「文章が上手くて早い人」が選ぶ書き出しは“たったの2種類”
2020年04月09日 公開 2024年12月16日 更新
作文、メール、レポートから小説まで、いい文章を書くには、何を心がければいいのか。
中学生から大人まで役立つ技術を、著書累計510万部の人気児童書作家はやみねかおる氏が上梓した『めんどくさがりなきみのための文章教室』では、実は多くの人が教わったことのない文章の書き方を小説形式で教えている。
本稿では、多くの人が頭を悩ませる「文章の書き出しについて触れた一節を紹介する。
※本稿は『めんどくさがりなきみのための文章教室』(飛鳥新社刊)より一部抜粋・編集したものです
文章が書けるとこんなにお得!
作文の宿題に苦労する中学生・健のもとにあらわれた謎のぽっちゃり猫。名前は「マ・ダナイ」。10万回くらい生きて作家とも暮らしたというダナイが、健の部屋に住み込んで、不思議なレッスンが始まった……。
ぼくの前には、真っ白い原稿用紙が置かれている。 そして、手には、シャーペン。そばには、消しゴム。シャーペンには、ちゃんと0.5mmの芯が入ってるし、原稿用紙の予備も買ってある。
なのに、ぼくの手は動き出さない。なぜか? たった1つの単純な答え─ 宿題の作文で、何を書いたらいいのかわからないんだ。
もし、溜め息が綿菓子みたいに目に見えるものなら、ぼくの部屋は溜め息で埋め尽くされているだろう。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」
足下で、不気味なイビキがする。黒猫のマ・ダナイが、丸まって居眠りしている。
「起きろ、ダナイ」
ぼくは、両足でダナイを揺する。無理矢理起こされたダナイは、不満いっぱいの目で、ぼくを見てくる。
「宿題の作文が書けない。手伝ってくれ」
するとダナイは、大あくびと共に言った。
「書けないんだったら、書かなくてもいいじゃないか」
「そんなこと、できるわけないだろ!」
「人間社会というのは、妙なものだな。『書けない』と言ってる人に、『書け!』というのは、無理な注文じゃないのかい?」
「そりゃ、そうかもしれないけど……」
「無理は、体によくない。─ というわけで、健も一緒に昼寝しよう」
「そんなことしてられないよ。とにかく、書かなきゃいけないんだ」
人間は、猫と違って、文章を書く機会が多い。
作文や日記、手紙(電子メール、LINEなどのSNS)に小論文、レポート、提案文書などなど。
書きたくなかったら、書かなくてもいいとは言っていられない。
しかしそのぶん、文章が書けるようになったらとってもお得!
文章が書けるようになると、論理的に考えたり、自分の気持ちを上手に伝えたりすることができる。
なにより、作文が書けない……と悩む時間が、なくなる。
「健は、これから先、高校受験をするのかな?」
「たぶん……」
「受ける学校にもよるけど、入試に小論文を採用しているところもある。そんなとき、書きたくないから書かないと言ってたら、確実に不合格だね……」
「大学生になったら、レポートの提出が山のようにある。それに、卒業論文を書かないと卒業できないしね」