1. PHPオンライン
  2. マネー
  3. 三橋貴明・日本経済の“嘘”を暴く…「報道に騙されるな!」

マネー

三橋貴明・日本経済の“嘘”を暴く…「報道に騙されるな!」

三橋貴明(作家/経済評論家/中小企業診断士)

2012年01月20日 公開 2024年12月16日 更新

※本稿は、三橋貴明著『三橋貴明の「日本経済」の真実がよくわかる本』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

なぜ、経済に関する間違った情報が蔓延するのか

「このままでは、日本は財政破綻してしまう」
「TPPに参加しなければ、日本経済は復活できない」

日々、そんな情報を新聞やテレビのニュースにおいて、読者の皆さんは数多く目にしているのではないでしょうか。

基本的に、これらの報道は間違っています。単に、用語のセンセーショナリズムを活用し、日本国民の危機感を煽ることのみを目的にしている報道なのです。

この種の報道には、いくつかの特徴があります。代表的なものをあげておきましょう。

・用語の定義付けが曖昧で、かつ数値データに基づいていない
・国民経済に対する理解が間違っている。あるいは不十分である
・マクロ経済的視点にミクロ的な視点を取り入れるなど、議論の仕方が間違っている

例えば、報道で繰り返される「財政破綻」という用語は、実は日本では定義が明確に決まっていません。「財政破綻」という用語がもたらすイメージが「おどろおどろしい」ため、マスコミが好んで使っているだけなのです。

あるいは、日本の新聞紙面に登場する「日本は輸出依存度が高い」といったフレーズ。この用語もまた、数値的な定義が不明であり、かつ「どこの国と比べて高いのか」といった比較対象が示されることはありません。

定義が曖昧で、数値データに基づかない報道は、基本的に「嘘」と判断して間違いありません。なぜ、日本の報道において、この種の嘘がまかり通るのでしょうか。

理由はただ1つです。

「国民経済の目的達成のためではなく、一部のステークホルダー(利害関係者)たちのための議論になっているから」

国民経済の目的は何かといえば、ずばり「国民が豊かに、安全に暮らすこと」を実現することです。このように理解をすると、「財政」「輸出」「輸入」「金融政策」などは、単に国民経済の目的を達成するためのツール(道具)にすぎないことがわかります。

ところが、現実には一部の利害関係者がマスコミを利用し、「ツールの問題解決」こそが、あたかも日本の国民経済の目的達成のために有効であるかのごとく、自らの主張を広めていっています。

「デフレ対策」「復興増税」「TPP」などの議論は、本来は単純な話(国民経済の目的を達成するという意味では)なのです。ところが、一部の組織(官僚、企業、政治家など)が自らの目的達成のための主張を振りまくため、話が混乱しています。

「これではいけない」と、私は考えます。国民一人ひとりが国民経済の目的を理解し、「真実の日本経済」を知ることによって初めて、日本経済は再び成長路線に戻れます。

 

増税せずに復興財源は作れる

インフラ整備に最適な建設国債という選択肢

政府が進めている東日本大震災の復興プランは、本当におかしいと断言できます。まず、今回の大震災は百年に一度起きるかどうかのカタストロフです。このレベルの天災から復興するためには、百年単位のスパンで物事を考える必要があります。

すなわち、今生きている、現在の日本人だけの問題として捉えてはいけないのです。復興にかかる負担も百年単位で考え、未来の日本人にも分担してもらう必要があります。

具体的にはどうすればいいのか。建設国債というのは、まさにこの種の支出のためにあるのです。道路やダムなど社会のインフラを作るための国債が建設国債で、60年で償還されます。政府は建設国債を発行し、それを復興にあてるべきなのです。

野田政権がいっているような、「復興債」償還のための増税の必要などありません。建設国債を発行すれば、名目GDPが自然に成長し、税収は増えていきます。

建設国債はインフラを整備するためのものですから、必ず具体的な「モノ」、つまり建造物が残ります。

このグラフは赤字国債と建設国債の数字です。赤字国債はモノが残らない国債のことで、特例国債とも呼ばれます。特例国債は、国会で特例法を通さない限り発行することができません。ところが建設国債は、予算を組めばインフラが残るので、いつでも発行できるのです。

震災で壊滅したのはインフラです。復興とは、再びそのインフラを整備することにほかなりません。建設国債を発行し、復興資金を調達し、復興事業に投資し、借り入れたお金は60年かけて償還していけばよいのです。

建設国債の償還は、単純に60年に分割されるのではありません。60年という長い期間に、日本の国民経済は成長し、次第に償還負担が小さくなっていきます。60年後の日本の名目GDPが5000兆円に達しているとすれば、今の20兆円や30兆円など微々たるものです。

ところが、それを10年くらいの期間で償還しようとし、臨時増税で賄おうとすると、肝心の経済成長が実現しません。そもそも、ここ最近、日本の建設国債はまったく増えていません。公共投資が行われていないためです。公共投資の必要性が今ほど高まっている時期はないにもかかわらず、なぜか野田政権はやろうとしない。本当に変な話です。

 

長期スパンで復興事業を考える

「復興債」についても、償還方法をどうするかでもめ続け、なかなか実現にいたっていません。まさに本末転倒です。復興の便益は数十年以上、日本国民が享受するわけですから、償還の方法について現時点で決めておくのも変な話なのです。経済成長に伴う税収で、償還すれば済む話なのですから。

復興のために増税すると、その多くを公共投資に金を使っても、国民の可処分所得が減ることで名目GDPも減ります。結果、税収までもが減収になるため、余計に償還できなくなってしまいます。

先日の民主党の代表選では、復興は建設国債でやるべきと主張していた候補者ではなく、増税論者の野田氏が当選しました。このまま押し切られてしまうと、かえって「将来世代にツケを残す」ことになってしまいます。

 

アクセスランキングRanking