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ビジネスに必要な「自己完結的」選択とは?

岡重文(グロービス経営大学院教授)

2017年09月28日 公開 2024年12月16日 更新

「どこに旅行に行くべきか」をロジカルに考えてみる

とつぜんですが、「どこに旅行に行くべきか」という問いを考えてみましょう。

「前々から上高地に行きたかったんだ。でも、京都に古都散策でもいい……。さて、どちらにしようか」というように、行きたい候補があらかじめある場合は、、判断基準を何にするかをしっかりと考えて、選択をしていくこととなります。

一方で、特に候補地がない場合もあります。そんな場合は、まず、どこに行くかを考えるにあたって、その候補地(選択肢)を洗い出すために、

・「いつ」にするのか
・どのくらいの「期間」にするのか
・いくらぐらい「費用」をかけるのか
・そして、そもそもの「目的」を何にするのか

といった、いわば前提となる条件を確認することになるでしょう。

・「いつ」「期間」については、9月の連休に絡めて2泊3日
・「費用」は2泊3日なので、10万円
・「目的」はのんびりできること

そして、のんびりできそうな候補地をリストアップして、どこがより目的に叶うか(のんびりできるか)で決めていくという流れが、望ましい手順になります。

ただ、実際には「いつ」「期間」「費用」といった条件に合致する候補先が選ばれ、あとから判断基準をおいて選択されることが往々にしてあります。そして、その際の判断基準は、必ずしも「のんびり」ではなく、どちらかというと選択肢に引っ張られて、「上高地であれば、登山もできるし」、「京都であれば、散策ができるし」となり、結局は「登山」vs.「散策」で判断されることになります。

つまり、判断基準が先にあるのではなく、選択肢からの後づけの場合もあるということです。

また、「いつ」「期間」についても、

「9月の連休に絡めて2泊3日もひとつの考え方だが、夏休みとして1週間、6泊7日もある」

「費用」についても、

「10万円までで押さえたいが、1週間休むのであれば30万円まで奮発してもよい」

となった結果、「上高地」vs.「ハワイ」といった選択を考えなければならないケースもあり得るということです。候補を出すための条件だったものが、条件ではなくなり、その結果、同じものを比較するのではなく、前提の異なる2つの選択肢からの選択をしなければならなくなるケースもよくあります。

ですので、ここで大切なことは、前提や条件が必ずしも前提ではなくなる状況もあるということを理解したうえで、同一の前提のもとで洗い出された選択肢間での選択(今回のケースでは、上高地vs.京都)ではなく、前提の揃わない選択肢間(今回のケースでは、上高地vs.ハワイ)からの選択もあり得るという認識を持つことが重要です。

つまり、仮に条件が異なっている選択肢からの選択であっても、判断するための基準を改めて自身で定義し、選択していくことが必要になります。

 

ビジネスに必要な「自己完結的」選択

当初は選択肢がない中で選択肢を洗い出し、そして選択するというパターンは、ビジネスそのものです。

単に判断基準をおいて選択のみを行なえばよいというケースよりは、そもそも何が選択肢となりうるのかを考えることが求められるケースの方が多いといえます。

1.まず、自分自身で前提や制約条件を確認し、選択肢を洗い出す
2.そのうえで、選択肢をどう評価すべきかを考え、適切な判断基準を自ら設定する
3.判断基準に照らし、選択をする
4.選択した結果を自分自身の結論として、組織に提案する
「Aを選択するのがよいと思います。そう考えるに至った前提は○○○で、代案はBとCを考えました。Aを選んだ理由は、×××を重視したからです」

「選択肢を洗い出し」「判断基準を決めて」「選択し」そして「提案する」という一連の行為を自ら完結できるように、選択に関わる論点を網羅できるようになっていきましょう。

※本記事は、『[ポケットMBA]ロジカルシンキング』(PHPビジネス新書)より、一部を抜粋したものです。

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