同じネタなのに「話の面白い人」と「つまらない人」
2019年12月04日 公開 2024年12月16日 更新
<<予備校講師の世界は、生徒からの人気を集めなければ即退場となる厳しいもの。講義内容がどれほど価値のあるものであったとしても、生徒たちに「つまらない」と思われてしまったら、生徒たちの支持を得ることができない。
しかし、本質や核心を伝えるためには、生徒にとって「つまらない」と感じるものも話さなければいけない。人気講師として活躍し続けた犬塚壮志氏はその難題に取り組み続けてきた結果、「つまらない話」でも興味を持って聞いてもらえる話し方にたどり着いたという。
現在では企業研修も行い、著書『頭のいい説明は型で決まる』がスマッシュヒット中の犬塚氏は、その経験が現在に至って生かされているという。その話し方とは、どのようなものであったのか?>>
「つまらない話をしなければならない」という葛藤
「この話するの、ホント嫌。どうせ、誰も聞いてくれないし……。でも、話さないといけないことなんだよな……」
会議やプレゼン、あるいは朝礼や研修で自分が話をする前に、こういった葛藤に苦しんだことはないでしょうか?
話さなければならないことだけど、話の内容自体が堅く、どんなにわかりやすく話しても聞き手は居眠り…。自分でも「内容(素材)がつまらない」と感じていて、わかりやすく話す以外、改善の方法が見つからない。
下手に雑談を入れたり、笑いを取りにいこうとしたりしても、話がとっちらかってしまい、むしろ逆効果になってしまうなんてことも。
実は私も、長年、予備校という場で、「話をスルーされる」といったことを、化学の講師という立場で、何度も経験してきました。
「苦手な生徒にとって、どんなにわかりやすく説明しても、化学という科目そのものに面白みを感じられないのなら、聞いてもらえなくても仕方ない」
そう考えていたのです。ただ、そもそもこの考え方には、ある大きな「勘違い」があったのです。
人は「わかりやすい」だけでは聴いてくれない
その勘違いというのが、「話の内容(素材)がつまらない=スルーされる」という構図です。
当たり前のことではあるのですが、私が講義の中で話さなければならない内容(素材)は、もちろん10割がた「化学」です。苦手な生徒にとっては、基本「つまらない」と感じてしまう内容です。興味をもってしっかりと聞いてもらうために、徹底的に「わかりやすさ」も追求しました。
そんなある日の講義で、「分子の立体構造」というテーマを教科書通りにわかりやすく話したときのこと。
きっちり講義をやったにも関わらず、なんとクラスの半分の生徒が寝ていたのです。残りのもう半分はうつむき加減。つまり、顔を上げてこちらの話を(一応)聞いていたのは、クラスの1/4程度の生徒だけ。
「わかりやすい話」だけでは必ずしも相手は聴いてくれない。このことを嫌というほどに思い知らされました。話のわかりやすさは「必要条件」だけど、「十分条件」ではなかったということです。
そこで私がとった行動は、私の指導科目問わず、売れっ子講師と呼ばれる講師の講義を見学させてもらうことでした。
私は恥を承知で、売れっ子と呼ばれる講師の講義を見学させてもらうため、頭を下げて回りました。幸いにも多くの講師が快諾してくださり、恥ずかしい気持ちを抑え、生徒と一緒にその先生の講義を受けました。
ここでの学びが、のちに私を大きく変えてくれたのです。