大量の情報を"人が処理”するための「3つの脳」の使い方
2019年12月24日 公開 2024年12月16日 更新
<<私たちは日常生活のあらゆる場面で、様々な情報をもとに判断を下したり行動を起こしたりしている。しかしこの数十年で、世の中に流れる情報量は爆発的に増加しており、情報の波に押し流されてしまっている感覚を持つ人も多いのではないだろうか。
そんな時代状況下で、自分にとって重要な情報を選別し、それを活用するためにはどうすればよいのだろうか。それには「3つの脳」の使い方を意識するのが効果的であると狩野尚史氏は言う。
膨大な情報の中から、自分にとって重要な情報を選択し、処理し、新たなモノを生み出す。そして最終的には自分の意思によって自ら未来を創り出す。それを可能にする「3つの脳」を本稿では紹介する。
大手企業を中心にビジネススキルを軸とした人財育成を手掛けるHRインスティテュートのコンサルタントによる連続講座「人生100年時代を生き抜くためのビジネススキル講座」より、「第8回 論理的思考と情報リテラシーーー情報過多の時代には情報収集と情報処理だけでは勝ち残れない」を紹介する>>
※本稿は、2018年8月に天狼院書店「STYLE for Biz」で実施された講座を基に構成されたものです。
情報過多の時代をどう生きるか
メディアやインターネットの発達にともない、この数十年で、私たちが日々接する情報量は爆発的に増加しました。2020年には、1年間に流れる情報量は1ゼタバイトになるとさえ言われています。
「ゼタ」と言われても瞬時にイメージできないかもしれませんが、これは10の21乗(1,000,000,000,000,000,000,000)にあたります。例えるならば、世界中の砂浜にある砂粒の数とのことで、『明日のプランニング』著者の佐藤尚之氏はこの状況を「情報"砂の一粒"時代」と表現しました。とにかく膨大な数字であることがわかるでしょう。
この溢れかえる情報にさらされながら、私たちは日々、様々な処理や判断、意思決定をおこなっています。情報のそれぞれには多かれ少なかれ何らかの価値はあるはずですが、それが自分にとって価値があるか否かはまったく別問題です。
自分にとって雑多な情報とはどういうものかということを一つひとつ考えながら、情報を集め、処理し、その中から自分の意見を形成するということが極めて重要になってくるのです。
それはつまり、自分なりの意思を持って生きることが重要だということです。自分なりの意思を持って、数多くの情報を収集する。
その情報を処理して、自分なりに頭の中で考え、編集し、最終的に新しいアイデアを構築する。こうした過程をきちんとおさえることが、ただ流されるのではなく自分で道を作りながら長い人生を生きる上では必要になってくるでしょう。
そして、上記の過程をふまえつつ情報化時代を生きていく上では、脳みその使い方について意識的であることが効果的であると考えています。ここでは、特に重要な「3つの脳」についてご紹介したいと思います。
キュレーション脳――散らばった情報を分類し意味あるつなぎ合わせを創る脳
まずは「キュレーション脳」です。キュレーションとは、つまり編集と言ってもよいでしょう。ここでいうキュレーションとは、バラバラに散らばった情報を分類し、意味ある情報源としてつなぎ合わせまとめていく力のことをいいます。
美術館や博物館では、学芸員(キュレーター)が日々、様々なものを集めてまったく新しい切り口で編集して新しい見せ方をしていますが、これと似たイメージです。
実は、論理的思考においてよく出てくるフレームワーク思考は、キュレーション脳と相関があります。
散らばった情報を分類するという点が重要なので、フレームワークの原理原則である「MECE(モレなくダブリなく)」に則り、情報をモレなくダブリなく集めるのはもちろん、その情報をモレなくダブリなく分けていくというのが基本です。
ただキュレーションの場合には、一回分解した上で、もう一回組み合わせなければなりません。分けた段階は整理されただけなので、そこから新しいものを取り出すのはなかなか困難です。
そのため、さらに一歩踏み込む必要があります。それが様々な軸(切り口)を用いて情報を切り分けてみるという行為です。構成要素を分解して、今までとはあえて違う切り口でまとめなおす。
そういうことを繰り返すことで、自分が欲しい情報や、今持っている情報からまったく新しい面白さや価値を生み出すことが可能になるかもしれません。
キュレーション脳のポイントとしては下記の通りです。
1.散らばった情報を似た属性でフレーム分けをする
→まとめたものを分けることによって、物事が明確にわかってくる
2.いろいろな軸でフレームを分けてみる
→新しい切り口で物事を捉えるという考え方ができる
3.細分化されたフレームをまとめなおしてみる
→まったく新しいアイデアや新しいやり方が出てくる
誰かがまとめた情報を一回自分なりに分解してみて、また新たな軸で結びなおしてみる。そういったことによって、自分なりの意見や新しい発想を発見するのが容易になるはずです。