加速するGAFAへの人材流出 「日本型雇用」が“日本人から”憎まれている現実
2019年03月20日 公開 2022年07月08日 更新
世界でも際立つ日本人の「会社への忠誠心」の低さ
エンゲージメント指数は、会社への関与の度合いや仕事との感情的なつながりを評価する基準です。エンゲージメントの強い社員は仕事に対してポジティブで、会社に忠誠心を持っています。
エンゲージメントが低いと、仕事にネガティブで会社を憎んでいるということになります。当然、社員のエンゲージメントが高い会社ほど生産性は高くなります。
近年になってエンゲージメントの重要性が認識されるようになって、コンサルタント会社を中心にさまざまな機関による国際比較が公表されるようになりました。
ロッシェル・カップさんはシリコンバレー在住の経営コンサルタントで、「職場における異文化コミュニケーションと人事管理」を専門とし、トヨタや東レなど多くの日本企業にもコンサルティングを行なっています。
そのカップさんが、以下のような驚くべきデータを紹介しています。
エーオンヒューイットによる「2014年アジア太平洋地域の社員エンゲージメントの動向」では、日本でエンゲージメントレベルが非常に高い社員は8%(22%)、ある程度高い社員は26%(39%)、低い社員は32%(23%)、非常に低い社員は34%(16%)となっています。
ちなみにカッコ内は世界平均で、日本の会社はエンゲージメントレベルの高い社員がものすごく少なく、低い社員がものすごく多いことがわかります(以下のデータでもカッコ内に世界平均を示します)。
ギャラップの「2013年グローバルワークプレイスの実情」によると、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は7%(13%)、低い社員は69%(63%)、非常に低い社員は24%(24%)となっています(ちなみにアメリカは30%、52%、18%です)。
タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によると、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は21%(40%)、ある程度高い社員は11%(19%)、低い社員は23%(19%)、非常に低い社員は45%(24%)でした。
マーサーが世界22カ国のエンゲージメントレベルを評価したところ、トップはインドの評価点25%で、メキシコが2位で評価点19%、アメリカは中間で評価点1%、日本は最下位で評価点はマイナス23%でした。
エフェクトリーインターナショナルによる「グローバル社員エンゲージメント指数(2014年)」によると日本の得点は4.5で調査国中最低、世界平均は6.2、アメリカは6.5でした。
その内訳を見ると、日本はコミットメント5.1(6.9)、満足度5.8(7.1)、効率6.0(7.3)、モチベーション5.8(6.9)、活力6.0(7.2)でいずれも最低を記録しています。
ヘイグループによる「2013年社員エンゲージメントトレンドに関するグローバル調査」では、日本のエンゲージメントレベルは62%、世界平均は66%、アメリカは73%で、好業績企業の平均は73%でした。
エクスペディアジャパンが24カ国の社員を対象に実施した2013年の調査では、雇用状況に満足している日本の社員は60%にとどまり、調査対象国中最低を記録しました。トップは90%のノルウェー、インドが2位、マレーシアが3位です。
ロバートハーフが5カ国3556人の金融専門家を対象に行なった調査では、仕事に対する満足度で日本は47%で最低を記録しています。
OECD(経済協力開発機構)によると、日本で自分の仕事に(ある程度)満足している社員の割合は72.4%でした。OECDの平均は80.9%、アメリカは82.2%ですが、この調査に関してはフランスと韓国が日本より低い値を記録しています。
日本の会社員はバブル期の頃から、ずっと自分の会社を憎んでいた
こうした調査結果を「小泉政権以来のネオリベ改革のせいだ」と考えるひともいるかもしれませんが、調査期間は民主党政権(2009~2012年)の時代と重なっています。
さらに、1980年代末のバブル最盛期に行なわれた日米比較でも、アメリカの労働者の方が仕事に満足し、友人に自分の会社を勧めたいと思い、もういちどやり直せるとしても同じ会社で働きたいと考え、入社時の希望と比較していまの仕事に合格点をつけていたのです。(小池和男『日本産業社会の「神話」』日本経済新聞出版社)
「日本型雇用が日本人を幸福にした」というのは幻想であり、真っ赤なウソだったのです。