高騰する留学費用 翻訳者が教える「英語を日本国内で習得する方法」
2018年12月14日 公開 2024年12月16日 更新
<<英語同時通訳かつ、スペイン語翻訳者のポリグロット(多言語話者)のタカ大丸氏。米国ニューヨーク州立大学ポツダム校と、イスラエルのテル・アヴィヴ大学で学んだ後、現在ではノバク・ジョコビッチ氏の書籍を自ら翻訳・プロデュースしベストセラーに押し上げるなど活躍を見せている。
タカ大丸氏自身の出自は最貧困家庭であり、DVの嵐に苦しめられ、血の滲むような日々を乗り越えて今があるという。同氏が自著『貧困脱出マニュアル』で、どん底から苦労を重ねトップ翻訳家に至った自身の体験が克明に記されている。
本稿では同書より、留学費用が高騰する情勢のなかで、日本国内で、しかもお金をもらいながら英語を習得する方法を提案した一節を紹介する。>>
※本稿はタカ大丸著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集したものです。
留学しなくとも英語は身につけられる
「今どきの若者は……」と言い始めたら、それは老化の証拠だという。どこで聞いたか忘れたが、この「今どきの若者は」という愚痴は古代ギリシャだかエジプトだかのころからあったらしい。
この言葉の続きは、昔も今も変わっていない。「言葉遣いがなってない」「努力が足りない」「スケベなことしか考えていない」「弛んでる」「とにかくダメだ」という話になる。
私もときどき「今どきの若者」と言ってしまうのだが、私の見るところ今どきの若者は私よりもさらに辛いのではないかと思っている。率直に言って、今私が18歳でかつてのような貧困状態にいたら、抜け出せる自信がない。
たとえば、私の場合でいうと高校卒業後肉体労働で約200万円を貯めて、米国の大学に行った。だが、あれから20年近くがたち、日本以外の先進世界はデフレ脱却を果たしている。つまり全体的な物価・生活費・学費が高くなってしまっている。
だから私が今200万円を貯めて米国の州立大学に行ったとしても、1学期生き延びられるかどうかだ。いかに私が天才でもそれでは英語習得は不可能だ。
だから、「英語は役に立つ。だからアメリカに行ってこい」と言えない時代になってしまっているのだ。のちほど詳しく説明するが、アメリカン・ドリームはすでに終わっており、そんな閉塞感にとらわれている人たちがヤケクソでドナルド・トランプに投票するという構造ができあがっている。
いまやスラム街で生まれ育って裸足でボールのかわりに空き缶を蹴りながらプロになったサッカー選手などいない。野球選手もまた同じである。
かつてであれば、貧しい母子家庭から成りあがってきたプロ野球選手はたしかにいた。だが、そのころは日本全体が貧しく、貧しさがそこまでの足枷にはならなかった。そして国全体が高度経済成長期に入るころだったので、私の元父親のような出鱈目をせずに真面目にコツコツと会社で勤め上げれば貧しくなりようがなかった。
だが今や日本は完全に衰退期に入っており、人口減少が確実で今後国が成長することはまずない。もしこの偉大な野球人たちが21世紀のいま貧しい家庭に生まれ育っていたら、そもそもリトルリーグに入れるのだろうか。
月謝の問題もそうだし、バットやグラブ、スパイクなどの用具も買いそろえなければならない。毎週末には草むしりなどの当番が親に回ってきて、遠征があればそのたびに余計な出費がかかってくる。
私がことあるごとに繰り返す通り、「ハングリー精神が役に立つなど大嘘だ」「本当にハングリーな人間は、そもそもスタートラインに立てない」ということだ。