立案、営業、組織活性化など、多くの分野で活躍している。

 

余計な「重荷」を後継者に背負わせない

後継者に経営のバトンタッチをする前に、先代社長にはやっておかなければならないことがあります。後継者に余計な「重荷」を背負わせないよう、特に以下のことは先代の責任としてきちんと処理しておきましょう。

会社の帳簿をきれいにしておく

社長が会社から個人的に借りた借入金がある場合には、きちんと返済しておくことが基本です。また、会社から社長の親族への貸付金がある場合も同様です。

そのほか、頼まれて買った有価証券、不要な土地や建物なども一覧表にして取得の経緯等をクリアにしておく必要があります。帳簿はできるだけきれいにしてから、後継者に譲るように心がけましょう。

古参社員の処遇を決める

後継者が社長になった後、先代社長の右腕だった古参社員との間に、確執が生じることはよくある話です。古参社員には先代を支えてきたという自負があり、「よりよい会社にするためならば、後継社長に言うべきことを言ってもいい」という意識も持っています。

一方、後継社長は古参社員になにかと気を遣い、面と向かって思ったことが言えないことから、ストレスを溜め込んでしまいがちです。新体制での古参社員の扱いは難しい問題なので、後継社長の意向を踏まえて、先代社長の責任のもとに処理すべきでしょう。

もちろん、功績のあった古参社員には報奨的な処遇をする必要がありますが、古参社員が後継社長と考えが合わない場合は、あまり実権を持たせるわけにはいきません。古参社員本人とよく話し合い、名誉的な役職で引き続き先代社長を支えてもらうのも一つの方法ですし、相応の慰労金を払って辞めてもらうのも一つです。ただ、いずれにせよ先代社長には、自分が泥をかぶるという覚悟がなければなりません。

同族役員の処遇を決める

中小企業では、社長の兄弟、姉妹などの親族が役員となっていることが多々あります。この親族がきちんと働いていれば問題はありませんが、そうではなく、「非常勤役員」として報酬だけをもらっているような場合は、その待遇を改めておくべきでしょう。

先代の社長にすれば、「今までいろいろと世話になったので、なんらかのかたちで報いたい」という思いからそうした待遇にしているのでしょうが、後継者の代まで続けてはいけません。社内での示しがつかず、社員たちはやる気をなくしてしまいます。

後継者の代になるのを機に、このような親族には辞めてもらわなければなりません。その退職勧告は、先代社長にしかできないことなのです。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2017年3・4月号、連載第5回「社長を退く前に後継者のためにしておくべきこと」より一部を抜粋編集したものです。

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